FSC製品を含め、環境に配慮した物を選ぶことも最も有効な「森の保全活動」の一つですが、もっと直接関わって森を元気にできたらどんなにステキでしょう。そんな夢を実践している庭山一郎さんは東京在住のビジネスマン。週末だけ赤城山麓の「シンフォニーの森」に通い、四季折々の自然を満喫しながら森仕事に励んでいます。
今年のゴールデンウィークもやっぱり森へ。暖かくなるにつれてぐんぐん変わっていく姿は、まさに生命力にあふれています。その中にいるだけで、パワーをもらえそう。そして、思わぬ楽しみも…。静かだけれど賑やかな森へ、皆さんも出かけてみませんか?
「山笑う」春の山から「山滴る」初夏の山へ
週末にしか見ていないこともあって、訪れるたびに森が変化していることがわかります。特に冬から春にかけての変化は、生命力にあふれていて本当にワクワクします。2年ほど前にドローンを購入してから、たびたび森の様子を撮影していますが、森全体の変化がわかって面白いんですよ。
下の写真は4月中旬の森の様子です。濃い緑は杉、黄緑はケヤキ、白っぽいのは芽吹いたばかりのコナラとミズナラ、赤みがかったところはブナ、そして淡いピンクがヤマザクラの花です。濃い緑の中に、パステルカラーが映えて、すごくきれいですよね。昔の人はこの状態を「山笑む」と表現していますが、ナルホドという感じ。
そして次は、先ほどの写真とは少し方角は変わりますが、4月下旬の森の様子です。白っぽかったコナラとミズナラが黄緑色になっていますが、中央にはブナが若々しい緑を見せています。
こちらは、ちょうど4月下旬ごろのブナの葉っぱ。ブナの芽は赤茶色の殻のようなものに包まれていて、遠くから見ると赤く煙ったように見えます。この写真でも葉っぱの付け根にちょっぴり殻が残っていますよね。若い葉っぱは黄緑色で、薄っすらと産毛が残っています。
そして、ゴールデンウィークが終わる頃には目がさめるような濃いグリーンに。このころには「山滴る」と呼ばれる初夏の森に様変わりします。
木々が変化するのと合わせて、地表もどんどん緑が濃くなります。歩いていると、突然、花の群生に出会うのもこの季節の楽しみ。
こんなふうに、ほとんど何もなかったところに、紫色の花畑が広がっていて、びっくり!ということもあります。こういう出会いがあるから、森の散歩はやめられません。
この花は「ムラサキハナナ」。“紫色の菜の花”の意味で、諸葛孔明が広めたという伝説から別名「ショカツサイ(諸葛菜)」ともいわれるそうです。私は種を巻いた覚えがないので、いつのまにか種が運ばれて増えたのでしょう。
再生した森に姿を見せる、色とりどりの小鳥たち
緑が濃くなり、様々な花が咲くようになると、森にはたくさんの小鳥たちがやってきます。
黄色が美しい「キビタキ」は、東南アジアで冬を越して春に日本に戻ってきます。姿もさることながら、とにかく“さえずり”がきれいで、この音色を聞くだけでも森に来る価値があるというもの。毎年来てもらえるように、この森を守らなければとつくづく思います。
そして、姿とさえずりの美しさでキビタキと双璧をなすのが「オオルリ」です。こちらも東南アジアの森から東シナ海を渡って日本にやってきます。
ちょっぴりうるさいのがこの子。キツツキの仲間の「アオゲラ」です。飛び回りながら、甲高い声で「キョッキョッ!」と鳴きます。赤い帽子とボーダー柄のシャツがなかなかおしゃれですよね。
そして、姿は地味ですが、複雑で澄んだソプラノの音色がすばらしい「ミソサザイ」。とても小さな鳥で、動きが速く、いつも残像しか写せませんでしたが、今回やっとはっきり写真が撮れました。
そんな小鳥たちの楽園をいつも羨ましそうに見ているのが、近くの雑木林に棲む「ノスリ」。通称「ノスケくん」です。ちょっと離れたところからシンフォニーの森を眺めていることが多く、決してそれ以上は近づきません。この森を支配する「オオタカ」が恐いのです。でも気になる、気になるけど恐い…。そんな感じの哀愁が漂っています。あっ、またこっち見てる(笑)。
小鳥たちのさえずりを聞きながら、森の散歩でほどよく疲れた体をハンモックにゆだねて昼寝。これほど素敵な休日があるでしょうか。
こうした小鳥たちが集まる森になったのも、間伐や枝払い、下草刈りなどを行って、しっかりと森の手入れをしてきたからです。かつてこの森は放置された植林地で薄暗くうっそうとしていました。食べ物になる木や草が少なく、生き物の姿がほとんどなかったのです。(第1回ご参照▶)
そんな森を買い取ってコツコツと手入れをしてきた私には、可愛らしい小鳥や珍しい植物が姿を見せてくれると、神様からのごほうびのように感じられます。うれしい出会いを求めて、ゴールデンウィークもまたいそいそと森へと向かうのです。
庭山一郎さんプロフィール
1990年にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。BtoBマーケティングに関するプロジェクトを数多く手がけ、セミナー講師や執筆などにも積極的に取り組んでいます。プライベートでは、小学生から日本野鳥の会のメンバーとして活動するなど、筋金入りのアウトドア派。赤城山麓に森を購入し、「シンフォニーの森」と名付けて森林再生活動を行い、ライフワークとしています。本連載ではその取り組みの様子や個人でできる森再生のヒントとともに、赤城山麓の四季折々の美しい自然の姿を紹介します。
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