責任ある森林管理のために、FSCが定めている「10の原則」。今回はその原則の6つめ、「環境保全」について詳しく見ていきましょう。
FSCの原則6「環境保全」とは?
FSC10の原則、6つめは「環境保全」がテーマだね。
はい。自然環境を守りながら森を活用・管理していこうという原則ですね。これはFSC設立時からとても大切にしているテーマなんですよ。
具体的には、FSCは森にどんなことを求めているの?
FSCでは次の10の基準を定めて、これらを守ることを求めています。
6.1 影響を受ける様々な環境要素が調べてある
6.2 環境に対する影響をあらかじめ予測している
6.3 環境への悪影響を抑えている
6.4 貴重な生物のすみかを保護している
6.5 その土地本来の自然が残っている場所を守っている
6.6 生物多様性が高まるよう管理している
6.7 水資源を保護している
6.8 多様で美しい景観を保っている
6.9 自然の森を変えずに保っている
6.10 1994 年以降に自然の森を人工林などに変えていない
(例外的条件を満たす場合を除く)
6.1 影響を受ける様々な環境要素が調べてある
6.2 環境に対する影響をあらかじめ予測している
6.3 環境への悪影響を抑えている
6.4 貴重な生物のすみかを保護している
6.5 その土地本来の自然が残っている場所を守っている
6.6 生物多様性が高まるよう管理している
6.7 水資源を保護している
6.8 多様で美しい景観を保っている
6.9 自然の森を変えずに保っている
6.10 1994 年以降に自然の森を人工林などに変えていない
(例外的条件を満たす場合を除く)
FSCの原則6「環境保全」は、なぜ必要?
この原則は、なぜ必要なの?
森には、木材を産出する以外にも、たくさんの機能があります。そのさまざまな機能を持ち続けられるような方法で森を活用・管理していく必要があるからです。
さまざまな機能って?
例えば、生物多様性を保全するという機能があります。
森は、大きな動物から微生物のように小さなものまで、いろんな生物のすみかになっています。生物は1つの種類だけで生きていくことはできず、さまざまな生物がお互いにつながり支え合って生きています。
しかし、木を伐りすぎるなどして森の自然環境が大きく変化すると、生態系(生物同士のつながり)のバランスが崩れて、生きていけなくなる種類も出てきます。人が森を農地に変えたり木を伐りすぎたりすることで、世界の森林は1990年~2020年の30年間で、日本の国土面積の5倍近い約1億7800万ha(ヘクタール)減少していますが*1、そうした人の活動によって生物の絶滅スピードは自然の速度の100~1000倍になっていると言われています*2。
*1 国際連合食糧農業機関(FAO)「世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート」より
*2 国連の呼びかけにより2001~2005年に実施した「ミレニアム生態系評価」より
森は、大きな動物から微生物のように小さなものまで、いろんな生物のすみかになっています。生物は1つの種類だけで生きていくことはできず、さまざまな生物がお互いにつながり支え合って生きています。
しかし、木を伐りすぎるなどして森の自然環境が大きく変化すると、生態系(生物同士のつながり)のバランスが崩れて、生きていけなくなる種類も出てきます。人が森を農地に変えたり木を伐りすぎたりすることで、世界の森林は1990年~2020年の30年間で、日本の国土面積の5倍近い約1億7800万ha(ヘクタール)減少していますが*1、そうした人の活動によって生物の絶滅スピードは自然の速度の100~1000倍になっていると言われています*2。
*1 国際連合食糧農業機関(FAO)「世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート」より
*2 国連の呼びかけにより2001~2005年に実施した「ミレニアム生態系評価」より
それは大変…。
また、きれいで豊かな水を育むという機能もあります。森に降った雨水は、土にしみこんでいくなかで浄化されていきます。そのきれいな水が川の水となって流れていくことで、下流地域や海の環境をも豊かにしています。
森の土が雨水を貯めることによって、土砂くずれや洪水などの災害を防ぐ機能もありますね。
森の土が雨水を貯めることによって、土砂くずれや洪水などの災害を防ぐ機能もありますね。
森の外側の環境にも影響しているとは!
それどころか、地球全体の気候にも影響するんですよ。
森の木々が温暖化の原因の1つである二酸化炭素を吸収することで、地球の温暖化の防止にも役立っています。例えば、日本の森が吸収する二酸化炭素の量は、国内の全自家用乗用車の排出する二酸化炭素量の約7割にあたると言われています(林野庁HPより)。その森が失われていくと、気候変動がいっそう進むおそれがあります。
森の木々が温暖化の原因の1つである二酸化炭素を吸収することで、地球の温暖化の防止にも役立っています。例えば、日本の森が吸収する二酸化炭素の量は、国内の全自家用乗用車の排出する二酸化炭素量の約7割にあたると言われています(林野庁HPより)。その森が失われていくと、気候変動がいっそう進むおそれがあります。
わたしたちの生活には、森の機能が大きくかかわっているんだね。
ほかにも、人々が景観を楽しんだり自然に親しんだりすることや、教育や伝統行事の場となることなど、人の文化とも深く関わっています。
本当にいろんな機能があるね。FSCが森の環境保全に力を入れている理由がよくわかったよ。
環境にやさしい森の管理のポイントは?
環境に配慮しながら森を活用・管理していくとき、注意したいのはどんなこと?
木を伐りすぎないことがとても大切です。広い範囲で大量に木を伐ると、土へのダメージが大きく、環境変化の影響が大きくなってしまいます。伐採面積が大きくなりすぎないように計画する、伐採後に環境への影響を確認する、などの工夫が必要です。
ふむふむ。
なかでも川や湖などの水辺は、木を伐ることで周辺環境に悪い影響が出やすい場所なので、特に注意が必要です。土の質によっては、水辺で木を伐るとどんどん土が流されていき(土壌侵食)、水質が悪化して下流地域にも影響が出ることが考えられます。そのため、水辺から一定の範囲は木を伐ることを法律で禁止している国もあるのです。
しかし、水の近くは木の育ちが良く、効率よく木材を生産することができます。それなのに木材生産を制限しなければならないというのは、林業を営む人たちにとってはつらいところなんです。
しかし、水の近くは木の育ちが良く、効率よく木材を生産することができます。それなのに木材生産を制限しなければならないというのは、林業を営む人たちにとってはつらいところなんです。
環境のことも大切だし、林業の効率も大切だし、そのバランスが難しいね。
林業の現場では?
森で林業を営む人たちは、環境保全についてどう考えているのかな?
最近はSDGs(持続可能な開発目標)の考え方が社会に広がり、目標15「陸の豊かさも守ろう」に対する意識も高まっています。そのなかで、FSC認証を通して環境保全に取り組む森も増えているんですよ。
参考:第4回 FSC認証はSDGsにどう貢献している?
世界のFSC認証の最新状況
参考:第4回 FSC認証はSDGsにどう貢献している?
世界のFSC認証の最新状況
実際に環境保全の対策を行っていくのは、カンタンなことではなさそう…。
そうですね。具体策に取り組むにはまず、自分たちの森にどんな貴重な生物がいるか、林業が環境にどんな影響があるかなどをよく知る必要があります。FSC認証を取得している森は、年1回、認証基準の審査を受けるので、それが自分たちの森を調べたり考えたりする行動につながっているのではないでしょうか。
わたしたちもしっかり管理された森の木から生まれた製品を選んで買うことで、森の環境保全を応援していきたいね!
【まとめ】
森は木材を産出するだけではなく、水を守り、多くの生きもののすみかになるなど、さまざまな機能をもちます。FSCは、そうした森の豊かさをそこなうことのないように気をつけながら、管理・活用していくことを大切にしています。
森の環境を守っていきたい!
次回は原則7「管理計画」と原則8「モニタリングと評価」について学ぼう!
監修:FSCジャパン
FSCⓇ C011851