キリン「『トロピカーナ』紙パックなど」
- 「一番搾り」などのビールのほか、「トロピカーナ」や「午後の紅茶」など、私たちの暮らしの中でも親しまれる「キリン」の製品。すべての紙製の容器包装について、グループ全体で2020年末までに「FSC認証紙」の使用を目指すという行動計画を発表しました。一口に紙容器といっても、流通量を考えれば“すごい”量なのは明らか。その分、実現も容易でないことが想像できます。それでも挑戦するのはなぜなのか、そしてどのように実現しようとしているのか、キリン株式会社CSV戦略部の藤原啓一郎さん、関川絵美子さんに伺いました。
お話しを伺った方
- キリン株式会社 CSV戦略部 シニアアドバイザー
- 藤原啓一郎さん
- 海の近くに住んでいるという藤原さん。「海岸では、サーファーや近くに住む人たちが熱心に清掃活動を行っているのを見て、自分に関わるところから自然を大事にする大切さに気づきました」
- キリン株式会社 CSV戦略部
- 関川絵美子さん
- 総合学習世代として子どもの頃から環境問題が身近だったという関川さん。「海の恵み豊かな函館出身ですが、その反動か(笑)、以前は山によく登っていました。海も山も美しいまま、次世代に引き継ぎたいですね」
2020年末までに紙容器のすべてを「FSC認証紙」へ
2017年3月に新しく登場した「トロピカーナの『100%まるごと果実感シリーズ』900ml」。手搾りジュースのような味わいで人気のトロピカーナでしたが、さらに味のバランスや食感を追求し、栄養とともに「まるごと果実感」がアップしたとのこと。「もう、飲んでみた!」という方は、そのフレッシュなおいしさとともに「容器」の変化にも気づかれたのではないでしょうか。
「新容器はキャップがついて、さらに持ちやすいようカーブがついています。ぐるっと逆さにして、沈みやすい果実成分を混ぜて飲めるようになっているんですよ。さらに、紙材料にFSC認証紙を採用し、上部のテント状になった部分にFSCマークがついています。ぜひ、ここにも注目していただきたいですね」(関川さん)
2017年2月、キリングループはすべての紙容器をFSC認証紙にすることを目指す「行動計画」を発表したばかり。「トロピカーナの『100%まるごと果実感シリーズ』900ml」は、その宣言から初のFSC認証紙採用パッケージとなりました。とはいえ、キリンの取り組みはずっと以前から継続されてきたものだといいます。
「昨年5月にはトロピカーナ250mlの紙容器に採用していますし、それ以前から持続可能な素材としてFSC認証紙が使用できないか検討を進めていました。その延長線上であり、ここへきてようやく紙容器全体へのFSC認証紙の調達にめどがついてきたので、改めてしっかりと宣言し、取り組みに弾みを付けようと考えたのです」(藤原さん)
「行動宣言」では、紙パックの他に、お中元・お歳暮などに使用するギフトボックス、製品を小売店などに届ける際に使用する段ボール箱などにも、特殊なものを除いて2020年末までにすべてFSC認証紙に切り替える予定です。また「一番搾り」などのビール6缶を結束する紙パックについては、一足早く2017年末までにすべて切り替えることになっています。
「宣言したことによって、調達チームもますます意欲的に取り組んでいますし、取引先などからも積極的な提案をいただいています。順調に行けば、前倒しで計画を実現できるかもしれません。悩ましいのがマークの位置で、記載する情報が増える中で、さて、どこにいれようかと(笑)。トロピカーナに入っているマークの位置も試行錯誤の末にここになったのですが、紙パックのリサイクルに出す際などに、皆さんに『あれ?このマークは何だろう』と気づいていただけるとうれしいですね」(関川さん)
おいしい飲み物を将来にも提供し続けられる“容器”とは?
もともとキリングループでは『生物多様性保全宣言』を掲げ、環境保全に対する積極的な姿勢を示しています。その実現に向け、「長期環境ビジョン」として、主に製品原料となる「生物資源」「水資源」、持続可能性を担保した「容器包装」、事業の中で生じる「CO2の排出量」の4項目について目標を設定し、取り組みを進めてきました。それは「おいしく安全な飲み物を将来も提供し続けたい」というシンプルな思いに基づいています。
「キリンの商品は、いわば『自然の恵みを容器に入れたもの』です。つまり、豊かな恵みを与えてくれる地球環境を保全し、次世代に引き継ぐことができなければ事業として成り立ちません。環境保全活動は、事業の根幹を守る重要な事業活動の1つでもあるわけです」(藤原さん)
そして、生物資源に関しては、具体的な「持続可能な生物資源調達ガイドライン」を設定。特に事業への影響が大きい「紅茶」「紙・印刷物」「パーム油」の3つについては、さらに細かな目標や計画を立てた上で取り組みが進められ、FSC認証紙の使用もその1つに位置づけられており、同時に容器包装の目標としても位置付けられています。
「容器包装は、中身をしっかり守ってお届けすること、おいしく飲んでいただけることが必須要件です。そのために、薄くして軽くする時には形を変えて強度を上げるなど、様々な研究開発や工夫を行っていますが、せっかく中身が良くても容器の素材が森林破壊の原因になっているとしたら残念ですよね。環境保全に適応した紙であるというのは、お客様に気持ちよくおいしく飲んでいただきたいという思いもあるんです」(関川さん)
改めて意識してみれば、私たちが手に取るキリン製品のパッケージも様々に形を変え、進化をしてきたことに気づかされます。見た目や取り扱いやすさなどはもちろん、持続可能材料の採用や軽量化によるエネルギー削減など、目に見えないところでの努力・工夫がなされているんですね。
森からキリン、そして私たちへ、自然の恵みをつなぐ「輪」
飲料という製品を通じて、自然のめぐみと事業の持続可能性を実現しようとする傍ら、そのメッセージをより積極的に伝えるための活動も、キリンでは継続的に行われています。
その1つが中高生を対象とした環境教育「キリン・スクール・チャレンジ」の活動です。「豊かな地球の恵みを将来につないでいくためにどうすれば良いのか」を中高生が議論し合い、仲間に伝えるための方法を考えるというもの。これまでに「午後の紅茶×リサイクル」や「午後の紅茶×スリランカ」などをテーマに年8〜10回開催されており、各回約25名が参加しています。
「FSC森林認証についても2016年6月に「トロピカーナ×森林保護」をテーマにワークショップを開催し、飲み物と世界のつながりについてまとめた考えをインスタグラムで発信してもらいました。どれもユニークで、中高生の発想力の柔軟性に驚きました。小さい頃から環境教育に触れていることもあるのか、気負いのなさに対して理解が深いことも頼もしく感じました」(関川さん)
こうしたイベントを開催する背景には、消費者としても「持続可能な製品」を選べる人になってほしいという、願いがあるといいます。
「生産者から受け取った自然の恵みを製品として社会に提供していく。その一連の輪をバリューチェーンとし、キリンはそれ全体を持続可能なものにしていきたいと考えています。しかし、キリンや取引先だけでは「輪」は完成しません。消費者である皆さんに選んでいただいて初めて輪がつながります。その意味で、いい製品を作るだけではなく、理解していただく努力も必要だと実感しているところです」(藤原さん)
持続可能な製品づくりについて知る上で、「FSC認証マーク」は旗印の1つ。今後も、キリン製品と森とのつながりをテーマにしたワークショップやイベントを開催していきたいといいます。2017年6月には「トロピカーナとFSC」をテーマに再びワークショップを開催する予定だそう。興味のある方は、ぜひ下記ホームページをご覧ください。
【取材先募集のお知らせ】
FSC応援プロジェクトでは、FSC認証製品を導入し、利用を推進する企業様を募集しております。
取材をご希望される方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
お送りいただいた内容より、掲載可否を精査させて頂いた上での取材となります。
必ず掲載とならない旨、何卒ご了承ください。
- キリン株式会社
- 東京都中野区中野4-10-2 中野セントラルパークサウス
- http://www.kirin.co.jp/
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