森のあちこちで秋の気配を感じるようになりました
皆さん、こんにちは。
東京の森、檜原村に暮らすちよこです。
夏の間ワサワサと競うように繁っていた葉も勢いを潜め、秋の草花や色づいた木の実、ニョキニョキ生えるきのこ達など、森を歩けばあちこちに秋の気配を感じます。
今回はそんな秋の森の恵みについてご紹介していきたいと思います。
小ぶりながらも甘くて美味しい「山栗」
まずは「山栗」。
お馴染みの栗を小さくしたサイズ感で、チクチクのイガの中にプックリした実が入っています。
大きさは小ぶりながらも、しっかりとほっくり甘い栗の味がするので、一つ一つ剥くのは大変ですが、そのまま茹でてオヤツにしちゃいます。
こちらの山栗は、なんと実だけでなくチクチクの毬(イガ)も役立つそうです。
毬を水に入れ煮詰めた汁を冷まして「うるしかぶれ」※1や火傷の患部を洗うと、毬に含まれているタンニン性の物質がかぶれた部分のタンパク質に収斂(しゅうれん)作用※2として働くんだとか。
森を歩き回ると、時折かぶれてしまう事もあるので、保存しておいていつか試してみたいと思います。
※1:漆に触れたり接近したりした時に起こる急性の皮膚炎
※2:タンパク質を変性させることにより組織や血管を縮める作用
「オニグルミ」と「ヒメグルミ」
それからこれ。
さてさてなんだか分かりますか??
ブドウ?
いえいえ、この緑の部分は仮果(かか)と呼ばれる外皮(がいひ)で、そのなかに核果(かくか)と呼ばれる殻があります。
その殻がこちら。
そう胡桃です。
意外と知られていない胡桃の実り方。
まるでマスカットのようでユニークですね。
緑色の実が木から落ちて黒く変わると、外皮が柔らかくなり殻を簡単に取り出せます。
この辺りに自生している食べられる胡桃はオニグルミとヒメグルミがあり、この2つは和胡桃とも呼ばれるそうです。
両方とも、殻を割って内側の種子(仁)を食べます。
オニグルミは日本に最も自生している種類で殻が硬くゴツゴツしていて割りづらいのですが、コクがあってとても美味しい和のナッツです。
とても硬い殻はスタットレスタイヤの材料としても使われているそうですよ。
ヒメグルミは別名ハートナッツとも呼ばれ、ハートの形が可愛いらしい種類です。
諸説ありますがオニグルミの変種という説もあり、外皮の様子はそっくりで殻を見るまで見分けがつきません。
ヒメグルミはオニグルミより殻が薄いので割りやすく、種子を取り出しやすいのが嬉しいところ。
クルミの種子は脂肪油を約50%も含んでいて栄養価が高く、縄文時代から貴重な栄養源として食べられてきました。
そのまま食べるのはもちろん、パウンドケーキに入れたりジェノベーゼソースに入れたりと様々なお料理に利用できる、見つけると嬉しい木の実です。
そして殻も形が可愛いらしく、リースなどのクラフトのアクセントにぴったり。
秋になると、山に落ちている実を拾ってきて保存しておき、クラフトの素材として使わせてもらっています。
ハシバミは“和のナッツ”
それからこちらの実、尖った形が特徴的なハシバミです。
実はハシバミは皆さんご存知のナッツ「ヘーゼルナッツ」の仲間で、美味しい和のナッツです。
こちらも緑の部分は外皮で、中身はこのように丸い殻が入っていて、胡桃のように殻の中の種子を食べます。
外の外皮は小さなトゲが沢山生えており、素手で触るとチクチク痛いので注意が必要ですが、
殻を取り出し、中の種子をローストして食べるとちゃんとヘーゼルナッツの味がします。
今年は実りが少なく、気がついた頃には動物達が食べ終わったあと。
種子の写真がなく残念ですが、動物達の冬篭りの大切な食糧ですから仕方ありません。
また来年を楽しみにしたいと思います。
滋味溢れる食材をいただき、寒い冬も健やかに
仏教用語に「身土不二(しんどふじ)」――“人間の体と暮らしている土地は一体で引き離せない、生まれ育った土地、暮らしている場所で育ったものを食べると健康を保てる”という意味の言葉があります。
季節ごとの森の恵みを動物達と分け合い、心も体も健やかに暮らしていくことは、なんて豊かなんでしょう。
滋味溢れるパワフルな食材を大切にいただいて、私も寒い冬を乗り切るために健やかに過ごしたいと思います。
皆さんも、ぜひ日本の秋の実りを美味しく味わって、健やかにお過ごしくださいね。
「ちよこ」こと、田中千代子さんプロフィール
東京都檜原村在住。男の子2人のお母さんで、夫である田中惣一さんは江戸時代初期から続く林業家の15代目。森を活かしながら守る“これからの林業”の在り方を模索しています。千代子さんもまた、もともと好きなクラフトや料理に森の恵みを活かす暮らしを実践中。そのヒトコマを季節の「森だより」としてお届けします。
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