森の春を五感で楽しみ、生命力をいただきます!
寒い間はずっと心待ちにしていた春なのに、毎日を忙しく過ごしていると「いつのまにか過ぎ去っていた!」なんてことも多いはず。でも、ちよこさんのスコープにかかると、森の中の小さな空き地や田んぼの脇のあぜ道など、何気ない景色のあちらこちらに「小さな春の使者」がやってきていることに気づかされます。今年こそ、そんな彼らからのメッセージに、ゆっくり耳を傾ける時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
●次々と咲き出す、春を告げる花たちに心惹かれて
こんにちは!東京の森に暮らす千代子です。
3月も末になると、寒い寒い檜原村でも、少しずつ冬の気配が和らいできます。子ども達と外遊びをしていると、ふとあちらこちらに春の気配を感じることも…。今日はそんな「山の春のはじまり」をご紹介しましょう。
いの一番に春を告げる花といえば、「梅」でしょう。可愛いらしいお花と清々しい香りが素敵。誰もがご存知の梅は、3月に入るとすぐ満開をむかえます。
野原には小さなお花畑が広がっています。
青い花は「オオイヌノフグリ」。ちょっと変わった名前ですが、別名もあって「星の瞳」と言うそうです。触るとポロリと落ちてしまう花は、小さいけれど鮮やかなブルーがとても素敵です。
お日さまに向かって懸命に蕾を伸ばす水仙。
可愛らしい福寿草もひょっこり顔を出しました。
可憐な白い花の八重咲きのアズマイチゲ
フクジュソウやアズマイチゲなどは、春先に花を咲かせ、夏までの短い間に光合成をして栄養を蓄え、その後は次の春まで地中の地下茎や球根の姿で過ごします。そんな、つかの間の春に競うように可憐な花をつける植物を「スプリング・エフェメラル」というそうです。直訳すると「儚いもの」のこと。まさに“春の妖精”といった感で、ロマンチックですよね。
●「おいしく」いただける、小さな春の恵みもいろいろ
小さなスミレも咲き始めました。種類が豊富で、色も花の大きさも異なり、1つひとつ観察するのは楽しいです。
エディブルフラワー(食用の花)としても活躍してくれるので、どんどん咲いてくれるスミレを見ると嬉しくなっちゃいます(笑)。クッキーやレアチーズケーキなどに添えると、おしゃれですよ☆
そして、これも食べられる花でしたね。「フキノトウ」です。
大きくなる前、できるだけ小さな方がおいしいので、子どもたちと一緒に宝探しのようにして採ってきます。ほろ苦い味と口いっぱいに広がる独特の香りで、春のはじまりを教えてくれます。
「フキノトウ」の収穫は、子どもと一緒に宝探しの気分で
春のはじまりを知らせてくれる森の味覚は他にもいろいろ!
ニラに似た「ノビル」は、さっと湯がいて酢味噌あえにしたり、ニンニクと一緒に刻んでペペロンチーノにしたりしていただきます。ピリッと辛みがあり、ネギに似た香りが美味しい山菜です。
「ヨモギ」は草餅にするのが定番ですが、乾燥してお茶にしたり、モグサにしてお灸できたりといろいろ楽しめるので、見つけるとついついたくさん採ってしまいます。
上が「ノビル」、下が「よもぎ」
こうした森の恵みを常備菜にして、日々の食卓にいただいています。中でも、縁側で日向ぼっこしながらのランチは、この時期限定で楽しめる私の春の日課。
たとえば、ある日のメニューは、できたてのフキ味噌と近くの直売所で買った産みたて卵、自家製のお米・お茶と、地産地消のものばかり。シンプルだけど、ほろ苦く滋養豊かな春の味に、身体が目覚めるようです。
こんなふうに、春の景色や植物を愛で、草木の香りを楽しみ、そして味わい、鳥達のさえずりを聞いて、陽射しの暖かさを感じ、五感をフルに使って感じられる「森の春」はとても魅力的! 今まで眠っていた動植物が、溢れる生命力とともに活動し始める様子が感じられてワクワクするし、自分も力をもらえる気がします。
私はそんな春が四季の中で一番大好き! これからしばらくは存分に楽しみ尽くしたいと思います。
「ちよこ」こと、
田中千代子さんプロフィール
東京都檜原村在住。男の子2人のお母さんで、夫である田中惣一さんは江戸時代初期から続く林業家の15代目。2012年にFSC森林認証を取得し、森を活かしながら守る“これからの林業”の在り方を模索しています。千代子さんもまた、もともと好きなクラフトや料理に森の恵みを活かす暮らしを実践中。そのヒトコマを季節の「森だより」としてお届けします。
RELATED POST関連記事
第5回 FSCの森で「春のフルコース」はいかが?
第10回 FSCの森で魔女気分2☆ハーブの女王「ヨモギ」の活用法
第14回 「春の森のスウィーツ」で、お家時間を“ほっこり”と