2025.10.30

森を守りながら活かすFSCの理念に共感
「未来への思い」を木製ハンガーに託して

日本コパック「木製ハンガー」

日本コパック「木製ハンガー」
業務用ハンガーや什器など、主に事業者向け備品の企画・製造・販売を手がける「日本コパック」。プラスチックハンガーのリユース・リサイクルなども実施しており、環境配慮を意識した取り組みを積極的に展開しています。そのひとつとして、2021年10月から製造・販売しているのが、FSC認証材を活用した「木製ハンガー」です。現在は、小学校・中学・高校の卒業記念品として人気を集め、企業の周年記念や有名アパレルブランドにも採用されるようになりました。その開発の経緯や消費者の反応などについて、同社で企画・営業に携わる斉藤光央さん、高橋千晶さん、平田佳子さんにお話をうかがいました。

お話しを伺った方

日本コパックの皆さん
左より:株式会社日本コパック 斉藤光央さん、高橋千晶さん、平田佳子さん
「子どもの頃からジブリのアニメが好きで、『風の谷のナウシカ』や『もののけ姫』を観るうちに、自然や森と共存できる生き方に憧れるようになりました」と斉藤さん。「現代人は利便性を手放せないけれど、工夫と意識次第で持続可能な社会に近づけるはず。サンとアシタカ※が共に生きる世界の実現を願っています」
※「もののけ姫」の登場人物

自社一貫体制でサステナブルな「FSC認証の木製ハンガー」を製造・販売

台東区に本社を構える日本コパックは、店舗備品や物流機器の企画・製造・販売を手がけ、とりわけ業務用ハンガーでは国内トップクラスのシェアを誇ります。そのショールーム「CPK GALLERY」を訪れると、ハンガーやトルソーなどの店舗用備品がずらり。やわらかく光を取り込むファサードは、なんと主力製品のひとつである木製ハンガーを組み合わせて作られたものだそう。

日本コパックのショールーム「CPK GALLERY」
木製ハンガーのファサード

「木という素材は高級感があり、質感や香りが人に安心感を与えるなど、他の素材にはない魅力がありますよね。また、再生可能な資源として環境への負荷が少なく、持続可能な社会の実現にも貢献します。ただ、自然素材だけに木の種類で性質が異なり、傷や変形というリスクもあります。そこで限りある資源を価値あるものとして活かすために、日本コパックでは様々な取り組みを進めてきました。このファサードはその象徴でもあるんです」(斉藤さん)

株式会社日本コパック 営業部 ゼネラルマネージャー 斉藤光央さん

同社の木製ハンガーのほとんどは、中国の自社工場で製造され、職人による手磨きで仕上げられています。その中で生じる木材の端材を活用したアップサイクル製品の「YOSEGIシリーズ」を2020年に立ち上げ、続いて国産ヒノキを用いた独自ブランドである「ヒノキノヒ」をスタート。並行して中国と日本の組織で2020年にFSC認証(CoC認証)を取得し、翌年よりFSCマーク入りの木製ハンガーの製造・販売を開始しました。

ビーチ材を使ったFSC認証の木製ハンガー
刻印されている「FSCマーク」

「FSC認証については、無印良品やユニクロなど、グローバルに展開する顧客企業との交流を通じて存在を知りました。FSC認証製品の提供には、原材料の調達から製造・流通・販売に至るまで、すべての工程を一貫して管理する必要がありますが、幸い当社は自社工場を保有しており、その体制を構築することが可能です。ワンストップで木製ハンガーを提供できる国内でも数少ないメーカーとして、FSC製品の開発は責務だと考えたのです」(斉藤さん)

しかし、製品は作るだけでなく、使う人に届けてこそ事業が成り立ちます。当時はコロナ禍ということもあり、顧客企業へのアプローチは困難と考え、新たな販路を模索することとなりました。そこでまず着目したのが、「記念品」としての企画・販売でした。

環境意識の高まりとともに、卒業記念品として注目

斉藤さんは営業部で企業向けのOEM企画や営業活動を行う傍ら、一般ユーザー向けECショップ「ハンガーのながしお」の運営にも携わり、記念品や贈答用ハンガーの企画・販売を担当しています。ハンガーは末広がりの形から縁起物として親しまれ、名前やマークを入れられるということもあって記念品として人気の商品。そこに環境配慮の視点を加え、校章を入れて「卒業記念に」とFSC認証の木製ハンガーを提案したところ、「未来への思いを込められる贈り物」として大きな反響がありました。企画から販売までチーフを務める平田さんは「皆さんの反応は想像以上でした」と語ります。

2024年度は全国の500校以上で、FSCの木製ハンガーが卒業の記念品に

「多くの学校関係者、PTAの皆様から、『ずっと長く使えて、サステナビリティを意識したものを探していました』『環境授業に沿った有意義な記念品になります』という声をたくさんいただきました。2024年度には、発売開始から4年目で全国の500校以上から注文があり、今年はさらに増えそうです。多くの学校で環境教育の一環としてFSC認証が紹介されており、子どもたちの認知も広がっていることにも驚かされました」(平田さん)

株式会社日本コパック 営業部 チーフ 平田佳子さん

実際、斉藤さん、平田さんが、中学校などで行った、日本コパックの環境への取り組みについての出前授業でも、ほとんどの生徒がFSCマークについて「見たことがある」「森を守るんだよ」と関心を寄せていたといいます。

「FSC認証については、理科や社会、家庭科などで環境配慮の取り組みとして学んだり、教室にポスターが張ってあったりして、触れる機会が多いようです。もはや子どもたちにとって環境配慮やサステナビリティは、当たり前のことになりつつあるのを感じました」(平田さん)

そして、さらに子どもたちにより深く知ってもらおうと、日本コパックではFSC認証の木製ハンガーを紹介するコンテンツを作成し、SNSやYoutubeなどで配信しています。販促の企画を担当する高橋さんは、キャラクターやイラストなどで親しみやすさを出したり、一目で伝わるような画像を作成したり、いろいろと工夫しているといいます。

日本コパック FSC認証紹介動画 https://youtu.be/IW_6efWDZME

「FSCは単に森を保護するマークではなく、資源として活用しながら森を活かしているというところを伝えられたらと思っています。とはいえ、ちょっと難しく伝えると響かないばかりか、『対岸の火事』に終わってしまいそうで。まずは興味を持ってもらえるよう、完全に正しく伝えることよりも端的にイメージを伝えることを意識しています」(高橋さん)

株式会社日本コパック 営業部 コーディネーター 高橋千晶さん

こうした活動のように、学校だけでなく、企業が発信する情報や製品についても環境配慮を意識する機会が増えています。そうしたメッセージに触れ、環境意識の高い子どもたちが大人になるにつれて、モノを選ぶ際には環境に配慮した製品を選び、そうした製品を展開する企業を選ぶ人の割合が増えていくことになるでしょう。

「そうした子どもたちに恥じないように、私たち大人はモノづくりや事業のあり方として、もっとサステナビリティを追求していく必要があることを感じています。日本コパックとしても、まだ完全とは言えませんが、さらに積極的に取り組みを進めていきたいと考えています」(斉藤さん)

未来においても「選ばれる企業」に。全方位で環境配慮に取り組む

現在、FSC認証を取得したハンガーは、卒業記念品としてだけでなく、企業向け備品としても注目を集めています。近年では、「イッセイ・ミヤケ」や「ARC’TERYX(アークテリクス)」など、感度の高いブランドでも続々と採用されるようになりました。

「営業担当者によると、FSCマーク入りのハンガーに関心を示す企業が増えているそうです。採用に至らなくても、環境配慮型の製品づくりに取り組む企業として信頼を得るケースが多く、そうした評価が自社製品への誇りにもつながっているようです」(斉藤さん)

さらに完成品だけでなく、不要になったハンガーや製造過程で生じたB品をアップサイクル(再利用)するなど、資源の有効活用が試みられています。たとえば、冒頭で紹介した「ファサード」や、積み木のように組み合わせて楽しむ「CLOSET ANIMAL」などがその一例です。

「記念品用ハンガーは品質基準が高いため、小さなキズや塗装のムラなどで約2割がB品となります。これを在庫や廃棄に回すのは、生産面、環境面どちらにおいても残念なこと。そこで、いくつかにカットして、子どもから大人まで『自分だけの動物オブジェ』が作れる工作キットとして提供することをはじめました」(高橋さん)

B品からアップサイクルした「CLOSET ANIMAL」
作品例

日本コパックが主催するイベント「東東京市」をはじめ、六本木ヒルズやハンズ新宿店、さらに秋田県のTENOHA能代などにおいても、親子で参加できるワークショップが開催され、大勢の参加者で賑わいました。廃棄物の再利用を通じて、子どもたちの創造力を育みながら、資源循環や環境負荷軽減の考え方を学べるプロジェクトとして、2024年度には「キッズデザイン賞」を受賞しています。

「CLOSET ANIMAL」のイベントの様子

「ちょっとした傷で捨てられてしまうモノがあるということを知り、考えるきっかけにしてもらえたらと思います。そして、モノづくりの楽しさを通じて、自分で作ったものに愛着を持ってもらえれば、それが物を大切に使うことにもつながるのではないでしょうか」(平田さん)

こうした限りある資源を大切にする取り組みは、木製ハンガーに限りません。プラスチック製のハンガーにおいても、日本コパックではサステナビリティを意識した様々な活動を展開しています。1991年から「ハンガーを1本もゴミにしない」をスローガンに、使い捨て流通ハンガーの回収を開始。これまでに累計1億8000万本を回収し、リユース・リサイクル事業を通じて、約100社・7000店舗の取引先に年間約1,000万本のリユースハンガーを提供するまでに至りました。

「脱プラスチックが大きなムーブメントになっていますが、軽くて丈夫なプラスチックハンガーは、小売業や流通において既に欠かせないものになっています。既存の製品についてはリサイクル・リユースを徹底的に行い、限りある資源として有効に活用する。並行して大切な服をかける木製ハンガーについても、FSC材や国産ヒノキなど環境配慮型原料を採用していく。いわば全方位で環境配慮に取り組んでいきたいと考えています。それが顧客企業はもとより、未来の消費者の信頼を得る方法だと信じています」(斉藤さん)

今後も、環境配慮と創造性を両立した取り組みを継続し、社会的価値の高い製品づくりを目指す日本コパック。ものづくり企業としての矜持を胸に、持続可能な未来に向けた一歩を着実に積み重ねています。資源を活かす知恵と、日常に寄り添う製品力。その両輪で、これからも新しい価値を生み出し続けていくでしょう。

ハンガーのながしお https://www.hanger.jp/

株式会社日本コパック
https://www.copack.co.jp/

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