2025.6.27

オンデマンドプリントの原点は「サステナブル」
サービス価値向上のためFSC認証承認の内製化を実現

キンコーズ・ジャパン「オンデマンドプリント」

印刷事業を軸に、多彩なサービスを提供するキンコーズ・ジャパン株式会社。中でも「必要な時に必要なものを必要な分だけ印刷できる」オンデマンドプリントでは業界でも先駆的存在であり、企業を中心に多くの顧客を獲得してきました。印刷紙にはいち早く環境配慮型用紙を採用し、2023年にはFSC認証を取得。翌年の10月にはFSCの審査プロセスの内製化も実現しています。その目的や経緯、今後の展開などについてお話を伺いました。

お話しを伺った方

左より 生産管理部 佐藤一宏さん、経営企画部 小出龍太郎さん、広報・サステナビリティ推進部 野上朝子さん・手塚郁美さん
「やっぱり紙が好き!」という社員・スタッフが多いというキンコーズ。「デジタル化が進んでいますが、紙のぬくもりや質感があってこそ、伝わるものもありますよね。今後は貴重なメディアになっていくと思われますが、再生可能な資源として上手に活用することを広げていきたいですね」

キンコーズのオンデマンドは「サステナブル」が原点であり目標

コピーや印刷などのサービスを提供する「ビジネスコンビニエンス」の先駆けとして、米国で事業を開始したキンコーズ。1991年に日本上陸を果たし、キンコーズ・ジャパンとして顧客の多様なニーズに応えるべく、企画デザインやマーケティング、文書電子化、コワーキングスペースなど幅広く事業を展開しています。

とりわけ創業時より提供している『オンデマンドプリント』は、キンコーズを代表するサービスであり、『必要なものを必要な時に必要な分だけほしい』というニーズに応えたものです。その提供価値を高めるために、無駄なく・スピーディ・高品質であることを旨として、様々な取り組みを進めてきました。そのベースとなっているのが、今でいう『サステナブル』な考え方です。

「『無駄を省いて良いものをタイムリーに提供する=サステナブル』という考え方は、日本創業時からキンコーズで共有される価値観です。当時はそういった言葉では表現されていませんでしたが、30年以上も前から当たり前のように取り組んできたことが、近年になってSDGsやESGなどにつながる考え方として注目されるようになりました。そうした中で、ずっと取り組んできた私たちだからこそ、あらためて自社のブランド価値として訴求するべきではないかと考えるようになりました。そこで、2023年から広報チームは広報・サステナビリティ推進部として組織を改め、自社の取組み推進とともに、積極的に社外への発信に取り組むようになったのです」(野上さん)

キンコーズの考えるサステナビリティは、環境配慮に加え、地域共創や従業員のエンゲージメント、パートナーシップに基づくサプライチェーン、ガバナンスなど5つのテーマに整理されています。それらを高いレベルで満たすことにより、キンコーズのサービスをよりサステナブルで価値あるものにしようとしています。

コーポレートサイトでも「サステナビリティ」に関する活動を紹介
コーポレートサイトでも「サステナビリティ」に関する活動を紹介

「たとえば、様々な社会活動の中で、紙は重要なコミュニケーションツールながら、大量に印刷して在庫を抱えるというスタイルでは、スペースや管理費などのコストが掛かり、内容が古くなって廃棄するなど、様々な無駄が生じます。さらにスピーディに情報を刷新できなければ、商機を逃しかねません。その解決策の1つがオンデマンドサービスですが、これをサステナブルに提供するには、スタッフの対応力やパートナーとの共創・連携、サステナブルな資材や機械の調達など、様々な面での施策が必要になります。そうした活動が自社の事業やサービスの持続可能性を高めるだけでなく、社会のサステナビリティにもつながると考えています」(手塚さん)

キンコーズ・ジャパン株式会社 広報・サステナビリティ推進部 手塚郁美さん
キンコーズ・ジャパン株式会社 広報・サステナビリティ推進部 手塚郁美さん

「きちんと伝えたい」という社内外からの要請で、CoC認証を取得

創業から「サステナブル」をベースとして事業を展開してきたこともあり、主事業であるオンデマンドプリントの用紙のラインナップにFSC認証紙を追加することはごく自然なことでした。生産管理部で機械や資材などの調達・管理に携わり、FSC認証取得にも携わった佐藤さんは、「FSC認証紙の使用は数年前からで、オンデマンドプリントとしては早い時期だと思います」と振り返ります。

「ただCoC認証の取得となると、費用や条件面でハードルが高いと感じ、しばらく躊躇がありました。しかし、社会のサステナビリティへの感度が高まるにつれ、顧客企業から法人担当や店舗を通じて『環境報告書や社内広報用のツールなどで訴求できるようFSCマークをつけたい』とリクエストされるようになりました。また同じくして経営や広報からも、『サステナビリティというブランド価値に直結するものとしてFSCを訴求したい』という要望があがり、CoC認証取得の検討を開始したのです」

キンコーズ・ジャパン株式会社 生産管理部 佐藤一宏さん
キンコーズ・ジャパン株式会社 生産管理部 佐藤一宏さん

しかしながら、国内に複数店舗を展開し、かつオンデマンドプリントの製造プロセスは複雑であり、標準化には大変苦労したといいます。はじめは手探りで情報を収集し、パートナー企業の協力を得ながら徐々に対策を講じていきました。

そして、FSC認証紙での印刷機能を品川にある生産拠点工場に集中させ、各店舗から印刷データを送信して対応するというプロセスを整備し、2023年5月にCoC認証取得を果たしました。この認証取得によってFSCを採用する企業が増え、営業活動も積極的に認証紙を提案できるようになったといいます。現在は大阪と名古屋の拠点店舗でも対応し、扱い量を増やしつつあります。

FSCのCoC認証を取得した、セキュアードプロダクションセンター

しかしながら、佐藤さんは「FSC認証は取得するだけでは十分とは言えず、社内で普及しやすい環境づくりが重要」と語ります。

「いいものであっても、日常的な仕事の中では、何か特別な選択が必要だったり、手間がかかったりすると、だんだんと使われなくなりがちです。そこでFSC認証の特殊紙の種類を増やしたり、大量に使われる標準紙をFSC認証に切り替えて価格を抑えたり、意識せずともFSC認証紙が使えるように環境を整えていきました」(佐藤さん)。

「キンコーズで作れば、当たり前にサステナブル」を目指して

FSC認証紙を当たり前に選定できる環境づくりの中で、もう一つ、大きな課題となっていたのが、「FSCラベルのデザインと掲載申請」のプロセス短縮化です。

「FSCマーク」と呼ばれる「FSC認証ラベル」を製品や印刷物などに掲載する場合、ラベルの使用ルールやガイドラインを遵守する必要があります。手間がかかる部分もあり、多くの事業者では外部の認証機関などに申請し、承認を受けたものを使用しています。キンコーズでも当初は認証機関に申請し、承認が降りるまで3〜4日ほどかかっていました。その分、通常の納期より遅れるため、FSC認証紙の使用を諦めるケースもあったといいます。

「FSCマークの使用申請に時間がかかるのは、オンデマンドプリンティングの強みである『短納期』を実現する上で大きな問題です。そこで、どのような使い方があるのかを分析し、パターン化することで使用承認までのプロセスを内製化しようと考えたのです。実際には約1年間の運用で、さほど特殊な使い方がないことが明らかになったので、手順の整理や担当者の育成などを実施し、2024年10月から社内責任者によるFSCマークの利用承認を開始しました」(小出さん)

キンコーズ・ジャパン株式会社 経営企画部 小出龍太郎さん
キンコーズ・ジャパン株式会社 経営企画部 小出龍太郎さん

現在は、生産管理部のメンバーがFSCマークの使用承認に携わり、全国の店舗や営業担当者から上がってくる申請に対応しています。早ければ当日中に承認を出し、他部分のデータ確認のプロセスと同時並行ができるため、オンデマンドプリントサービスの通常納期で提供できるようになりました。

「企業のサステナビリティが注目されるようになっても、コストや作業負荷は企業にとって悩ましいところ。とりわけボリュームメリットの恩恵を得にくい中小企業にとって、FSC認証紙などの調達は難しい部分があると思います。しかし、キンコーズのオンデマンドプリントなら、そうした企業や個人の方々も簡単にサステナブルなモノづくりができます。むしろ意識せずとも、キンコーズで作りたいものを作ったら自然とサステナブル、となるようにしていきたいですね」(小出さん)

「キンコーズに依頼すれば普通にサステナブル」を目指し、その取り組みの1つとして、販売用紙をFSC認証紙やエコマーク認定用紙などへ切り替えつつあり、2028年中にはすべてを環境配慮型用紙とする予定だといいます。また、ミスコピー紙などのアップサイクル『PELP(ペルプ)』などの取り組みも実施しており、こちらもFSC認証を取得しています。

小ロットでもFSCマーク入りの印刷物が作成できるシステムは、サステナブルなモノづくりをしたい中小企業や個人にとって画期的なこと。用紙の選択肢も増えているので、興味のある方はサンプルを取り寄せてみてはいかがでしょうか。
https://www.kinkos.co.jp/service/paper-sample/#id_11


キンコーズ・ジャパン株式会社
https://stec-ps.com/

RELATED POST関連記事