2021.10.26

第8回 FSC認証と「地域社会」

責任ある森林管理のために、FSCが定めている「10の原則」。今回はその原則の4つめ、「地域社会との関係」について詳しく見ていきましょう。

FSCの原則4「地域社会との関係」とは?


 
FSC10の原則、4つめは「地域社会との関係」だね。
はい。カンタンに言うと、地元の人々の生活も考えて森を管理しましょう、という原則ですね。
具体的には、どんなことを考えて管理しているの?
 
FSCの原則4には次の8つの基準があります。
 
4.1  森林にかかわる地域社会と、その権利を調べている
4.2  地域の人々のもつ権利を守っている
4.3  地域の人々に雇用や教育訓練などの機会を提供している
4.4  地域の発展に貢献している
4.5  地域社会に悪影響が及ばないようにしている
4.6  苦情などには誠実に対応している
4.7  地域の人々にとって重要で特別な場所を保護している
4.8  地域社会のもつ知恵・伝統的技術やそれに関する権利を守っている

 
これらをしっかり行うことで、地域の人々と良い関係をもち、地域に役立つ森となることを目指しています。

FSCの原則4「地域社会との関係」は、なぜ必要?


 
なぜ、「森の中のことだけ考える」ではいけないの?
 
森はその周囲の地域とつながっているからです。例えば、動物は森の内と外の区別なく動き回ります。また、森に降った雨は森の土に貯め込まれ、ゆっくり地下にしみこんできれいな水になり、やがて川の流れとして下流の地域に運ばれていきますよね。そんな地域にさまざまな影響を与え、恵みをもたらす森だからこそ、そのまわりで暮らす人々のことも考えていくことが大切なのです。

 

FSCの森は、地域の人々の権利をどう守る?


 
基準に書かれている、地域社会や地域の人々の「権利」ってどういうもの?
地域の人々が昔から当たり前のように森で行ってきた行動(慣習)を続けていけることなどです。
 
どんな慣習があるかは国や地域によってさまざまです。 例えば、森で山菜やきのこを採ったり、日々山歩きをしたり、伝統行事を行ったり、貴重な植物が採れる場所として保護していたり…といったことが考えられます。また、日本には昔から大きな森には神が宿るという考え方がありますので、地域の人たちが森の一部を神聖な場所として大切にしているかもしれません。
 
そんな地域に伝わる慣習を無視して木を伐ったりすることのないよう、FSCの森では、地域にどんな慣習があるかを調べ、地域の人々の意見を聞きながら、その慣習を守ろうとしています。
豊かな森に自生するきのこ。

森の中の洞窟を神様としてまつる地域も。

FSCの森は、地域の発展にどう貢献する?


 
「地域の発展」も考えないといけないんだね。
 
はい。例えば林業の作業をする人を雇う場合、森の経営のことだけを考えたら、地元の人かどうかは気にせず賃金の安さで選ぶ方法もあります。しかしそれでは地域の人の働く機会や収入にはつながらず、地域との結びつきも弱くなってしまうでしょう。
 
そこでFSCの森では、なるべく地元の人を雇ったり、地元の会社に仕事をお願いしたりして、地域経済の発展に貢献しようとしています。

 

FSCの原則4「地域社会との関係」、日本では?-①山梨県の例


 
実際には、どんなふうに地域社会と良い関係を築いているんだろう? 日本のFSCの森の例を教えて!
では、まず山梨県がもつFSCの森をご紹介しましょう。
 
山梨県にはたくさんの森林がありますが、100年以上前に、大きな水害が繰り返し起こっていました。それを見た明治天皇が県の復興に役立てるよう山梨県に森林を御下賜(与える)されました。それにより、県内の森林の46%を所有するようになった県は、適切な森林管理を行い豊かな森へと育て、2003年、日本の公有林(国や地方公共団体が所有している林)で初めてFSC認証を取得しました。適切に管理されてできたFSC認証材として売り出すことで、地域の経済を発展させています。
 
例えば、やまなし森の紙推進協議会は県有林(県が所有する森林)のFSC認証材を使用した「やまなし森の紙」シリーズ(コピー用紙、印刷用紙)を販売し、売り上げの一部は山梨県の森林の保全に役立てられています。さらに、製品の仕分けなどの作業は県内の就労施設と連携し、障がい者の働く機会の充実にも貢献しています。
 
森の所有者である山梨県が中心となって、森をめぐる地域の経済を発展させ、地域のさまざまな人の生活を支えているのです。
「やまなし森の紙」は地域の障がい者の働く機会も提供している。©藤島斉

 

FSCの原則4「地域社会との関係」、日本では?-②宮城県南三陸町の例


 
もう1つ、宮城県南三陸町の南三陸森林管理協議会の例もお話ししましょう。
 
南三陸町はおよそ400年前から質の良い杉の産地として有名です。しかし、2011年に東日本大震災が発生して広い範囲が津波の被害にあい、林業の活動も一時中断しなければなりませんでした。
 
大きなダメージを受けた町が復興するため、柱の1つになったのが「南三陸杉」です。地域の林業関係者のグループはFSC認証の取得に着目しました。適切に森を管理することが「南三陸杉」ブランドの評価を高め、自然と共生する町づくりにもつながっていくと考えたのです。そして南三陸森林会議協議会を設立し、2015年にFSC認証を取得。その動きは地域の木材加工業者や工房も巻き込んで進められ、「南三陸杉」を製品として広く市場に流通させて地域経済にも貢献するようになりました。
 
また、町の沿岸地区ではカキやホタテ、ワカメの養殖業が行われており、2016年、持続可能な養殖を目指して宮城県漁業協同組合志津川支所がASC認証(※)を取得しました。質の良い海の恵みがもたらされるのは、森から栄養がたっぷりと流れ込んでいるからこそ。適切な管理による森の豊かさが、地域の漁業の発展にもつながっていることがわかりますね。
 
※ASC認証:養殖水産物に対する国際的な認証制度。環境に負担をかけず、地域社会に配慮している養殖業を認証している。
同じ町にASC認証とFSC認証の両方を取得する団体があるのは世界でも珍しい。©藤島斉
なるほど。どのFSCの森も、それぞれの方法で地域社会とよい関係をきずいているんだね。

 
 

【まとめ】 森の管理は、そのまわりの地域や下流地域にさまざまな影響を与えます。FSCの森では、地元の人々と良い関係を保ち、悪影響はできるだけなくし、地域の社会経済にうるおいをもたらす森林管理を目指しています。

FSCは地域社会との関係を大切にしているね!

次回は原則5「森の恵みの活用」について学ぼう!

監修:FSCジャパン

FSC C011851

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