責任ある森林管理のために、FSCが定めている「10の原則」。今回はその原則の3つめ、「先住民族の権利」について詳しく見ていきましょう。
FSCの原則3「先住民族の権利」とは?
FSC10の原則、3つめは「先住民族の権利」だね。そもそも「先住民族」とはどんな人たちなの?
先住民族とは、もとからその土地に住んでいた人々のことです。現在、世界には少なくとも5,000の先住民族があり、住民の数は3億7000万人いると言われています。
※参考: 国際連合広報センターのWebサイト
※参考: 国際連合広報センターのWebサイト
世界には、日本の人口の3倍近い数の先住民族の人たちがいるんだね。
はい。そんな先住民族の中には、森の中で、森の自然を生かして暮らしてきた民族もあります。その森をあとから入ってきた人が活用するときは、元から住んでいた先住民族の権利を大切にしていかなくてはならない、というのがFSCの原則3「先住民族の権利」なのです。
FSCの原則3「先住民族の権利」は、なぜ必要?
この原則は、なぜ必要なの?
15世紀にヨーロッパの国々が新しい土地への進出を目指して大規模な航海を始めたころ(大航海時代)から、世界のさまざまな地域で、先住民族があとから入ってきた人々に土地や資源をうばわれて苦しい生活に追いやられるということが多く発生してきました。現代でも、先住民族の権利が十分に認められず困難な生活を送るなど、世界各地で先住民族をめぐる問題は続いています。
例えば東南アジアでは、先住民族の許可を得ることなく、開発業者が自然の森をアブラヤシのプランテーション(大規模農園)や人工林に変えてしまった場所がたくさんあります。それによって絶滅の危機におちいっている先住民族もあります。
そんなかでFSCは、森で暮らしてきた先住民族の権利を大切にして、先住民族とも話し合いながら森を管理していくことが必要だと考えているのです。
具体的には、FSC認証で次の6つの基準を設けてチェックしています。
3.1 森林管理により影響を受ける先住民族と、その権利を把握している
3.2 先住民族のもつ慣習や伝統的な権利を尊重している
3.3 先住民族に代わって森林を管理する場合、自由な話し合いで決められた約束に基づいている
3.4 先住民族の権利に関する国連宣言を守っている
3.5 先住民族にとって重要な場所を守っている
3.6 先住民族のもつ知恵・伝統的技術やそれに関する権利を保護している
例えば東南アジアでは、先住民族の許可を得ることなく、開発業者が自然の森をアブラヤシのプランテーション(大規模農園)や人工林に変えてしまった場所がたくさんあります。それによって絶滅の危機におちいっている先住民族もあります。
そんなかでFSCは、森で暮らしてきた先住民族の権利を大切にして、先住民族とも話し合いながら森を管理していくことが必要だと考えているのです。
具体的には、FSC認証で次の6つの基準を設けてチェックしています。
3.1 森林管理により影響を受ける先住民族と、その権利を把握している
3.2 先住民族のもつ慣習や伝統的な権利を尊重している
3.3 先住民族に代わって森林を管理する場合、自由な話し合いで決められた約束に基づいている
3.4 先住民族の権利に関する国連宣言を守っている
3.5 先住民族にとって重要な場所を守っている
3.6 先住民族のもつ知恵・伝統的技術やそれに関する権利を保護している
FSCの原則3「先住民族の権利」、日本では?
先住民族の問題は、日本にもあるの?
はい、日本の先住民族として忘れてはならないのは、アイヌ民族の存在です。
アイヌ民族は、かつて蝦夷地(えぞち)と呼ばれていた北海道を中心に暮らしてきた民族です。日本語と大きく違うアイヌ語を使い、自然界のすべての物に魂が宿るという考え方をもって、独特の文化を発展させてきました。そして、自然の恵みをもたらす土地は、そこで暮らす「みんなのもの」と考えて大切にしてきました。しかし明治維新後、アイヌ民族が暮らしていた土地も「持ち主がいない土地」として開拓されていき、アイヌ民族は生活の基盤である大切な土地を失うことになってしまったのです。
2019年、アイヌの人々の誇りが尊重される社会の実現を目指して「アイヌ施策推進法」ができ、アイヌ民族が日本の先住民族だと法律で認められました。これでアイヌ民族の権利が十分に認められたわけではありませんが、一歩ずつ前進しているところです。
アイヌ民族は、かつて蝦夷地(えぞち)と呼ばれていた北海道を中心に暮らしてきた民族です。日本語と大きく違うアイヌ語を使い、自然界のすべての物に魂が宿るという考え方をもって、独特の文化を発展させてきました。そして、自然の恵みをもたらす土地は、そこで暮らす「みんなのもの」と考えて大切にしてきました。しかし明治維新後、アイヌ民族が暮らしていた土地も「持ち主がいない土地」として開拓されていき、アイヌ民族は生活の基盤である大切な土地を失うことになってしまったのです。
2019年、アイヌの人々の誇りが尊重される社会の実現を目指して「アイヌ施策推進法」ができ、アイヌ民族が日本の先住民族だと法律で認められました。これでアイヌ民族の権利が十分に認められたわけではありませんが、一歩ずつ前進しているところです。
FSCは、アイヌ民族の人たちのことも考えているの?
はい。FSC認証の日本の国内規格には、原則3の先住民族の権利について「日本では北海道においてアイヌ民族について必ず適用しなければならない」などとの注意書きがあります。アイヌ民族に配慮していることがわかりますね。
FSCの森で、先住民族はどう暮らしている?
世界のFSCの森では、先住民族の人たちはどんな暮らしをしているんだろう。
1つの例をお話ししましょう。
森と川の恵みが豊かな南米のアマゾン川流域の熱帯雨林は、昔からたくさんの先住民族の生活の場です。しかし、大規模農業開発や木の違法伐採がなどによって森が壊されたりして、これまでと同じような生活が続けられなくなった先住民族が少なくありません。
ペルーのカレリアという地域も、無計画に木が伐られて森が荒れてしまった時期があり、先住民族のシピボ=コニボ族の人々の生活が立ち行かなくなっていました。そこで、シピボ=コニボ族や周辺住民が力を合わせて2005年にFSC認証を取得して、持続可能な方法で森を管理するようになったのです。
森と川の恵みが豊かな南米のアマゾン川流域の熱帯雨林は、昔からたくさんの先住民族の生活の場です。しかし、大規模農業開発や木の違法伐採がなどによって森が壊されたりして、これまでと同じような生活が続けられなくなった先住民族が少なくありません。
ペルーのカレリアという地域も、無計画に木が伐られて森が荒れてしまった時期があり、先住民族のシピボ=コニボ族の人々の生活が立ち行かなくなっていました。そこで、シピボ=コニボ族や周辺住民が力を合わせて2005年にFSC認証を取得して、持続可能な方法で森を管理するようになったのです。
また、FSCの森の樹皮や植物から作る天然染料と、シピボ=コニボ族の伝統的なデザインを組み合わせて、美しい刺繍(ししゅう)のテキスタイル(布)を作って売るようになりました。テキスタイルを作る仕事は、これまであまりお金をかせぐ機会がなかった女性たちの新たな役割になっています。
先住民族の人々の森を活かした生活を守り、活躍の場を増やすことにもつながったんだね! そんなふうに先住民族の権利を大切にした森が増えるといいね。
【まとめ】 世界の森には、昔からその土地で暮らしてきた先住民族が弱い立場に置かれ、森での生活をうばわれて貧しさに苦しんでいるケースが少なくありません。FSCでは、そうした人々の声に耳を傾け、伝統的な権利を尊重することを大切にしています。
FSCは先住民族の権利を大切にしているね!
次回は原則4「地域社会との関係」について学ぼう!
監修:FSCジャパン
FSCⓇ C011851