2019.5.28
「環境配慮は当たり前」となる販売代理店として、よりよい製品の普及に努める
株式会社セイホウの「グリップシート」
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パッケージに関する総合デザイン・企画コンサルティング、包装・物流資材の製造・販売などを行う株式会社セイホウ。「想いを包む」をテーマにしたパッケージブランド「HAKOYA」を手がけるなど、企画から物流までを意識した幅広い事業を展開しています。
そんなセイホウが国内唯一の代理店として輸入販売を行っているのが、FSC認証紙を用いた滑り止めシート「グリップシート」です。シートに施された特殊な滑り止めコーティングが荷崩れを防ぎ、物流の効率化を図るという画期的な製品で、フランス・ENDUPACK社が開発・製造を行っています。どのような経緯で日本市場への販売を担うことになったのか、また環境配慮への認識がどのように変わったのか、同社代表取締役の塚本清孝さんに伺いました。
お話しを伺った方
- 株式会社セイホウ 代表取締役
- 塚本 清孝 さん
- 航空機部品を扱う商社マンから家業の塚本紙器製作所を継ぎ、1996年に株式会社セイホウを設立。包装と物流に関する多彩なサービス・製品を提供する会社へと成長させてきた塚本さん。子どもの頃はボーイスカウトに入団し、様々なアウトドア体験を楽しみました。「生きるために必要なことの多くを自然の中で学んだように思います。次世代の子どもたちの学びの場としても、美しい森を残さなければならないと思っています。」
グリップシートの性能に驚き、代理店に名乗りを上げる
1枚敷くだけで、なぜかものが滑らない不思議な紙。紙製の荷崩れ・荷滑り防止シート「グリップシート」は、世界48カ国5000社以上の企業で採用されており、2000万枚も流通しています。
その日本総代理店である株式会社セイホウ 代表取締役の塚本清孝さんは「グリップシート」について、「まったく新しい発想に驚きました。デモンストレーションでは荷物の間に1枚シートを挟んで動かしていたのですが、ピタリと動かない。まるで魔法のように見えました」とパリで開催された展示会で初めて見た時の印象を語ります。
滑らない秘密は、表面に施された独自のノンスリップ加工。触ってみると、シートの表面に吸い付くような凸凹のコーティングがなされています。
「1枚挟むだけでずれにくくなるので、荷物を積み重ねて収納したり、移動したりすることが楽にできるんです。滑りやすいダンボールも危険物が入ったドラム缶もぴたっと滑らなくなり、さらにテープやバンドなどと組み合わせれば、よりしっかりと固定できます。流通業にとって荷崩れは補償問題にもつながりますし、業務面の安全性も強化され、まさに革命的な商品だと思いました」
しっかりと固定して大量の物を安全に管理し、流通させることができる上、固定用のストレッチフィルムなどを削減でき、「グリップシート」自体も繰り返し使用できるなど、コスト削減に大きく貢献することが大きな魅力だったといいます。
「これはぜひとも日本で販売したいと思い、開発・製造会社であるフランスのENDUPACK社の社長であるフレデリック氏に連絡を取り、日本で販売できないかと直談判をしにいったんです。通訳はついていたものの、日本語で熱く語る私の熱意を買ってくださり、2007年より日本の代理店として販売を任せていただけることになりました」
FSC認証の他、様々な環境配慮に基づくモノづくりに共感
日本での独占販売契約を結んだのは「グリップシート」の性能面に惹かれてのこと。それまでは「グリップシート」がFSC認証紙を採用していることについて、あまり意識していませんでした。
「なんとなく『環境にいい素材を使っているんだな』という認識で、実はFSCの詳細についてはあまり詳しく知りませんでした。しかし、フランス・ノルマンディ地方のルーアンにある本社を見学し、フレデリック氏に同社のモノづくりについて伺う中で、なぜFSC認証紙を採用しているのか、その本質的な価値感を知ることとなりました。実際、流通の環境負荷を軽減するため、ENDUPACK社ではありとあらゆる取り組みを進めていました」
たとえば、紙の製造における冷却工程では、地熱・太陽光エネルギーを用いた冷却ユニットを使用しています。また独自の特殊加工技術により、同業他社の競合商品よりも紙の重量を抑えることなどの取り組みで、使用エネルギーを抑え、二酸化炭素の排出量を大きく減らしていました。
「そして、何より『製品そのものの社会貢献』を強く意識していることに、感動しました。『グリップシート』に切り替えれば、効率的な積み荷や物流網を構築できる。そうなれば、トラックの台数削減などにもつながり、環境負荷を大きく低減できるでしょうと。それに協力して欲しいと言われ、私たちも改めて真剣に取り組まなくてはならないと感じました」
世界における価値観の変化やトレンドに乗り遅れないために
日本での販売代理店契約も12年目となり、国内での取扱商社は約60社に増え、グリップシートの国内販売枚数は2018年に10万枚を突破しました。しかし、世界全体では2000万枚、米国で500万枚、フランスで600万枚であることに鑑みると、日本での販売余地はまだまだあるといいます。
「日本では海外に比べて荷物を丁寧に取り扱う文化があります。それはすばらしいことですが、今後は人材不足の時代となり、より一層効率化が求められることは間違いありません。その時に、エネルギーをかけて機械にやらせるよりも、『グリップシート』のようなちょっとした工夫で環境負荷を抑えつつ、よりよい流通を目指す方が時代にも合っていると思います」
そうした潮流は日本だけでなく、全世界においても同様といえるでしょう。特に、原料や資材の調達については、欧州や米国を中心に様々な環境配慮は当たり前になりつつあるといいます。
「欧州では環境配慮が事業を考える上での不可欠なベンチマークとなっているように、『サステナビリティな調達』が当たり前のことになりつつあります。それは中南米やアジアなど欧州を市場とみなす国にも広がり、グローバルスタンダードになっていくことは間違いないでしょう。日本でも来年の東京五輪・パラリンピックなどで、環境に配慮した資材調達が話題になっていますが、まだ十分とは言えません。今から考えるべき課題だと思います」
「環境配慮は当たり前」という考え方が当たり前になるために
しかしながら、塚本さんはENDUPACK社とのコミュニケーションを通じて「肩肘張るのはちょっと違うな」と感じているそう。
「フレデリック氏をはじめ、みんな肩の力が抜けているというか、ごく自然に環境配慮を捉えているんですよね。『できることをする。そんなの当たり前じゃないか』というスタンスです。だから、無理せずやれることをやる。そうした姿勢は、『完璧でなければ』と考えがちな日本人としては見習うべきかもしれません」
「お客様からすれば、本来は環境配慮より機能やデザインといった機能面で製品を選びたいものでしょう。環境配慮が当たり前になればそれも実現します。その意味で、FSC認証品である『グリップシート』は安心して顧客に機能だけをアピールできる製品です。しかし、FSCが当然となるまでは、私たちも『グリップシート』の代理店として製品を通じて、顧客にFSCの意味や価値を伝えていきたいと考えています」
「グリップシート」という製品に出会い、環境配慮について新たな気付きが得られたという塚本さん。グリップシートは流通業界の効率化やコスト削減を実現するだけでなく、自然と環境負荷の低減効果にもつながることが期待できます。取材を通して環境に配慮した調達を当たり前とするためには、そこに関わる人たちの輪がつながっていくことが大切なのだと改めて感じました。
【取材先募集のお知らせ】
FSC応援プロジェクトでは、FSC認証製品を導入し、利用を推進する企業様を募集しております。
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- 株式会社セイホウ
- 名古屋市東区代官町39-22 太洋ビル201
- https://www.seihohakoya.com/
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