2018.8.7
環境に優しい段ボールを、 もっと優しい段ボールへ
レンゴー株式会社の板紙・段ボール製品
- 引っ越しや製品の梱包など、様々な場面で使われている板紙や段ボール。
業界最大手のレンゴー株式会社は、2013年に古紙を主体としたコート白ボール(※)で国内初となるFSC認証を取得、2015年に段ボール原紙でも国内初のFSC認証を取得しました。
認証取得に向けてどのような取り組みをされたのでしょうか。
製紙生産部生産管理課担当課長水谷正光さんにお話を伺いました。
※食品や日用品などのパッケージに使用される片面もしくは両面が白い板紙
お話しを伺った方
- レンゴー株式会社
製紙生産部生産管理課担当課長 - 水谷正光さん
- 長年、工場勤務だった水谷さん。FSCの担当になってから、森林に関する話題やニュースが気になるようになったと語ります。「担当になったことで、部署の枠を超えて社内外の人と関わる機会が多くなったことが一番の変化ですね」
手探りで始めた認証取得への取り組み
レンゴーは今から約110年前、1909年に国内で初めて段ボールを製造した企業です。「リサイクル」の優等生と言われる段ボールの製造・販売を発祥とする同社。常に「人に、環境に優しいこと」を基本に、製造工程から製品にいたるまで様々な環境保全活動に取り組んできました。
こうした環境への取り組みを進めていく中で、取引先から「FSC認証に対応できないか」という相談が持ちかけられました。
このFSC認証取得を担当したのが、製紙生産部生産管理課担当課長の水谷正光さんです。「FSC対応についてはいくつかご要望をいただいていたのですが、段ボールはリサイクルが進んでおり、原料のほとんどは古紙であることから、市中回収古紙(※)のみがクレジット対象であった頃は、原料を調達する過程を考えると難しい面もありました。しかしお客さまのご要望でもあり、また今後、より一層ニーズが高まると考えられることから、まず、コート白ボールから取り組むことにしたんです。」
※市中回収古紙
使⽤済み段ボール箱、家庭や会社から回収した古新聞・古雑誌・雑古紙や包装材 など、消費者または商業製品から回収された古紙。
理解を得るために取り扱い手順書も手作りで
水谷さんは2012年に現在の部署に異動。それまでは工場勤務で、ずっと現場主体での業務でした。FSC認証取得の手続きについては、ひたすら規格を読み込み、手探りの状態からのスタートだったと振り返ります。
「1年間、コート白ボールを生産している利根川事業所に何度も通い、工場の担当者たちにも周知していきました。実は、私はかつて利根川事業所に在籍しており、工場のことも、担当者たちのこともよく知っていたのでスムーズに協力体制を築くことができました。」
さらに原料となる古紙を扱う各地の古紙問屋にも足を運び、無理なくできるところから協力してもらえるよう説得に回ったといいます。
「さながら伝道師のようだったと思います。FSC認証について理解していただくために、導入に向けての取り扱い手順書なども手作りで作成していました。」
また原紙の強度を保つためにはバージンパルプも必要ですが、そのパルプを供給するサプライヤーにも同様に働きかけていきました。そうして、2013年12月に利根川事業所(コート白ボール)でFSC認証を取得。半年後には八潮工場(チップボール)でもFSC認証を取得しました。FSC認証取得のベースが利根川事業所でできていたことと、また八潮工場もかつて水谷さんが在籍していた工場だったということで、スムーズに進んだそうです。
FSCの古紙回収に関する規格改定も転機に
これらの経験もふまえ、2015年には全ての製紙工場、段ボール工場、紙器工場でFSC認証を取得し、業界のトップを切って段ボール原紙から段ボール製品にいたるFSC認証製品の供給体制を確立しました。さらに2015年10月にFSCにおける古紙回収に関する解釈が変更され、これまで市中回収古紙のみをクレジット対象として扱っていたものが、産業回収古紙(※)も同等に扱うことが可能になりました。
「解釈が変わったことで、参入障壁が低くなり、ほかの製紙会社の取り組みも進んだように思います。我々にとっては競合企業が増えることにはなりますが、業界全体で取り組むことができるようになったので、市場にFSC認証製品が増え、今後ますます認知が進むと考えています」(水谷さん)。
※産業回収古紙
⼆次製造またはそれ以降の工程において生産されたものの最終用途に合わず、再使⽤することができないため、回収された古紙。断裁機にかけられた際にでる裁落紙や印刷不良品などの損紙のような未使用の紙がこれにあたる。
続けていくにはシステム化が不可欠
同社のFSC認証製品は、環境・社会課題の解決に積極的に取り組む多くの企業に採用されています。早い段階で積極的にFSC認証取得に取り組んだことで、相談を受けることも多いそうです。
これからの取り組みについて水谷さんは「FSC認証製品であるためには、少しでもFSCが認めない原料が混じってはいけない。そのため原料の入り口の管理をしっかりさせないといけないという意識があります。認証取得前から生産工程をシステム管理し、効率的な運用を行っていますが、今後も人的負荷をかけずに、そして間違いを出さないためにも、システム化をさらに進めることで、継続してFSC認証製品を送り出していきたいですね。」
環境への配慮が強く求められる今、同社は段ボール業界におけるFSCのパイオニアとして、環境に優しい製品を着実に作り続けていくことで、持続可能な社会の実現に貢献しています。
今後もますますFSCマーク製品が広がりそうですね。FSCマークを見つけたら、ぜひFSC応援プロジェクトのFacebookに投稿してくださいね!
【取材先募集のお知らせ】
FSC応援プロジェクトでは、FSC認証製品を導入し、利用を推進する企業様を募集しております。
取材をご希望される方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
お送りいただいた内容より、掲載可否を精査させて頂いた上での取材となります。
必ず掲載とならない旨、何卒ご了承ください。
- レンゴー株式会社
- 本社:大阪市北区中之島2-2-7 中之島セントラルタワー
- 東京本社:東京都港区港南1-2-70 品川シーズンテラス
- http://www.rengo.co.jp/
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