日本マクドナルド株式会社
- 赤い背景に黄色のMの文字といえば…?もうおなじみのマークですよね。そうマクドナルドです。多くの人がお気に入りのメニューがあるのではないでしょうか。そのマクドナルドのハンバーガーを包むラッピングペーパーや紙ナプキンなどに、実はFSC認証紙が使われているのはご存知でしたか?
日本マクドナルドでは2020年までに紙製容器包装をすべて、FSC森林認証を得たものにすることを決定しました。グローバル企業かつ外食産業ということで多くの利害関係者を持ち、さらに日本全国に多数の店舗を持つ同社にとって、足並みを揃えることは並大抵のことではありません。この目標に対し、どのように取り組んでいるのか、また取り組んだ先に見据える企業としての環境への責任のあり方について同社CSR部の岩井正人さんにお話を伺いました。
お話しを伺った方
- 日本マクドナルド株式会社
コーポレートリレーション本部 CSR部
マネージャー - 岩井正人さん
- 日本マクドナルドに入社して33年。店舗スタッフとして入社後、商品開発、オペレーションマネージャーなどを経験し3年前よりCSR部に。「マクドナルドのさまざまな業務を経験してきました」とのこと。「陸と海のつながりを感じられる場所」ということで休日には山形県酒田市をよく訪れるそうです。
アピールすることよりも使っていくことの重要性を重視
2016年現在では、日本マクドナルドにおけるFSC認証紙の使用率は45%。岩井さんによるとここまで順調に切り替えが進んでおり、2020年までに現在使用している紙製包装容器において使用率100%達成という目標も問題なく到達できるという見込みだそうです。
「紙製包装容器というのはハンバーガーを包むラッピングペーバー、持ち帰り用の袋(大中小)、チキンマックナゲットなどの紙製ボックス、ペーパーナプキン、飲料用の容器などになります。店舗によっては在庫の問題もありますので一斉にというわけにはいきませんが、在庫がなくなり次第順次切り替えていくようにしています。さらに我々の名刺も実はFSC認証紙を使ったものに順次切り替えているんですよ」(岩井さん)。
名刺の種類は5種類。全部そろえるのは難しいかも…と岩井さん。
もしかしたら、この記事を読んでいるみなさんの近くの店舗でも、実はラッピングペーパーがFSC認証紙なのかもしれません。でも、それは一目ではわかりづらいかも…。なぜなら、FSC認証紙を示すあのマークが印刷されていないからです。このことについて岩井さんは、「このマークについてはいろいろ検討しましたが、マークの大きさや規定の制約があるため、包装紙のデザインとのマッチングなども考えて現在社内で調整中です。われわれとしては、FSC認証紙を使っているというアピールよりも使っていくことが重要と考えています。CSRレポートなどを通して伝えていければと思っています」と話します。
サプライヤーとの勉強会からFSC導入をスタート
そもそも日本マクドナルドがFSC認証紙導入に取り組むきっかけとなったのは、2014年4月に米マクドナルドで初めてCSRおよび持続可能性フレームワークが発表され、全世界のマクドナルドにおいて、現在使用している紙製容器包装類に関して2020年までに100%認証されたものまたはリサイクルのものを調達することを決定したことによるものです。
この決定を受け、2014年5月から日本マクドナルドでもどのように進めるべきか検討することになりました。進め方は各国のマクドナルドに任されていたので、同社ではグローバルマクドナルドと物流・購買の業務提携をしている協力会社からFSC導入プロジェクトの全面バックアップを受ける形で勉強会を開始。監査会社も含めて、FSC認証紙を導入した場合の課題や対応について洗い出していきました。
「導入することでコスト高になるのではないか、などさまざまな議論が出ました。FSCの取り組み自体を知らない状態でのことだったので、いろいろ誤解をしたりしていたこともあったのですが、それを一つずつクリアにしていきました」(岩井さん)。
こうした検討を重ねた後、業務提携している協力会社から国内のサプライヤーに向けFSC認証紙を導入することを通達。各サプライヤーへのサポート体制も整えることで混乱なく移行できるように進め、2015年には切り替えに関しての移行計画が作成されました。米マクドナルドの決定からわずか1年というスピードでした。
「切り替え作業が完了して、それで終わりではありません。FSC認証の導入がなぜマクドナルドにとって必要なのかを伝えることも重要な作業です。そこで2015年の当社のCSRレポートにまず導入について掲載し、2016年には達成数値とともに掲載し、われわれのステークホルダーにも周知するようにしたのです」(岩井さん)。
周知したことで大きな反響もありました。同じ外食業界だけでなく自治体からもこの取り組みについて聞かれることが多くなったのは意外なことだった、と岩井さんは話します。
FSCに取り組むことがSDGsの近道に
世界全体が目指すべき大きな目標として定められた、持続可能な開発目標(SDGs)。国連加盟国が2015年から30年までに、貧困や飢餓、エネルギー、気候変動、平和的社会など、持続可能な開発のための17の目標を達成すべく力を尽くそうというものです。これに対し、国内企業も達成のために経営の一環として活用する動きが出てきています。しかし、掲げられた目標それぞれについて達成することへの意義は理解できるものの、何から、どのように取り組むべきか躊躇しそうなほど大きな課題でもあります。岩井さんはこの大きな取り組みにはまずFSCを導入することから入るとわかりやすいと話します。
「これからの企業にとってSDGsは、取り組むべき大きな目標といえると思います。例えば目標15では『陸の豊かさを守ろう』(陸上の生態系や森林の保全に関する目標)という内容のものですが、これには作る側の責任、使う側の責任の両方が意識し活動して初めて達成される目標です(※1)。これまで当社はどちらかというと使う側、下流の部分しか見えてなかったのですが、SDGsで提唱されたことで上流部分、作る方にも目を向けるきっかけにもなりました。」(岩井さん)。
SDGsの最終目標は世界から貧困をなくし平和に暮らせることですが、『持続可能な開発』としているように、取り組むことで新たな商機を見出すきっかけにもなるなど、企業にとってはビジネスチャンスになると岩井さんは語ります。
「SDGsは個々の目標がはっきりと定められているので、うちの会社ならこれができるんじゃないかと検討しやすいのも特徴です。そのなかで、FSCへの取り組みはSDGsに取り組む理由づけがしやすいと思います。FSC自体を一種のコミュニケーションツールとして捉えると取り入れやすいのではないでしょうか」と岩井さん。
FSCジャパンでも、FSCの「10の原則」はSDGsの17の目標と169項目のターゲット(達成基準)のうち、11の目標と35項目のターゲットに貢献しているというレポートを発表しました(※2)。例えば、企業で一番よく使う紙類などをFSC認証紙にすることから始めるなど、FSC認証紙を活用することでSDGsのアジェンダを理解しやすく、かつ取り組みやすくなるのではと語ります。
同社ではFSC以外にも、積極的に環境への配慮を実践しています。日経BP社の「環境ブランド調査2017」では廃棄物削減に力を入れている企業として、日本マクドナルドは7位という評価を受けています。環境ブランド企業としての総合ランキングでは17位、外食産業の中では1位という位置づけです。
環境に配慮することを企業成長への新たな戦略として捉える、これからの企業のあり方を日本マクドナルドが体現しているように感じた取材でした。
※1 SDGsの17の目標については以下のページをご参照ください。
http://www.unic.or.jp/news_press/features_backgrounders/15775/
※2 FSCが貢献するSDGsの11の目標と35項目のターゲット(達成基準)
https://jp.fsc.org/download-box.455.htm
日本マクドナルドCSRレポートはこちら
http://www.mcdonalds.co.jp/company/csr/
【取材先募集のお知らせ】
FSC応援プロジェクトでは、FSC認証製品を導入し、利用を推進する企業様を募集しております。
取材をご希望される方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
お送りいただいた内容より、掲載可否を精査させて頂いた上での取材となります。
必ず掲載とならない旨、何卒ご了承ください。
- 日本マクドナルド株式会社
- 東京都新宿区西新宿6-5-1 新宿アイランドタワー
- http://www.mcdonalds.co.jp/
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