2022.2.24

「毎日のケアを心地よく快適にしたい」
FSC認証の天然コルクをハンドル部分に使用したカミソリを開発

Schick「コルクスホルダー」

 
カミソリのハンドル部分に、FSC認証を取得した天然コルクを使用している「コルクスホルダー」。手に持ってみると軽くて持ちやすく、ナチュラルな雰囲気はバスルームにもしっくり馴染みます。でも、カミソリの持ち手といえば、一般的にはプラスチックなどが主流のはず。そこで、発売元であるシック・ジャパンの貝瀬嘉世子さん、今泉理恵子さんに、コルクを使った製品開発に至った目的や経緯、日本での反応などについて伺いました。

お話しを伺った方

シック・ジャパン
シック・ジャパン株式会社 マーケティング本部 PR&コミュニケーションコーディネーター
今泉理恵子さん(左)
シック・ジャパン株式会社 マーケティング本部 男性用カテゴリブランドマネージャー
貝瀬嘉世子さん(右)
世界ブランドであるSchick製品を、日本市場向けに展開することがお二人の仕事。「製品へのお客様の反応を通じて、日本での環境意識の変化を常々感じています」。

脱プラスチックを意図して、水に強い「天然コルク」を採用

毎日のケアにかかせない「カミソリ」製品。中でも刃が脱着式のシェービング製品は、その性能と使い勝手の良さで、愛用している方も多いでしょう。シック・ジャパンはウェットシェービングの国内トップシェアブランドとして数々の製品を展開し、長らく市場を牽引してきました。

その中で、ちょっと異色の製品として登場したのが、FSC認証を取得した「天然コルク」を85%(残りの15%は成形用接着剤)ハンドル部分に使用したカミソリ、「コルクスホルダー」です。

Shick「コルクスホルダー」
ハンドル素材に天然コルクを採用した「コルクスホルダー」

シンプルでちょっとレトロなルックスは、おしゃれな洗面台やバスルームにもぴったり。手にとってみると、天然コルクの温かみがあり、なめらかな感触が心地よく、普段より上質なケアができそうな気がします。

「Schickでは、創業以来、お手入れの時に心地よさや快適さを感じてもらうことを大切に、製品づくりを行ってきました。『スキンケアを楽しんでもらうため』には、刃の切れ味や肌への優しさ、使いやすさや見た目など様々な要素が求められますが、近年ではお客様の環境への意識が高まり、サスティナブルなライフスタイルを好まれる方が増えてきました。私達も企業としての社会的責任に加えて、そうしたお客様のニーズにも応えられるような製品づくりに取り組むようになったのです」(貝瀬さん)

男性用カテゴリブランドマネージャーを務める貝瀬嘉世子さん
男性用カテゴリブランドマネージャーを務める貝瀬嘉世子さん

製品開発を行っている米国本社では、以前からサスティナブルな素材についての研究・リサーチが続けられてきました。同社の他ブランドである「ブルドッグ」では、ハンドル部分に竹を採用した製品や、ビール瓶のリサイクルガラスを70%以上使用した製品が開発・発売されています。そして、今回は脱プラスチックを意識した代替素材として天然のコルクに着目することになりました。

「天然コルクは、コルク樫という木の樹皮から作られ、環境への負荷が低い素材です。木を伐る必要がなく、1本のコルク樫だとおおよそ25年目から約9年ごとに収穫でき、樹齢200年なら16~19回も収穫ができます。また、天然コルクは素材としても優秀で、ワックス状物質”スベリン”を含んでいるため防水性が高く、水回りで使う製品に向いています」(貝瀬さん)

PR&コミュニケーションコーディネーターの今泉理恵子さん
PR&コミュニケーションコーディネーターの今泉理恵子さん

しかし、ワインの栓やコースターなどにも使われているとはいえ、そう身近な素材ではありません。そんな天然コルクを使うことを思いついたのは、米国の開発担当者が休日に釣りに行き、釣り竿のグリップ部分にコルクが使われていたのに気づいたことがきっかけだったといいます。

「丈夫で水に強く、手になじんで滑りにくいというので、『これは使える!』と気づいたようですね。日本は湿度が高いので心配されましたが、天然コルクの防カビ性や耐久性は、プラスチックと比べても遜色ないことが実証済みです。安心して使っていただければと思います」(貝瀬さん)

グローバルであり、日本市場に訴求するFSC認証の紙パッケージ

シック・ジャパンの製品は、米国本社や欧州で製品企画や刃の製造がなされ、その後アジア・パシフィック向けの商品については、ハンドル部分の製造と刃の装着が中国でなされるという、グローバルな製造工程を経て完成します。

「コルクスホルダー」も、ハンドルの原料となる天然コルクは中国のFSC認証取得の森から調達され、同国の工場で加工されます。その時に使う接着剤も、環境に影響がない無毒性のものが採用されています。また、金属芯とコルクを分別して廃棄することができます。

そしてさらに、コルクスホルダーを日本市場で展開するためのパッケージにも、脱プラスチックを意識して紙製が採用されています。刃を保護するカバーを除く90%以上が紙となり、FSC認証紙が採用されています。

「紙パッケージについては日本市場向けに独自に開発しました。製品開発の理念は世界全体で共有していますが、法的な規制やお客様が求められる情報などは国や地域によって異なるので、日本のお客様向けに合わせる必要があるためです」(今泉さん)

ナチュラルなイメージが伝わってくるパッケージ。
ナチュラルなイメージが伝わってくるパッケージ。

紙パッケージになると商品が直接見えなくなるので、写真で製品をしっかり見せるとともに、それがどのような製品であるか、情報とイメージなどで伝える必要があります。

「コルクスホルダーのコンセプトとして、脱プラスチックやサスティナビリティが重要な意味を持つことは明らかですが、それを強く押し出すのには違和感がありました。それよりも使い心地やケアの気持ちよさが伝わるようなものにしたいと考え、肩の力を抜いたナチュラルなデザインとし、FSC認証マークも、さりげなく製品のコンセプトを伝えるものとして配置しました」(貝瀬さん)

FSCマークもさりげなく入っています。
FSCマークもさりげなく入っています。

さらに「コルクスホルダー」だけでなく、2021年には男性用の主力商品について紙パッケージへの切り替えを推進。2022年には、女性用の主力商品も紙パッケージに切り替えることを発表しています。

「当初の調査では、『中身が見えないと不安』というお客様も少なくなく、紙パッケージへの切り替えは少々思い切りが必要でした。しかし、プラスチック削減という社会課題に対し、シック・ジャパンとして持続可能な社会に貢献するという具体的な取り組みが大切だと考えています。幸いブランドとして品質に信頼をいただいていることもあってか、紙に切り替えた後でも大きな影響はないので、順次できるところから取り組んでいきます」(貝瀬さん)

ジェンダーや年代もニュートラルに、”心地よいケア”を訴求する

現在、「コルクスホルダー」は全国のウエルシア薬局とECショップにて販売中で、お客様からの反応は上々。とりわけ女性からの高評価の声も多いといいます。

「もともとジェンダーニュートラルな製品として開発したものですが、通常は、刃が脱着式のシェービング製品は男性ユーザーの方が多いもの。しかし、SNSやレビューなどでは、女性からの反応が目立っており、『ナチュラルでおしゃれ』『エコでよい』などのコメントをいただいています。私も個人的には女性から人気が出るのではないかと思っていたので、今後も反応を楽しみにしています」(今泉さん)

SNSでも訴求
SNSでも訴求

さらに、ヒゲ剃り製品の使用者といえば40代男性が中心ですが、エシカル消費やサスティナビリティに関心の高い、若い世代にもじわじわと愛用者を広げています。

「現在、トップシェアのメーカーとして男性の5人に1人が当社製品をお選びいただいている状況にあります。その方々の毎日のケアに『良い製品』を届け、自分らしく”いい顔”でいていただくためには、性能や機能性だけでなく、サスティナビリティも重視される時代になってきたのだと実感しています。さらに新たなファンを獲得できるよう、エシカルな消費活動に関心が高い、若い世代にも、訴求していけたらと考えています」(今泉さん)

社会やお客様に影響を受けつつ、コルクスホルダーの施策に携わることで、貝瀬さん、今泉さんも、企業に求められるサスティナブルな事業活動のあり方と、FSC認証との共通性を実感したといいます。

「以前から認証制度やマークは認識していましたが、今回コルクスホルダーを通じて、改めてFSC認証の仕組みや考え方を詳しく知り、森の保全や森林資源の活用方法などだけでなく、経済性とのバランスや働く人の権利、地域文化の保全など、様々なことに考慮されていることに驚きました。そして、それはジェンダーニュートラルやコミュニティを重視する当社の姿勢とも重なり、共感があったからこそ連携が実現できたようにも感じています」(貝瀬さん)

日本に上陸して61年目というSchick。市場をリードするトップシェアメーカーとして、技術革新による機能・性能の向上に加え、環境配慮にも意識した「良い製品」づくりのための努力が続いていきます。

シック・ジャパン株式会社
https://schick.jp/

RELATED POST関連記事