2022.1.31

「もったいない」から生まれたスパイス活用クレヨンと塗り絵本に、FSC認証紙を採用

ハウス食品グループ本社「彩るスパイス時間」

 
ハウス食品グループ本社株式会社が、製品に適さないスパイス原料を有効活用したクレヨンと、スパイスのストーリーを描いた塗り絵本を開発、発売しました。そのパッケージや用紙には、FSC認証紙を採用しています。この製品の開発背景には、どんな想いが込められているでしょうか。ハウス食品グループ本社の渡邉秀一さんに伺いました。

お話しを伺った方

ハウス食品グループ本社株式会社 新規事業開発部 課長
渡邉秀一さん
ゼロから新たな価値を生み出す新規事業開発を担当。「彩るスパイス時間」開発プロジェクトでは、社内外のメンバーと共に知恵を絞りました。

製品にならない規格外スパイスの有効活用を!

カレーやシチューのルウ、コショーなどの製品で、家庭の食卓を支えてきたハウス食品グループ。近年ではスパイスメーカー「ギャバン」や外食チェーン「カレーハウスCoCo壱番屋」なども展開しており、原材料の調達から製品の製造販売、外食産業まで、「食」を軸にした幅広い領域に事業を拡大しています。

そんな同社が、2021年8月より、クレヨンと塗り絵本の一般販売を始めました。

「食の会社がなぜクレヨンを!?」と意外性がありますが、手掛けたのは、スパイスを原料とする「彩るスパイス時間CRAYONS」と、スパイスのストーリーが塗り絵になった「彩るスパイス時間PICTURE BOOK」。大正2年の創業以来スパイスを扱ってきた同社だからこそ生まれた製品です。

発端となったのは、研究部門からの「もったいないのない世界の実現に貢献したい」という想いでした。各種スパイス製品を作る過程では、どうしても色や形などの点で製品に適さない原料が出てしまいます。しかし、たとえ規格外であっても、スパイスの色や香りの良さは残っています。その特徴を活かすことなく廃棄してしまうのはもったいない、なんとか有効活用できないか、と考え始めたそうです。

「限りある資源を循環できる世界をつくりたい。社会課題と寄り添いながら、楽しさや喜びを共感できる次世代への価値づくりに挑みたい。そんな強い想いが、規格外スパイスを活用した製品開発プロジェクトにつながりました」(渡邉さん、以下同)

スパイス活用クレヨンを手に想いを語る渡邉さん

“大人の女性”が楽しめるクレヨンと塗り絵本を

同プロジェクトは、2018年、多様な部署から賛同者が集まってスタート。単なる資源の再利用ではなく、デザインやアイディアの力でより付加価値を高めるアップサイクルを目指し、さまざまな可能性が模索されました。

「みんな楽しみながら食品の枠組みにとらわれずに名刺やアパレルへの活用など100以上のアイディアを出しました。その1つが、『スパイスの色の特徴を活かしたクレヨン』。絵具や色鉛筆ではなくクレヨンに何か惹かれるものがあり、何度か案が消えては復活することを繰り返した末、作ってみよう!という決断に至りました」

ターゲットに設定したのは「大人の女性」です。

「料理に使うスパイスの活用ということもあり、子どもよりも大人の女性に響くのではないかと考えました。イメージしたのは、アロマが香る心地よい空間で、ハーブティーでも飲みながら塗り絵を楽しむ女性の姿。癒しとなる上質な時間が提供できるよう、製品づくりに取り組みました」

開発に取り組んだプロジェクトメンバーの方々

遊び心たっぷり!自然素材の製品を共創

とはいえ、同社にはクレヨン作りのノウハウはありません。そこで、同じような想いで規格外野菜を使ったクレヨンの企画から開発、販売まで行っていたmizuiro株式会社と出会い、共創につながりました。

「私たちはスパイスに関する知識が豊富。mizuiroさんはナチュラルな素材からクレヨンをつくるノウハウをもつ。お互いの力を合わせて、はじめてこのクレヨンが生まれたんです」

クレヨンのカラーは、クローブ、シナモン、ターメリック、タイム、バジル、パセリ、パプリカ、ホワイトペパー、レッドペパー、ローリエの全10色。米由来のライスワックスに、それぞれのスパイスを練り込んで作られました。ほんのりとスパイスの香りも漂います。

「最も苦労したのは、スパイスの特徴を活かした色の選定です。ブラックペパーの黒も候補に挙がりましたが、女性メンバーから『黒は映えない』と却下されたり(笑)。逆に不要だと思ったホワイトペパーの白は、『かわいい』『箱を開けた瞬間に華やかな気持ちになれる』と採用となりました。結果的にオータムカラーの緑色や茶色の系統が充実し、自然の中にある微妙な色の違いを表現できるラインナップとなったのではないでしょうか」

スパイスの名前がそのままカラー名に

クレヨンと併せて作られた塗り絵本には、スパイスにゆかりのある国をモチーフとした10種類の絵柄が描かれています。

「例えばタイムのページには、これがフランス料理によく使われることから、パリの街並みが描かれています。絵に登場するカフェの看板「スパイスクレヨン『タイム』」のつづりが、TIME(時間のタイム)ではなくTHYME(スパイスのタイム)になっているなど、メンバーの遊び心も盛り込まれているんですよ」

タイムをテーマにしたページ

当然のように採用されたFSC認証紙

「彩るスパイス時間」のもう1つの大きな特長は、FSC認証紙を採用していることです。クレヨンのパッケージと塗り絵本の裏表紙には、FSCマークが付いています(2021年販売開始時より)。

「当社は、循環型モデルの構築に向けてCO2削減や廃棄物削減を重要テーマに設定し、『社会への責任』を果たしていくことに強い使命感をもって取り組んでいます。そうした活動の一環として、製品の紙パッケージについては、森林に関する課題に配慮したFSC認証紙の使用を推進してきました。この製品の開発にあたっても、FSC認証紙を使わないという選択はないだろうと、当然のように採用に至りました」

ここにFSCマークが!

環境配慮に大きな共感

製品の一般販売に先立ち、2020年にクラウドファンディングを実施。アタラシイものや体験の応援購入サービス『Makuake』に掲載すると、目標金額の20倍もの支援が集まりました。応援購入したサポーターからは、「斬新なアイディア」「ロスをなくすのは賛成」「パッケージも素敵」「スパイスへの愛が伝わる」など、好評のコメントが多数寄せられました。

「何より『スパイスがクレヨンに?』というインパクトが大きかったようです。また、製品にならない原料を有効に活用し、環境に配慮した素材を使っている点にも、大きな共感をいただいたと感じています」

「Makuake」での反響を受け2021年8月、ついにmizuiroのオンラインショップで一般販売が開始されました。現在、実店舗での販売も始まりました。

さらに、単に製品を販売するだけでなく、「このクレヨンで塗り絵を描くことで新しい価値を提供していくためには、他にどのようなコトができるのか」を模索しているといいます。

「幅広い年齢層の方が楽しめる塗り絵は、さまざまな活用の可能性があるツールです。先日、地域貢献活動の一環として高齢者サロンにこのクレヨンと塗り絵本をお持ちしたところ、みなさん熱心に取り組んでいらっしゃいました。また、環境保全協会と連携して子ども向けの環境講座に参加した際にも持参し、塗り絵を通じて体験的に環境問題について学べるとのお声をいただきました。スパイスカレー専門店との連携も模索しています。塗り絵を入口にし、肩ひじ張らずに環境意識を高める機会にするなど、いろんな使い方を提供していきたいですね」

素材から活用方法まで、一貫して環境への配慮がうかがえる「彩るスパイス時間」。おうち時間に塗り絵を楽しみながら、限りある資源の有効活用や持続可能な森林管理についても、ちょっと思いをめぐらしてみてはいかがでしょうか。

ハウス食品グループ本社株式会社
https://housefoods-group.com/socialvalue/crayons.html

mizuiro株式会社
https://shop.mizuiroinc.com/

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