2021.12.15
2022年寅年・年賀はがきがFSC認証紙に!
手に取れる”紙”の年賀状の良さを見直すきっかけに
日本郵便株式会社「年賀はがき」
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日本のお正月には欠かせない「年賀状」。2022年(令和4年)用の年賀はがきにFSC認証紙が採用されたのはご存知ですか? FSC認証紙が採用された経緯や、取り組みに込められた思いなどについて、日本郵便株式会社の藤川芳郎さん、片岡宏介さん、土肥功次郎さんに伺いました。
お話しを伺った方
- 日本郵便株式会社
- 左より調達部 係長 藤川芳郎さん、切手・葉書室 係長 片岡宏介さん、切手・葉書室 係長 土肥功次郎さん
- 企画担当の片岡さん、調達担当の藤川さん、周知担当の土肥さんが、それぞれ協力し合い、まさに三位一体でFSC認証紙の年賀はがきを実現させました。「年賀はがきの担当というと季節労働のように思われがちですが、実は年間通じて仕事をしています!」。
製紙会社からの提案を機に、FSC認証紙に切り替え
新しい年を告げる挨拶状として、日本のお正月には欠かせない「年賀状」。明治20年頃には、はがきの年賀状が一般化し、昭和24年に初めてお年玉付きの「年賀はがき」が登場しました。その後、キャラクター入りやご当地ものなど種類が増え、ピーク時の発行数は44億枚を超えたといいます。現在は減少傾向とはいうものの、2022年用に日本郵便から発行された年賀状は約18.3億枚にも上ります。
その年賀はがきが、2022年用から全てFSC認証紙にリニューアルされました。シンプルな無地のほか、インクジェット紙や広告付き、ディズニーの「くまのプーさん」の登場キャラクター「ティガー」をイメージしたデザイン、そしてご当地の景勝地やゆるキャラをあしらった寄付金付きの絵入り地方版28種類など、様々な券種が発行されています。
年賀はがきの調達・企画を担当する片岡さんは、「年賀はがきの企画は、前年の年賀はがきが販売される頃、約1年前の11月から始まります。枚数や券種の他、どのような紙にするかまで、藤川ら調達部と相談しながら決定していきます。その際に、藤川から『FSC認証紙にしてはどうか』という提案があり、検討することになりました」と、FSC認証紙採用のきっかけについて話します。
「製紙会社の工場見学に訪れた際、改めて再生紙を製造する大変さを知りました。特に年賀状は高い白色度を必要とするので、その分、環境負荷が大きくなります。環境配慮の観点からこれまで年賀状に古紙を配合してきましたが、この工程を見直せないか?と考えたときに出会ったのがFSC認証紙でした」(藤川さん)
FSC認証が環境や人権に配慮した「信頼ある国際認証」であることを知り、改めて周りを見渡すと、FSC認証紙が様々な企業の商品やパッケージなどに採用が進んでいることに気づいたといいます。
「東京オリンピック2020でも多用されていましたね。実は片岡に提案した後で知ったのですが、社内のプレゼンテーションではしっかりアピールしました。そうした事例も追い風になり、FSC認証紙の採用を本格的に検討することになったのです」(藤川さん)
「区分機対応」や「FSCマークの配置」などを試行錯誤
年賀はがきの調達数量は、約18.3億枚という大量ながら、「FSCミックス紙」が確保できる目処がつきました。しかし、大きな壁になったのが、新たに調整が必要となる「紙の配合」の難しさでした。
「強度や白色度はもちろん、さらに重要なのが適度なコシやなめらかさです。郵便物を仕分ける際には『区分機』と呼ばれる機械を通すのですが、紙が適していないと絡んだり滑ったりして機械を止めてしまうのです。そこで、切手・葉書室の熟練した専門の担当者がしっかりと検査・調整を行い、各製紙会社と連携しながら開発を行っていきました。それにはけっこう苦労されていましたね」(藤川さん)
11月に企画が開始され、調達数量の決定は翌年の1月。並行して紙の配合を調整し、5月頃に紙質が確定した後に、紙の発注、印刷と続いていきます。もちろん、その前には表裏のデザインを決める必要があり、FSCマークの記載位置についても検討されました。
「年賀はがきの表面にはお年玉くじの番号が入り、住所記載のスペースも十分に確保しなければなりません。一方でFSCマークには、原材料や認証番号などを入れる必要がありました。当方としては住所や名前を記載するスペースを確保するために、FSCマークはできるだけ小さく入れたいところでしたが、印刷した際にロゴや情報の視認性が担保できなくてはならないということで、FSCジャパンの担当者と協議しながら決めていきました」(片岡さん)
何度となくやりとりした結果、FSCマークは表面の差出人の郵便番号欄の脇に落ち着き、小さいながらも存在感を放っています。
「年賀はがきは金券と同等のため、要件を満たす十分なセキュリティを備えた印刷会社によって製造されています。紙の供給を受けながら半年ほどかけて印刷され、10月には日本全国約2万箇所の郵便局へと送られていきます」(片岡さん)
知ることが第一歩
11月1日に日本全国の郵便局で一斉に年賀はがきの販売が開始され、早々に入手した人もいるでしょう。FSC認証紙の採用については、事前にプレスリリースを発表したこともあり、各メディアで取り上げられました。
そうした周知活動を担当したのが、本年度から配属されたという土肥さん。郵便局への納品調整なども担当しつつ、日本郵便としてプロモーションライセンスを取得し、FSC認証紙が年賀はがきに採用されていることについて様々なところでアピール活動を行いました。
「プレスリリースのほか、郵便局で配布しているチラシなどでも紹介しており、環境保全やエシカル消費などに関心の高い方々を中心に反響がありました。また、年賀はがきを包む包装紙や納品用のダンボールなどにプロモーション用のFSCマークを入れ、あらゆる機会を通じてFAC 認証紙であることをPRしました。当社の社員に向けては、日本郵便の社内報でSDGsの取り組みの一環として紹介しました。今後は、全国の小中学校や高校を対象に、日本郵便が教材を提供・支援している『手紙の書き方体験授業』でFSC認証年賀はがきについて紹介する予定です」(土肥さん)
実際、知ることによって、「大きく印象が変わった」と語るのが片岡さん。「施策を通じてFSC認証やFSCマークを知りましたが、知る前と比べて日々の生活の中でFSCマークが目につく回数が非常に増えました。知ることで気がつき、目に付き、気になり、調べてみると森林保全などにつながっていることを知る。そうした人が増えれば、FSC認証品を含め、環境に配慮した商品を選ぶことも増えるのではないかと思います。年賀はがきが、そのきっかけになったらいいなと思っています」
藤川さんも「正直言って、18.3億枚ものスペックを変えるのは社内外を通じて本当に大変なことでした」と振り返り、「しかしながら、ここ数年で社会の中にカーボンニュートラルやSDGsなどの認識が徐々に広がり、追い風になったからこそ進めてこられたのかと思います。年賀はがきへのFSC採用が、さらに追い風となってグリーン調達が加速していくといいですね」と語ります。
そして、SDGsにもあるように、森の資源を守るだけでなく有効に活用し、社会的・文化的な活動に活かすという意味でも、「紙の文化」は見直されるべきといえるでしょう。思いのこもった年賀状や手紙も、そのひとつであることは間違いありません。
「年明けのチャットやメールは、タイミングよく来るという良さはありますが、タイムラインで流れていってしまうもの。年賀はがきは、手にとって何度も眺められるし、あとになって見返すこともありますよね。デジタル化が進んでも、紙というアナログの良さは変わらないと思います」と土肥さん。
デジタル化が進んで、つい便利なチャットやメールで済ませがちな昨今ですが、日々お世話になっている人はもちろん、コロナ禍でなかなか会えない人や、久々に連絡をとってみたい旧友などに、FSC認証紙を使った年賀はがきで、新年の挨拶を送ってみてはいかがでしょうか。
【取材先募集のお知らせ】
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お送りいただいた内容より、掲載可否を精査させて頂いた上での取材となります。
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