2021.9.30

FSC認証材も活用したシューズづくりを軸に、世界のCO2排出削減をリード

サンフランシスコ発のライフスタイルブランド「オールバーズ」

 
FSC認証材から生まれた靴や衣服を製造・販売する「オールバーズ」。ビジネスの力で気候変動を逆転させようと、FSC認証材以外にも多様な自然素材を活用するなどさまざまな温室効果ガス削減対策を行っています。何を目指し、どのような製品づくりを取り組んでいるのか、オールバーズの蓑輪さんと、商品まわりへのFSC認証材活用でオールバーズとタッグを組む印刷会社ノコムの青木さんと佐藤さんにお話を伺いました。
 

お話しを伺った方

Allbirds(オールバーズ)合同会社
蓑輪光浩さん
日本におけるマーケティングディレクター。「自分たちが良ければいいいではなく、世界との調和を目指す視点を忘れないようにしています」。
 
 
株式会社NOCOM(ノコム)
青木道太郎さん(右)、佐藤優来さん(左)
FSC認証をはじめとするサスティナブルな素材を活用し、オールバーズのPOPやパンフレットなどの印刷物を制作。2人とも大の自然好きで、「子どもたちが自然の中で遊べる環境を残していきたい」と口を揃える。

タイム誌が選んだ「世界一履き心地の良い靴」

オールバーズは2016年3月に米サンフランシスコで生まれたライフスタイルブランドです。スニーカーやランニングシューズなどの靴を中心に、Tシャツやアンダーウエアなどのアパレル商品も扱っています。

ブランドを立ち上げたのは、アパレル業界とは異なる分野出身の2人でした。

「創業者の1人であるティム・ブラウンはニュージーランドの元プロサッカー選手で、自分が履きたいと思うシューズを開発したいと考えていました。また、もう1人の創業者は、バイオテクノロジー分野の専門家であるジョーイ・スヴィリンジャー。そんな2人が出会い、意気投合して生まれたのがオールバーズです」(蓑輪さん)

ロゴのないシンプルなデザインのオールバーズの靴

オールバーズの靴はSNSや口コミで評判が広がり、創業からわずか5年ですが、現在では世界40カ国以上で販売しています。日本にも2020年1月に上陸。オンラインショップのほか、原宿と丸の内に店舗を構えています。

「ここまで皆さんに選んでいただけるようになった理由は、なんといっても履き心地の良さ。アメリカのタイム誌で『世界一履き心地の良い靴』に選ばれたこともあり、オバマ元米大統領や俳優のレオナルド・ディカプリオ氏などの著名人にも愛用されています」(蓑輪さん)

オールバーズ丸の内店

「孫の世代のために」――ビジネスの力で気候変動逆転へために

オールバーズ製品の特徴は、シンプルでスタイリッシュなデザインと履き心地の良さに加え、サスティナブルな素材でできていることです。サスティナブルなものづくりを行う背景には、世界規模で深刻化する気候変動の問題があります。

「皆さんの身につけている服や靴が、気候変動の大きな要因のひとつになっていることをご存知でしょうか。ファッション業界は年間約21憶トンものCO2を排出しており、これは約4.6億台の自動車から発生する排出ガスに相当します。そんな現状に危機感をもった創業者2人は、『この美しい地球を自分たちの孫の世代にも残したい』と、徹底的に環境に配慮したものづくりに挑んだのです」(蓑輪さん)

ビジネスの力で気候変動を逆転させるべく、オールバーズ社は高い目標を掲げています。

「1足の靴について、原材料の生産から調達、製造、輸送、使用、廃棄までのプロセス全体の温室効果ガスの排出量をCO2に換算するとおよそ14kgCO2eです。オールバーズでは、これを2025年までに半減、2030年にはほぼゼロにすることを目指しています。日本や各国政府が掲げている『2050年カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)』より20年早い目標に取り組んでいくことで、見える世界があると考えています」(蓑輪さん)

「ウールランナー」

では、具体的にどのような製品を作っているのでしょうか。一般的な靴には石油由来のプラスチックがたくさん使われていますが、同社ではそのような素材を天然素材に置き換えました。

オールバーズが最初に世に送り出した靴「ウールランナー」は、アッパー(上部)にニュージーランドのメリノウールを使用しています。そのウールは「ZQメリノ」という、環境保全・動物愛護・社会的義務において第三者機関の認証基準をクリアして生産されたものです。靴底には、ブラジルにおいて雨水のみで生産されるサトウキビからできた素材「SweetFoam®」を使用。インソールには石油の代わりにヒマシ油を使い、靴紐は100%再生ポリエステルで作るなど、細部にまで配慮しています。

また、温室効果ガスは製品の生産や輸送などさまざまな過程で発生します。そこで、製造工場などの施設では再生エネルギーを積極的に導入。製品の輸送には、航空輸送に比べて温室効果ガスの排出が少ない海上輸送を最大限に活用しています。さらには、より環境負荷の低いウールの生産を目指して、従来の工業化された農法とは異なる再生型農業にも取り組んでいます。

再生型農業と牧羊を組み合わせて環境負荷を軽減

FSC認証のユーカリからできた繊維を活用

こうした取り組みの一環として、FSC認証材にも着目。2018年、FSC認証のユーカリの木から生まれた繊維「テンセルTMリヨセル」を使ったシューズ「ツリーランナー」を発売しました。

ユーカリの木から生まれた「ツリーランナー」

「自然素材というとコットンを思い浮かべる方も多いでしょうが、実はその育成には大量の水や農薬が使われ手間もかかります。しかし、ユーカリの木は強くて成長が早く、コットンと比べると水の使用量は95%少なくすみ、CO2排出量は50%削減することが可能です。環境負荷をあまりかけることなく、さらに正しく管理された森で調達された材料が使われるとなれば、我々のシューズへの採用は必然だったと思っています」(蓑輪さん)

FSC認証材から生まれたテンセルTMリヨセルは、シルクのようになめらかで通気性が良く、軽やかな肌触りが特徴。現在では、やわらかな肌触りのウールと並ぶ主要アッパー素材として、何種類もの靴に使用されています。

店舗インテリア、紙バッグ、名刺もFSC認証材

オールバーズがFSC認証を取り入れているのは商品だけではありません。店舗に置かれている椅子やカウンターなどの木製品も、ほとんどがFSC認証の木材を使用したものです。

オールバーズ原宿店

また、靴を入れる箱やショッピングバッグ、商品に付けるタグ、社員がもつ名刺など、幅広くFSC認証材を使用。2019年は使用している紙の90%がFSCマーク入りだったというデータがあります。商品の動きの速さに認可のタイミングが合わずFSCマークなしで展開するケースがあるものの、「基本的にすべての紙はFSC認証を取得する方針」(蓑輪さん)といいます。

ショッピングバッグと靴の箱
商品タグにもFSCマーク

そうした印刷物の紙の調達や印刷を引き受けるノコム社では、オールバーズからの発注については、毎回の指示がなくても当然のようにFSCマークを付ける方向で動くといいます。P4

「環境にやさしい素材や製品について情報にアンテナを張り、常に新しい提案ができるように努めています」(佐藤さん)

「最近、オールバーズさんをはじめ、多くのお客様からFSC認証活用のご要望が増えています。環境意識の高まりを肌で感じますね」(青木さん)

今後もFSC認証材を積極的に活用していく方針のオールバーズ。蓑輪さんは「最終的には、あえてFSC認証をうたわなくても、当たり前のように身の回りにFSC認証材があふれているという世界を目指したい」と展望を語ります。

オンラインでインタビューにご協力くださった蓑輪さん、青木さん、佐藤さん

他社とも連携して気候変動に立ち向かっていく

サスティナブルな素材の開発に積極的に取り組む同社。メリノウールとユーカリを組み合わせて、快適さと環境負荷削減のバランスが整った独自の繊維「Trino®」や、ズワイガニの殻から抽出した天然の消臭機能キトサンを配合した「TrinoXOTM」なども開発し、Tシャツやアンダーウエアなどに活用しています。最近では、レザーに代わる100%植物由来のプラントレザーの開発に成功し、商品化の予定です。

ヘンプ(麻)とユーカリを組み合わせた素材のアパレル製品

2025年度までに温室効果ガスを半減させるという同社の目標は、ほぼ達成の目途が立っている状況だといいます。しかし、世界の気候変動を食い止めるには、1社だけの努力では限界があります。そこで、オールバーズはこれまでに開発してきた独自技術をオープンソースとして公開。他の企業が活用できるようにしているのです。

「ほかの企業にも技術を活用していただくことで、サスティナブルなものづくりが世界中に広がってほしいからです。すでに100社以上からオールバーズの技術を使いたいという申し出をいただいています」(蓑輪さん)

ものをつくる側の意識が変化しているなか、消費者の意識も変化が求められます。

「消費者の皆さんが、どのような商品を選択するか。その1つひとつの行動が、世界の気候変動を変えていく、大きなうねりにつながると信じています」(蓑輪さん)

ファッション業界のさまざまな常識を次々と覆していくオールバーズ。サスティナブルなものづくりへの本気度が伝わってきます。

オールバーズ
https://allbirds.jp/

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