若い世代が森を支える「新しい林業」とは?
当サイトでもたびたびご紹介している東京都西多摩郡檜原村。
そこに今回ご紹介する「東京チェンソーズ」の本社があります。
古民家を活用した社屋は縁側付きで、どこか懐かしい感じ。
奥も手前にも深い森が広がっています。代表取締役の青木亮輔さんを訪ねました。
檜原村にある「東京チェンソーズ」の事務所。丸太の看板が目印です。
「東京の林業」に若者が帰ってきた!
東京都森林組合で働いていたメンバーが独立して立ち上げ、現在社員8名、アルバイト2名が所属しています。平均年齢は35歳。60代以上が多いという林業界でまさに異色の存在です。
「はじめは森林組合からの委託事業が中心だったんですが、もっと発展したいし、チャレンジしたいと考え、2010年頃から直請けができるように入札資格や事業体認定を受けました。公共的な山づくりの仕事が多いのですが、『FSCの森』についても一部植栽や下刈りなどの育林業務をお手伝いしています」(青木さん)
株式会社東京チェンソーズ 代表取締役 青木亮輔さん。
29歳で会社を立ち上げました。
一言に「森林保全の仕事」といっても様々。春は主に植林、夏は下草刈り、秋冬の“木が水を吸わない時期”には伐採や間伐、枝打ちなどを行います。特に『FSCの森』は様々な決めごとがあり、それを遵守しながら作業を行うそう。
水辺の木々は緩衝地帯として切らないようにとか。動物たちにとって重要な木は切らないなど、いろいろと気をつけることが多いですね。森を大切にしているという実感があります」(青木さん)
植林作業:苗木を1本1本手で植え付けていきます。
地道な草刈り作業:これをきちんと行わないと苗木が大きくなりません。
間伐:混み合ってきた森林の木々の一部を伐採します。
枝打ち:節目の少ない木材となり、商品価値を高めます。
新しい林業のカタチも追求していく
近年は国による「緑の雇用」対策事業などもあって、若者の参加が増えており、東京の林業は前向きに動き出しています。
その様子は、著書「今日も森にいます。東京チェンソーズ」(徳間書店)にまとめられ、映画「WOOD JOB」の原作「神去なあなあ日常」の著者である三浦しをんさんとの対談でも詳しく紹介されました。
「まさか、自分が林業に携わった頃には、こんな映画が出るとは思わなかったですから。少しずつ、変化が現れてきているのを実感しますね」(青木さん)
社員の皆さんと
そんな青木さんが林業に興味を持ったのは、大学を卒業してからのこと。東京農業大学の“探検部”に入るために林学科に入ったものの、当時は仕事にするとは思っていなかったそう。一度は会社員になったものの限界を感じ、屋外で“地下足袋”を履く仕事を求めていたところ、「緊急雇用対策」の森林組合の募集を見つけました。
「無事に採用されたものの半年で契約が切れてしまうので、その後は正式採用を猛攻アピールでしたね。なんとかそれで正式な現場作業員になり、1年経ったところで『緑の雇用対策事業』の1期生として採用されました。『まあ辞めるだろう』と思われていましたが(笑)、結果年間勤務し、その後、『東京チェンソーズ』を立ち上げることになったわけです」(青木さん)
「子どもに憧れられる仕事にしたい」とのこと。
確かに、かっこいい!
「FSCの森もそうですが、しっかり手入れされている森は美しいし、人工林ながら、生き物の姿も多くて豊かです。その魅力を伝える活動もしていきたいと考えています。特に子どもたちには、木に直接触れて、登って、匂いをかいでというように、体験を通じて木を好きになってもらいたいですね」(青木さん)
将来は、長いスパンで「良い木」「良い森」づくりに貢献するだけでなく、そうした森の“付加価値”となるよう新しいアイディアをもって製品やサービスとして提供することが目標だそう。
ツリークライミングを通じて、子どもたちに木や森に親しむ機会を提供
「豊かな自然を守りながら、ビジネスとしても成り立たせていくことで、将来においても継続可能な森林運営が可能になると思います。まだまだ経験不足なところもあるかと思いますが、未来の森づくりに貢献していきたいです」(青木さん)
<DATA>
株式会社 東京チェンソーズ
東京都西多摩郡檜原村3840-2
http://tokyo-chainsaws.jp/
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