FSCジャパン&FSCジュニア・アンバサダー

森林の環境や地域社会に配慮して作られた製品であることを示すFSCマーク。現在、その認知度が最も高い年代は10代です。「森林の危機を多くの人に知ってほしい」「FSC認証の普及を通じて森林を守りたい」…との思いで行動を起こす中高生も増えています。そんな10代から広がるFSC認証への関心やそこから生まれた活動について、FSCジュニア・アンバサダーに任命された中高生の皆さんと、FSCジャパン河野絵美佳さんのお話を基にレポートします。
10代のFSCマークの認知度は約6割
「国際認証ラベル 認知度調査2025」(日本サステナブル・ラベル協会)によると、2025年の国内のFSCマーク認知度は33.0%。その中で10代は59.0%と突出した高さとなっています。10代では「名前だけでなく内容を知っている」も他の年代に比べて多く、認知の程度も高いことがわかります。

FSCジャパンはこのような10代の傾向を活かし、年1回、全国の中学生・高校生からFSC認証普及のためのアイデアを募集するFSCアワードを開催。その入賞者をFSCジュニア・アンバサダーに任命して、彼らのFSC認証の普及活動を支援しています。
2024年に開催された第5回FSCアワードでは、FSC認証を多くの人に知ってもらうための文化祭企画を提案した私立聖霊中学校生徒会執行部の皆さんと、FSC認証製品の購入がどのような社会貢献につながっているのかを可視化するアプリの提案を行った高校生の髙橋巧己さんが、最優秀賞を受賞しました。

彼らは現在、FSCジュニア・アンバサダーとして、FSC認証に関するさまざまな活動を自ら企画して取り組んでいます。 聖霊中学校生徒会はこれまで、小学生が遊びながらFSCマークについて知ることができるワークショップの開催、同校の文化祭やオープンスクールでのFSC認証に関する展示と解説、FSC認証材を活用する企業とのコラボレーションなど、校内外で様々な活動を行ってきました(次章参照)。

また、高校生の髙橋さんは、認証マークを手がかりとして、「人々の選択を変えることで地域資源の価値をどう最大化できるか」をテーマに研究活動を行っています。その一環で、今年3月、渋谷の商業施設にて2日間にわたり、街ゆく人々に対し認証マークに関する認知度と購買意欲に関するアンケートを実施しました。その結果、認証マークが購買動機につながっているとはまだ言えないものの、特典やポイント還元、割引などの金銭的なインセンティブや私的メリットが付加されることが認証マーク付き製品の選択につながる可能性を浮かび上がらせました。

FSCの重要性を“楽しく体験”する機会を提供
校外にも飛び出し精力的に活動するFSCジュニア・アンバサダーの皆さん。いったい何をきっかけとして、どのような思いで活動しているのか、聖霊中学校・高校の浅野詩苑さん、坪井麗奈さん、高木莉唯南さん、伊藤雛子さんにお話を伺いました。

同校生徒会は毎年一つの社会問題をテーマに設定し、文化祭等で展示や啓蒙活動を行っており、2024年度の生徒会執行部がテーマにしたのが「FSCマーク」だったと言います。FSCアワード受賞時、生徒会長を務めていた浅野さん(現在高校1年生)は、こう振り返ります。
「最初、執行部8人が取り組みたいテーマを調べて持ち寄ったところ、森林問題のほか海洋ごみやフラワーロスの問題などさまざまなテーマが上がったのですが、どれもイマイチしっくりきませんでした。その時、顧問の先生がFSCマークのことを教えてくださり、FSCマークについてみんなで調べてみたんです。すると、自分たちの生活の中にあるFSCマークを広げることが、森林の保全につながることがわかり、とても驚きました。スケールが大きすぎて現実味がなかった森林保全が、とても身近なものに感じられたんです。そこで、FSCマークを入口として、気候変動や生態系の破壊、違法伐採などさまざまな森林問題に興味をもってもらいたいと思い、プロジェクトを立ち上げました」
FSCマーク普及活動は校内に留まりません。3月には名古屋市立伊勝小学校に出向き、6年生と教員を対象にワークショップを開催しました。FSCマークの意味や重要性について、小学生が興味をもてるようクイズ形式でプレゼンテーション。また、FSCマークが付いた製品がどのようにして私たちの手元に届くのか、どんなものにFSCマークがついているのか、FSCマークがどのように森林を守ることにつながっているのかを体験的に学べるよう、ボーリングや神経衰弱、コリントゲームをアレンジした自作のゲームを実施しました。小学生の皆さんは終始楽しそうに参加していたと言います。


企業を巻き込んだ活動も行っています。9月の文化祭ではキリンホールディングス株式会社とコラボレーションし、FSC認証紙パックを使用しているジュースを配布。来場者に、実際にFSCマークの付いた製品を手にとってもらいました。また、FSC認証について解説したパンフレットの配布や、これまでに作成したゲームや資料を公開し、多くの来場者にFSC認証について知ってもらう機会を提供しました。


こうしたイベントを企画するうえで重視したのは、「言葉で説明するだけではなく、楽しく体験しながら知ってもらうこと」だと言います。生徒会のメンバーみんなでリサーチし、アイデアを出し合って企画を考え実施する中で、メンバー自らも多くのことを学んだようです。
「私自身はそれまで森林について教科書で見る程度の知識しかなく、あまり問題意識もありませんでしたが、この活動を通して森林のさまざまな危機について学びました。また、身近にできることがあることが見えてきて、私たち若者から動いていかないといけないな、と思うようになりました」(高木さん)
「周りの人にFSCマークの意義や森林を守る大切さを伝える時、自分が体験して感じたことがないと説得力がないと思います。人に行動を促すには、まずは自分から率先して行動する大切さを学びました」(坪井さん)
彼女たちの活動への思いは、周囲に着実に伝わっているようです。
「私たちがFSCマークについて説明したことで、小さなお子さんが『スーパーに行ったら探してみたい』と興味をもってくれたり、家族との会話の中でFSCを話題にしてくれたりしているそうです。また、周囲の友達もFSCマークに注目するようになり、『FSCマークがついていたからこのノートを買ってみたよ』というふうに声を掛けてもらうことが増えてきました。私たちがしっかり行動に移していることが、周囲にも広がっていることが目に見えて分かる時、この活動を行う意義があるんだなと実感します」(浅野さん)
「文化祭に来てくれた友人が、私たちが作ったゲームの体験を通して森林破壊とFSC認証に触れ、後日、『スーパーでFSCマークを見つけたよ』と連絡をくれて、すごく嬉しかったです。森林問題のほかにもさまざまな課題に目を向け、視野を広げていけたら、その人にとっても、社会全体にとっても、絶対良いことにつながると思います」(伊藤さん)
森林に良い物を“選んで”買う消費行動への変化に期待
このような10代のFSC認証への関心や活動について、FSCジャパン・河野絵美佳さんはこう話します。
「FSCアワードへの応募数は、開催時期が異なる年もあり単純比較はできないものの、年々増加の傾向にありました。また、アワード応募以外でも、ある一人の中学生の調べ学習が学年全体でFSCマークを集める活動つながったり、子ども園の園児がFSCマークを紹介する絵本をきっかけとしてみんなでFSCマークを探す活動に発展したり、幅広い年齢の子どもたちの活動について報告をいただくようになりました。FSC認証や、その背景にある森林問題に対する中高生の関心の高まりをひしひしと感じていますね」

こうした傾向は、今は10代に目立っていますが、FSC認証は幅広い年代で認知が広がってきていることが、調査結果からうかがえます。冒頭で紹介したFSCマークの認知度は、5年前の前回調査から約1.5倍に増加しています。

年代別に見ると、最も伸び率が高いのは30代で、82.1%伸びています。その中でも、認知の度合いが高い層(名前だけでなく内容を知っている+他人に説明できるくらい詳しく内容を知っている)の伸び率は227.3%に達しています。また、40代でも、30代に次いで高い伸びが見られます。「認知度の伸び率の高い30~40代は、これからの消費を支える年代。FSC認証製品を選んで買うという購買活動の牽引が期待されます」と河野さん。

ただし、現状では、FSCマーク付き商品の購買活動についてはまだ課題がありそうです。調査結果によると、FSCを認知している人のうち、FSCマークのついた製品を購入すると答えた人は全体の約4分の1。FSCマークの有無は気にしないと答えた人は全体の約半数を占めています。

これを認知の程度別に見ると、認知の程度が高い層ほどFSCマーク付き商品を購入する人が多い傾向が見られます。最も認知の程度が高い「他人に説明できるくらい詳しく知っている」層では、FSCマーク付き商品を購入する人が6割を超えています。この結果を踏まえ、河野さんは「FSCマークを認知しているだけでなく、その意義や内容への理解度をいかに上げていくかが非常に重要」と指摘します。

「友達へのプレゼントの包装紙や文房具などを購入する際、FSCマーク付き商品を選ぶようになった」と言う聖霊中学校の皆さん。大人の皆さんに向けて、こんなメッセージを語ってくれました。
「これからも私たちの世代からFSCマークを広げていく活動を行っていきたいです。そして、物を買う機会が多く自由度の高い大人の方たちの間で、森を守ることにつながる物の買い方が増えていったらいいなと思っています」(高木さん)
10代がリードする、FSC認証について理解し、FSCマークが付いている製品を選んで購入しようという動き。それが本当に社会に浸透していくか、今、大人たちの行動が問われているようです。
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