2022.3.10

2021年度FSCジュニア・アンバサダー「Nitobeアイビーズ」

「FSCを小さな子どもにも広めたい!」中高生が自作の絵本で活動

2020年12月、FSCジャパン主催の第2回FSCアワードにて金賞を受賞した、新渡戸文化学園の中高生5人チーム「Nitobeアイビーズ」。FSCジュニア・アンバサダーとして1年間、FSC認証について小さな子どもたちにもわかりやすく伝える活動を行ってきました。2022年3月でアンバサダーの任期を終えるにあたり、メンバーの皆さんにFSCアワード参加のきっかけから、活動内容、その成果までを振り返っていただきました。

オンラインで取材にご協力いただいた「Nitobeアイビーズ」の皆さん。左上から時計回りに、上野紫埜さん(中2)、伊藤奈子さん(中2)、小林葉月さん(中2)、大澤結穂さん(高1)、髙橋ほのみさん(高1)。

環境問題に関心をもつ5人で、FSCアワードに挑戦

「Nitobeアイビーズ」の5人は、2021年1月、身近でできるFSCマークの普及アイデアを募集する第2回FSCアワード(FSCジャパン主催)で金賞を受賞し、FSCジュニア・アンバサダーに任命されました。

当時、中学1年生と3年生だった5人は、各自が好きなテーマに取り組む探究の授業で、「環境問題」に関心があるという共通点で結成されたグループです。FSCアワードに参加することになったきっかけは、中学の先生からの提案だったといいます。

「FSCアワードというコンテストがあると先に先生から聞いた1年生3人が、私たち3年生の教室にやってきて、『みんなでやったら楽しそう!』『一緒にやりたい!』と目をキラキラさせて言うんです。それで、『よしやろう』となったのが始まりです」(大澤さん)

Nitobeアイビーズが考えたFSCマークの普及アイデアは、「絵本を作る」というものでした。発案者の小林さんは、アイデアの背景をこう語ります。

「当時FSCマークについてよく知らなかったので、FSCアワードに参加するためにインターネットなどで調べたのですが、どの説明も私たちにはちょっと難しく感じたんです。そこで、年齢関係なく幅広い人にFSCマークを知ってもらうには、もうちょっとかみ砕いた形が必要だと思い、絵本を作って伝えるのはどうかと思いつきました」(小林さん)

Nitobeアイビーズのプレゼン動画より。

FSCアワードの最終審査は新型コロナの影響でオンライン開催となり、一次選考を通過した10チームのプレゼンテーション資料と動画を元に審査が行われました。主催のFSCジャパンと共催の朝日学生新聞社のほか、特別協賛の花王株式会社、キリンホールディングス株式会社、明星食品株式会社、明治ホールディングス株式会社、協力の一般社団法人日本サステナブル・ラベル協会の各代表者が、「日常性」「共感性」「実現性」など6つの評価項目で審査を行いました。

そこで見事に金賞を受賞したNitobeアイビーズは、「まさか自分たちが!?」と驚きつつ、「飛び跳ねて喜び合った」といいます。同時に、1年間FSCジュニア・アンバサダーとして活動していくという期待感に胸を膨らませていました。

「まわりにいる学校外でいろんな活動をする先輩たちが、すごく輝いているように見えていました。私もあんなふうに活動をしたい!という思いで、とても楽しみになりました」(髙橋さん)

自分たちで考案、制作した名刺。つなげると中央に大きな木のある1つの絵が浮かび上がるよう工夫。

ストーリーもイラストも自分たちで考え、絵本を制作

FSCジュニア・アンバサダーとしての活動の要は、受賞アイデアである「オリジナル絵本」です。

考案した絵本のタイトルは「FSCマークとぼくのぼうけん」。FSCマークを知らない男の子が妖精と出会って、2人でFSCマークを知る旅に出るというストーリーです。原案を作った小林さんは、「ストーリーを考えたのは私ですが、大澤先輩や髙橋先輩がうまくアレンジして整えてくれた」と、役割を分担してみんなで力を合わせて作った作品であることを強調します。

イラストは、キャラクターの愛嬌のある表情と優しい色合いが印象的です。「小さい子にも興味をもってもらえるように可愛い絵柄を心掛けた」と、イラスト担当の上野さん。他のメンバーと文章とイラストのバランスを相談しながら描いたといいます。

また、登場人物の名前は校内で募集し、「みのるくん」と「くるみちゃん」に決定しました。周囲を巻き込みながら絵本制作にあたり、そのプロセスにおいてもFSCについて知ってもらう機会になったようです。

絵本は全58ページの大作。後半には「私たちにできることは?」と問いかけるワークや解説も付いています。

絵本やぬり絵を通じて、園児にFSCを伝える

FSCジュニア・アンバサダーの役割は、絵本を作って終わりではありません。これを使ってFSCマークを広く知ってもらうことこそ重要です。

そこで、7月に絵本の初稿が出来上がると、まず子ども園の園児に初披露するワークショップを開催しました。スクリーンに絵本を投影し、Nitobeアイビーズのメンバーが読み聞かせを実施。後半にはNitobeアイビーズの活動をテーマに描かれたぬり絵に園児と共に取り組み、物語や対話を通じて自然や森林、動物を守ることの大切さを伝えました。

「私たちの絵本の読み聞かせをみんな熱心に聞いてくれました。楽しんでくれているんだな、と嬉しくなりました」(大澤さん)

園児たちは絵本の読み聞かせやぬり絵に熱中。

TBSとコラボしてオンラインワークショップを実施

9月には、TBS系SDGsプロジェクト「地球を笑顔にするHOUSE」のオンラインワークショップ 「森を守ろう!子ども会議」に出演。自作の絵本の読み聞かせのほか、FSCマークと森に関するクイズ、森を守るためにできることを絵に描くコーナーなどを企画。全国から参加した22組26人の子どもたちに向けて、森林を守ることの大切さやFSCマークについて楽しみながら学ぶ機会を提供しました。

「オンラインは相手の様子がわかりにくいという難しさもありましたが、参加者の方々がたくさん反応してくれたおかげで、みんなで一緒に楽しんでいる感触がありました」(伊藤さん)

「森を守るためにできることを絵に描くコーナーでは、参加者のみんなからいっぱい良いアイデアが出てきて、私たちも勉強になりました」(小林さん)

こうした活動を行いながら、絵本の内容も改良を重ねていったといいます。

「地球を笑顔にするHOUSE」から全国の子どもたちとオンラインで接続。

FSCの森で中高生向けワークショップを企画、開催

また、中高生向けのワークショップを自ら企画したことも。11月と12月に2日間、東京都檜原村にあるFSC認証林にて、この森林を管理するNPO法人フジの森の協力のもと、森の素材を使った製品づくりなどのワークショップを実施しました。

ワークショップには都内7校の中学・高校から35人が参加。プログラム1日目は、NitobeアイビーズからFSCジュニア・アンバサダーとしての活動や森林の現状、FSC認証について紹介することからスタートしました。

「森にはどんな役割があるかを考えてもらったとき、町を災害から守る役割もあると説明すると、参加者から『へぇー』と驚きの声が上がりました。みんなにとって、新しい気づきになったのが嬉しかったです」(髙橋さん)

ガイダンスのあとは、森に入って鉛筆づくりです。森の木の枝を伐り、学校で回収した短くなった鉛筆から取り出した芯と組み合わせて作成しました。

また、2日目は、参加した中高生に檜原村の森の素材を使ってどんな製品が作れるかアイデアを考えてもらい、実際に森を散策しながら集めた枝や葉、つる等の素材を使ってリースや箸などの製品づくりに挑戦しました。

「自然の素材なので、水分量の違いにより硬さが変わってきます。特に鉛筆作りは難しかったのですが、みんな熱中している様子でした」(大澤さん)

最後はNitobeアイビーズ制作の絵本を参加者にプレゼント。2日間のプログラムは盛況のうちに終了しました。

鉛筆やリースなどの製品の一部はフジの森の施設で販売され、売上は緑の募金へ

自分たちらしい活動に、確かな手ごたえ

こうして約1年間、Nitobeアイビーズは授業や部活でそれぞれ忙しい学校生活の合間をぬって活動を続けてきました。小さい子どもにFSC認証の仕組みを理解してもらうことは、決して簡単ではありません。「FSCマークが付いている製品・付いていない製品の違いを、どう簡単な言葉で説明するかに苦労した」「『紙を使うことが悪い』と誤解されないように伝えるのが難しかった」など、困難も感じながら取り組んできました。

それでもメンバーのみんなは笑顔で「楽しい!」と口を揃えます。

「みんなアイデアをたくさん持っていて、話し合っているとどんどん出てくるんですよ。そして、絵を描くのが上手い、ストーリーを考えるが得意、みんなをまとめる力がある…など、それぞれが得意なことを生かすと、自然と企画や作品が生まれていきました。何より、私たちが楽しみながら取り組んでいたから、参加者のみんなも楽しいと感じてもらえたのかなと思います」(大澤さん)

笑顔があふれた檜原村ワークショップ。

メンバーは活動を通じて、FSCマークの認知や理解が周囲に少しずつ広がってきた手応えを感じています。

「家族もFSCに興味をもってくれるようになりました。お父さんは食品会社で開発の仕事をしているんですが、『うちの製品にFSCマークが入ったよ』と誇らしそうに話してくれたこともあります」(上野さん)

「幼稚園年長の妹が、FSCマークの付いた製品を見つけて教えてくれたり、FSCマークを描いてプレゼントしてくれたりするようになりました。活動してきた意味があったな、と嬉しくなります」(伊藤さん)

活動をがんばった経験は、メンバーそれぞれの気づきや成長にもつながったようです。

「SDGsの各目標はばらばらに見えますが、FSCは14もの目標に関係しています。そんなFSCについて知るなかで、SDGsの各目標はつながっているんだと気づきました。もともと環境問題には興味があったのですが、もっと幅広い課題に興味が広がってきました」(小林さん)

「うまくいかないこともありましたが、みんな笑顔で“自分たちらしさ”を大事にして活動してきました。そのなかでいろんな人と出会い、そこからまた新たなつながりが生まれたことが、自分の成長につながりました」(髙橋さん)

「FSCマークについてあまり知識もなく、先が見えないところから活動を始め、こんなにいろんなことができるとは思ってもいませんでした。まず私自身がFSCについて学んだことで、ほかの人にもFSCについて知ってもらうことにつながったと思います。1年間、この5人で充実した活動ができて、本当に良かったです!」(大澤さん)

Nitobeアイビーズの活動の出発点となったFSCアワードは、2022年も開催されます。環境問題や森林保全に興味のある中高生は参加してみてはいかがでしょうか。

※第3回FSCアワード の募集は2022年3月31日で終了しました

FSC C011851

RELATED POST関連記事