FSC森林認証の森は「適切に管理された森である」とされていますが、どのように「適切」なのでしょう。今回は岩手県岩泉町の「FSCの森」を覗いてみましょう。
森の入口から続く小路。光があふれ、小鳥の鳴き声も聞こえます。
森に入って、まずびっくり。下草がきちんと刈られ、樹々の隙間から光がキラキラと差し込んできています。雨に濡れた樹々の間を風が渡り、深い緑の香りには思わず深呼吸してしまったほど!
「管理されていない森は真っ暗ですからね。比べると全然違うでしょう?」と
誇らしげに語るのは、岩泉町役場農林水産課の今村さん(左)。
「岩泉町にとって、森はなくてはならない存在です。くらしに潤いを与えてくれるばかりでなく、あらゆる産業のバックヤードですから、下草を刈ったり、間伐を行ったり、こまめな手入れで大切に管理しているんですよ」
森に足を踏み入れると、まさに生き物の宝庫。朽ちた広葉樹にも新しい緑が芽生え、キノコが顔をのぞかせています。
切り株を覆うツタ植物に赤い実が。動物たちの食べ物になるのでしょう。
植物だけではありません。小鳥や小動物が入れ代わり現れては、こちらの様子をうかがいます。すばしっこくて、残念ながら写真が撮れず…。
やっと撮影に成功したのは「サワガニ」
岩泉町は約93%が森であることに加え、水源から河口までを有するという豊かな自然環境が自慢。森のおかげで水がきれいなことでも有名です。サワガニはその象徴のひとつなんですね。
様々な針葉樹(左)と広葉樹(右)が共存し、多彩な景観に。
そんな豊かな岩泉町の森も、過疎化に伴う担い手不足で放置林が少なくないそう。しかし、FSC認証を受けたことで対外的な注目が集まり、少しずつ林業再生の兆しが見えつつあります。
FSCの森から切りだされた木材は大切な「森林資源」。有効に使いたい!
しかしながら、FSC認証材は他と分けて保管しなければならないなど、なかなか手間と管理コストがかかります。今後はその収益化を含め、木材以外の森林資源の有効活用も課題だといいます。FSCの認知が進んで利用が促進されれば、地元の理解も進み、いっそう様々な取り組みが生まれてくるでしょう。
「適切な森林管理は、必ず林業の底上げにつながります」と力強く語る今村さん。
地域の人々が森を愛し、生活の糧とすることで、森が活性化し、ひいては森を守る力になっています。そんな「森の担い手」の皆さんを支援するためにも、FSC製品利用を広げていきたいですね。
<了>
FSCⓇ C011851
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