2015.10.15

明治期から始まった、今につながる「育てる林業」〜兵庫県朝来市 日本土地山林〜

兵庫県朝来市「FSCの森」

兵庫県北部に位置し、「天空の城」竹田城跡でも知られる朝来市。そこに日本土地山林が保有する「FSCの森」があります。

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FSC認証取得以前から、「木を活用しながら森を守る林業」を実践しています。
「現在、1,902ヘクタールの社有林でFSC認証を取得しています。2009年認証なので、6年めですね。でも、もともとは明治時代に荒廃した土地に植林をすることから始まって、永く未来に引き継ぐために“持続可能な森”として運営してきました。それを改めて世界に認めてもらったというところでしょうか」

そう語るのは、日本土地山林の土肥正美さん。日本人と森の関係は深く、太古の昔から森に多くの恵みをいただき、人もまた森を大切にしてきました。それが近代化とともに無計画な伐採と植林、そして海外製品の台頭による放置林が増え、今や多くの森が荒廃しています。その一方で、日本土地山林が保有する森のように、荒れた土地に手を入れて管理することで、自然林に負けないほどの豊かな生態系を誇る森も日本の至る所に存在します。

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日本土地山林株式会社 山林事業部 取締役部長 土肥正美さん
● 朝来の森には、生き物がいっぱい!

それでは、さっそくご自慢の森を見せていただきましょう。案内してくださったのは、同社の枡岡望さん。樹木医・環境再生医であり、ツリークライマーでもあるという筋金入りの“森人”です。

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日本土地山林株式会社 山林事業部次長の枡岡望さん。

車で山道をガタガタと上がっていくと、いつの間にか深い森の中。大きな木が立ち並びます。間伐だけでなく下草もすっきりして、それが「管理された状態」なのだと思いきや、実は増えすぎた野生の“シカ”のせいなのだとか。

「下草の種類が少ないし、生えていないところもあるでしょう。29年間林道の草刈りをしたことがないんです。で、シカが食べないミツマタやオオバアサガラばかりが残ってしまうんですよね」と枡岡さん。

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下草は、和紙の原料にもなる「ミツマタ」の群生!

確かに、下草が多いと思う場所には「ミツマタ」ばかり。東京都檜原村の田中林業さんの森にはヤマアジサイが多かったように、自然と生えてくる下草は偏っているそう。それにしてもすごい群生です。

と、そんな話をうかがいながら、車で移動しようとした時、目の前を大きな動物が横切りました。噂のシカです!

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シカに遭遇!下草だけでなく、植樹した木の芽も食べてしまうのが厄介。

こちらの様子をうかがいながらも、逃げようとしないシカたち…。天敵だったオオカミが絶滅したことやハンターが少なくなったことで、野生のシカが急増しており、森林が荒れる原因になっています。既に日本の森林では「自然のまま」では生態系を守ることが難しくなっているのです。

「でも、うちの森にはシカだけでなく、タヌキやキツネ、ヤマネなんかもいますし、生態系のバロメーターといわれる両生類も多いです。シカの食害にやられつつも、173種の植物、54種類の動物が生息している豊かな森であることが、2010年の調査でわかりました」(枡岡さん)
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樹上に産みつけられた「モリアオガエル」の卵塊。

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下の水たまりには他の種類のカエルのオタマジャクシがぎっしり!そして、それを狙うイモリの姿も。
山林面積の67%が人工林で、そのうち約74%がスギ。その針葉樹の中に、常緑樹や広葉樹がパッチワークのように入り交じり、秋にもなると、それは美しい眺めとか。低めの標高にはコナラやケヤキ、中層にはカバやイヌブナ、カエデ、そして上の方にはシデやブナ、ミズナラが増えるなど、木の種類も様々です。クルミやトチノキ、カキ、クリなど動物が好んで食べる実のなる木も多く、目利きができる人なら垂涎というクワの巨木も生えています。

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野生のクルミが自生している
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美しいシダの群生

こうした豊かな植生、生態系が守られているのも、枡岡さんたち森で働く皆さんの活躍があってのことと言えるでしょう。

● 木を活用することが、森を守る力になる

植樹された木は、計画的に間伐・伐採され、主に板材や建材として活用されています。「木づかい」で知られる岡山県西粟倉の「森の学校」もお得意様とか。

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樹齢100年の杉の木。代々手入れされ、ここまでまっすぐで美しい杉は少ないそう。
木の価値を上げることは、森を維持する資金源としても重要。

「少しずつではありますが、日本の木材は需要が増えつつあります。それでもまだ十分ではなく、せっかくの無垢材がチップになってしまうことも…。消費者の皆さんが、国産材を、そしてFSC認証の木材を選ぶことで、もっと日本の森が元気になる。そう思っていただけるとうれしいですね」(土肥さん)

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伐採した木を運び出す作業に遭遇。
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木を牽引する作業車には、FSCのマークが!

そう、シカの食害に遭いながらも豊かな自然が守れているのは、森で育まれた木材が活用され、その資金が循環しているから。日本の森を、自然を守るのは私たちの消費活動に委ねられているんですね。

「まあ、そう気張らず(笑)、ぜひ遊びにきてください。ここは『天空の城』も近いし、おいしいものもいっぱいあります。旅行やキャンプなどで土地のものを利用してもらうのも、大きな地域支援、森林支援なんですよ」(土肥さん)

宿泊施設も準備されているとのことで、この夏、紅葉の秋に訪れてみてはいかがでしょうか。もしかしたら、ヤマネやシカにも出会えるかもしれませんよ。

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事務所の会議室もテーブルも無垢材!リラックスして仕事ができそう。

日本土地山林株式会社 山林事業部
兵庫県朝来市新井777

http://www.nihontochisanrin.co.jp/hyogo/forest/wood.html

FSC C011851

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