「シモバシラ」と聞くと、みなさんはどのようなものを思い浮かべますか?
きっと多くの方が、寒い日の朝、土の上に立つ氷の柱(霜柱)を想像するのではないでしょうか。子どもの頃、踏んで遊んだ経験がある方もいるかも知れませんね。
でも、今回ご紹介するのは、その「霜柱」ではありません。
実は、「シモバシラ」という名前の植物があり、「氷の花」を咲かせるのだとか……!?
いったいどんな植物なのでしょう?
今回は、植物の「シモバシラ」について、森の達人・三崎孝平さんが解説します。
植物の「シモバシラ」とは?
今年は暖冬とはいえ、朝の冷え込みには冬の厳しさを感じます。雪のない地方では冷え込んだ朝、戸外では霜が降りたり、氷が張ったり、“霜柱”が立ったりする現象が見られることでしょう。実は、この地上部にできる「霜柱」とは別に、植物にも「シモバシラ」と呼ばれるものがあるのをご存知でしょうか。
「シモバシラ」はシソ科の多年草で、山地の木陰に生える、高さ40~70㎝ほどの植物です。8月下旬から10月上旬に白い穂状の花を咲かせます。
冬には茎や葉は枯れてしまいますが、枯れた茎に霜柱のような「氷の花」(結晶)ができることから、「シモバシラ」の名がつきました。
「氷の花」ができるメカニズム
では、なぜ「氷の花」ができるのでしょうか。
シモバシラは、同じ株から何年も花を咲かせ続ける“多年草”であるため、冬になり茎や葉が枯れても、根は枯れた茎の道管に水を送り続けます。この根から吸い上げられた水分が枯れた茎から滲み出し、冷たい外気に触れて凍ることで「氷の花」が作られるのです。
しかし、ただ寒ければ「氷の花」ができるというわけではありません。
「氷の花」ができるには、茎から滲み出した水が凍らなければいけないので、まず、気温が“氷点下”でなければいけません。それから、雨や雪が降っている日や風が強い日も「氷の花」はできません。また、一度できても、気温が上がるとすぐに溶けてしまいます。
ですから、私たちが「氷の花」を見ようと思ったら、
・前の日の夜よく晴れて、
・風がなく、
・氷点下まで冷え込むこと
が必要です。そして、気温が上がる前の朝のうちに見に行きましょう。
「氷の花」は、いくつもの条件がそろってはじめて見ることができるのです。
季節が進むと、「シモバシラ」の茎はぼろぼろに裂け、土もかたく凍りついてしまうため、「氷の花」は次第に見られなくなります。
気になる方は、早めに探しに出かけてみてくださいね。
<「森の達人」こと、三崎孝平さんプロフィール>
環境保全に貢献するという目的で設立されたエコシステムアカデミーのシニアインストラクターや全国森林インストラクター会会員として活躍中。日本各地の学校や森を飛びまわり、森の大切さや、FSC森林認証について伝えています。このコーナーでは、森や自然がますます身近になる楽しい情報を「樹木講座」としてお届けしています。
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