2018.9.21

【第9回】常緑樹の落葉


2018年の夏は大変な暑さが続き、いつまで経っても夏が終わらないような感覚になりましたが、周りの木々を見るとサクラの葉は紅葉し始め、少しずつ葉を落としはじめています。気温に関わらず、木々は着々と冬を迎える準備をし始めているようです。一方、紅葉することなく、ずっと緑の葉を付けている木もありますよね。今回は、そんな常緑樹の落葉のお話です。常緑樹も落葉することはあるのか、森の達人・三崎孝平さんが解説します。

常緑樹も落葉する

樹木の分類は大きく分けて、葉が針のようになっている針葉樹と葉の幅が広い広葉樹に分けられます。そして、針葉樹と広葉樹はさらに落葉樹と常緑樹に分けられます。
落葉樹は1年のうち、特定の時期(秋)にすべての葉を落とし、ある時期(冬)には丸坊主の状態になります。
一方、常緑樹は1年中葉を付けている樹木のことです。
読んで字のごとく、ずっと緑の葉をつけたままの印象を持たれるかもしれませんが、常緑樹といえども落葉しないわけではありません。葉には寿命があるからです。
寿命は短いもので1年数ヶ月、長いもので5年以上になります。毎年新しい葉が出てくると、入れ替わるように古い葉が落葉していきますが、いつも緑の葉があるように見えるので、この現象は、落葉樹に比べると目立たちません。

クスノキは4月に紅葉する!?

例えば、公園や街路樹でよく見られる「クスノキ」は常緑広葉樹ですが、4月になると紅葉し一斉に落葉します。木の下には落ち葉がたくさん溜まり、まるで秋の落葉時期のようになりますが、落葉樹とは違い新旧の葉が入れ替わるだけなので、丸裸になってしまうことはありません。


枝先に伸び始めた黄緑色の新葉と、紅葉した古い葉、そしてまだ紅葉していない濃い緑の葉が混在して、クスノキ全体が色とりどりになります。


また、お正月の縁起物の飾り等によく使われるユズリハは、若葉が出た後に、古い葉が落葉することから、親が子に代を譲る様にたとえられ、家が代々続いていくようにということで「縁起の良い」木として知られています。
この写真は新しい葉が展開したユズリハです。もうすぐ古い葉が落葉するでしょう。


最後に、常緑針葉樹の落葉のことも少しだけご紹介しましょう。
このシリーズでも度々ご紹介しているアカマツの場合、その葉は約1.6年(注)で落葉すると言われています。これはアカマツの苗を観察することでその様子がわかります。2年目の枝には葉が残っていますが3年目の枝にはほとんど残っていません。


ちなみに、同じマツの仲間であるクロマツの葉の寿命は約2.6年(注)と言われています。


これから紅葉の季節に変わってきます。秋ではないのに、色が変わっているものや、葉が落ちている木を見ると「あれ?枯れているのかな?病気かな」と思うかもしれませんが、それは常緑樹の葉がちょうど入れ替わる時期なんですね。落葉樹と常緑樹の違いはこうした葉の状態でも知ることができるので、みなさんもぜひ周りの木々を観察してみてください。

(注)参考文献
『京大演習林報告』より「松属 葉の寿命」1992
ーアカマツ:1.61年 クロマツ:2.63年 の記述による

<「森の達人」こと、三崎孝平さんプロフィール>
環境保全に貢献するという目的で設立されたエコシステムアカデミーのシニアインストラクターや全国森林インストラクター会会員として活躍中。日本各地の学校や森を飛びまわり、森の大切さや、FSC森林認証について伝えています。このコーナーでは、森や自然がますます身近になる楽しい情報を「樹木講座」としてお届けしています。

FSC C011851

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