2017.10.16

【第2回】身近な樹木「ケヤキ」の話

今回は街路樹や公園などでよく見かける、みなさんにとっても身近な樹木ケヤキについて、森の達人・ 三崎孝平さん(エコシステムアカデミー)に紹介していただきます。

「ケヤキ」は世界共通語?

新緑のケヤキ
ケヤキは北海道を除く日本全国に広く分布するニレ科の落葉高木で、樹高は2~30m、胸高直径は0.8~1mで時には3m以上になるものもあります。
街では、枝を落とされて格好悪いものも見られますが、本来のケヤキは枝が扇を広げたように大きく広がり美しい樹形をしています(箒木<ほうきぎ>とも言われます)。最近は品種改良によって、枝が扇状の広がらず垂直に伸びる性質を持つものもあります。(武蔵野1号など)欧米にはこの種類はありません。そのため英名では「Keaki」または「Keaki tree」とほぼ同じような名前で呼ばれています。

ケヤキという名前の由来は…?

また「ケヤキ」という名前はこの樹形にも由来します。
「尊い・秀でた」という意味で使われる「けやけし」という言葉から、樹形の美しく際だった木という意味のある「けやけき木」となり、「ケヤキ」になったと言われています。
でも意外なことに「ケヤキ」の名称は近代の呼び方であり、古くは「ツキ」と呼ばれ、万葉集には「ツキ」の名称で歌に詠まれています。でもある業界ではいまだに「ツキ」と呼んでいるのです。

木材にも使われるケヤキ

それは木材業界です。
木材業界では、材質の良いものが「ケヤキ(別名ホンゲヤキ、アカゲヤキ)」と呼び 、材質の悪いものが「ツキ(別名アオゲヤキ、イシゲヤキ)」と呼ばれていたことから、ケヤキには「ケヤキ」と「ツキ」の2種類があるとされていました。しかし、現在の分類ではケヤキは1種類であり、材質の違いは「その生育条件によって違う」ことがわかっています。生長の良いものは年輪巾が広くなり、硬くて狂いやすい材(※)になり、生長の良くない(遅い)ものは年輪幅が狭くなりますが、軽くて材質も柔らかく加工しやすくしかも狂いが少ないのが特徴です。

※「木材の狂い」とは乾燥が不十分だったりしたときに反ってしまうなどの状態になること

枝先ごと風に運ばれるケヤキの種

またケヤキの葉も、個体によって大きなものと小さなものがあります。これも別の種類ではなく同じ種類なのです。花は、葉の開く時期と同じ時期(4月)に咲き、種子は秋に熟します。そして、種子の付く個体の葉は、種子の付かない個体の葉に較べて小さいのも特徴的です。
ケヤキの種
種子は写真のように葉の付け根に種子がつきますが、秋になってその種子がポロリと落ちるわけではなく、葉のついた枝先自体が落ちて、風に飛ばされるという珍しい散布方式をとっています。
カエデ類の種やマツ類の種には翼がついていて、種を風に乗せて遠くへ飛ばしますが、その翼の役目を枝先全体の小さくなった葉が行っているのです。

ちょうど今、ケヤキが葉を落とす季節になってきました。ケヤキと言えば新緑のイメージがありますが、今の季節にしかみられないケヤキにも注目してみてください。

さてだんだんと北の方からは紅葉の便りが聞かれるようになりました。
次回は紅葉についてお話しますね。
お楽しみに!

<「森の達人」こと、三崎孝平さんプロフィール>
環境保全に貢献するという目的で設立されたエコシステムアカデミー(http://ecosystemacademy.jp/)のシニアインストラクターや全国森林インストラクター会会員として活躍中。森の大切さを伝えるため、日本各地の学校や森を飛びまわっています。森や自然がますます身近になる楽しい情報を「樹木講座」としてお届けします。

FSC C011851

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