FSC製品を含め、環境に配慮した物を選ぶことも最も有効な「森の保全活動」の一つですが、もっと直接関わって森を元気できたらどんなにステキでしょう。そんな夢を実践している庭山一郎さんは東京在住のビジネスマン。週末だけ赤城山麓の「シンフォニーの森」に通い、四季折々の自然を満喫しながら森仕事に励んでいます。夏休みもほとんどを森で過ごすそう。そこで第2回は、生命力あふれる夏草の海に溺れそうになりながらも、お気に入りの草刈り機で下草刈りに奮戦する様子を紹介します。果たしてその頑張りは報われるのでしょうか。
ハンモックでのんびり三昧?いえいえ森再生活動は夏本番!
赤城連山の南側山麓にある私の森。もともと荒れた状態であったものを、26年かけて少しずつ再生しています。そのためには、下草刈りや間伐など、しっかりと人の手を入れていくことが大切です。
ですから「夏ものんびり避暑に…」「ハンモックで眠ってばっかり」なんて言っていられません!毎年どんなに手入れをしても、森の下草の生命力たるやすさまじいものがあります。出張などで3週間連続して行かないと、私の小さなコテージは茂りまくる夏草の海に沈みそうになってしまうほどです。
下草がみっしりと生えていて、漕いで行かないとコテージまでたどりつけない!
夏の間も毎週森に来ては下草刈りをしなくてはなりません。ある人に「自然が好きなのだから、自然のままでいいんじゃない?」なんて言われましたが、とんでもない!そのままで美しいバランスを保てるのは、人間が手を入れていない原生林だけ。一度人間が手を入れてしまえば、そこからは原生に近い状態に戻るまで人が手を貸さないと荒れてしまうのです。もちろんいつかは自然の姿に戻るでしょうが、それは200〜300年後のこと。荒れた森は山崩れの原因になるなど社会問題にもなっています。
というわけで、暑い中大変ですが、がんばって下草刈りに行きますよ!
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2014年
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2017年
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2018年
こうしてみてみると、毎年毎年草を刈ってばかりですね(笑)。額には汗よけのバンダナかキャップ、夏でもしっかり長袖&長ズボンとグローブをつけているのは、安全のためでもあり、ヤブ蚊よけでもあります。「草刈民男」と名付けた愛機で、ぐんぐん下草を刈っていきます。
そういえば、この草刈り機は地元の農機具屋さんで購入したもの。東京の別荘族だと思った農機具屋さんのおじさんが「鎌の研ぎ方を教えてやるからさぁ、鎌でやんなよ、エンジンは慣れねぇと危ねぇからさぁ」とアドバイスしてくれたのですが、「庭だろう?どんくらいあるんだい?」と広さを聞かれたので、「5000坪ちょっとです」と答えたら奥からプロ用のこれを出してきてくれたという思い出があります。東京では広い森をもっているというと「素敵ですね!」といわれますが、地元の人には「大変ですね(酔狂だなあ)」という目で見られているようです。
下草刈りを終えた後には、さまざまなお客様がやってきます
下草刈りと言っても、コテージの周辺や散歩道以外は藪を残しています。ここは小動物や野鳥の棲家ですからね。草があるから虫がいて、虫がいるから鳥がいて、鳥がいるから猛禽や動物がいるわけです。出来るだけ彼らの生活の邪魔をしないようにしながら森を復元しています。
右側は森の奥へと続く道になっていて、下草刈り完了。左側にはササなどの下草を残しました。
コテージ周りもすっきり!
コテージからちょっと離れたエリアは、スペースを決めて少しずつ下草刈りをしています。そうすることで、シカやクマとの緩衝地帯となり、お互い出会い頭にびっくり!ということも少なくなるでしょう。シカはともかく、クマとはばったり会うのは避けたいですからね。
夏の森の緑のカーペットの上を風が通っていきます。
2時間頑張ると、それなりに広々としたスペースに。草の香りが爽やかな風になり、達成感も味わえます。陽の当たらない藪を切ったり、込み過ぎた木を伐ったりすると、光を待ちわびて眠っていた植物が目をさますのでしょうか、意外な植物が生えてきたりします。
可憐なヤマユリの花。まるでがんばって下草刈りをした私へのご褒美のようでした。
たとえばこちらの「ヤマユリ」。下草刈りをしてしばらく経ったある日、コテージからふと見ると、白いものが緑の中に落ちている。タオルでも落としたかな?と思って歩いていったら、ぽつんと一輪咲いていました。「黄金の百合」との学名をもつだけに、神々しい様子は山の神様からのご褒美のよう。森で仕事をしていると、時々こうした想定外の喜びがあるのでやめられません。
そして、作業が終わった後は、汗を拭いて達成感に満たされながら、ゆったりとした気持ちでくつろぎます。決して、「ハンモックでシエスタばっかり」なんかじゃないんですよ。では、皆さんおやすみなさい。ZZZ
庭山一郎さんプロフィール
1990年にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。BtoBマーケティングに関するプロジェクトを数多く手がけ、セミナー講師や執筆などにも積極的に取り組んでいます。プライベートでは、小学生から日本野鳥の会のメンバーとして活動するなど、筋金入りのアウトドア派。赤城山麓に森を購入し、「シンフォニーの森」と名付けて森林再生活動を行い、ライフワークとしています。本連載ではその取り組みの様子や個人でできる森再生のヒントとともに、赤城山麓の四季折々の美しい自然の姿を紹介します。
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