2024.6.3
脱プラスチックでリサイクルもできる!
FSC認証紙で「半透明のファイル」を開発
ディーソル「紙製ファイル クリアプレコ」
- 1974年の創業以来、ITサービスを中心に幅広く事業を手掛け、業務委託からフルアウトソーシングまで様々な形で顧客のニーズに応えてきた、株式会社ディーソル。近年は、オフィスのグリーン化も重要課題の1つとなっており、様々なペーパレス化・脱プラスチックのソリューションを提供しています。FSC認証紙のトレーシングペーパーを用いた紙ファイル「クリアプレコ」もその一つ。環境配慮はもとより、耐水性に優れ、半透明で中身が見えるなど使い勝手の良さでも人気を集めています。
その開発の経緯に始まり、同社の環境への取り組み、今後の展望について、代表取締役社長の今村勇雄さん、第一営業本部 執行役員本部長の亀田裕之さんに伺いました。
お話しを伺った方
- 株式会社ディーソル
- 代表取締役社長 今村勇雄さん(右)、 第一営業本部 執行役員本部長 亀田裕之さん(左)
- 今村さんの故郷、長崎の五島列島で、ディーソルはIT技術を活用した持続可能な農業を目指し、農業法人を立ち上げました。「農業に携わっていると、温暖化など環境の変化がダイレクトにわかります。FSCをはじめ、環境配慮の取り組みに積極的に関わっていきたいと強く感じました」(今村さん)
顧客企業のニーズに先回りし、早期にFSC認証取得を取得
ITシステムに関する事業からスタートし、顧客企業のニーズに応える形でデータの出入力管理や印刷物などへと事業を広げてきたディーソル。「起点も成長の軸も”顧客視点”にある」と今村さんは語ります。
「業務効率化や新規事業のスピーディな立ち上げなど、企業の課題は様々ですが、近年、環境経営が重視されるに伴い、オフィスの『グリーン化』も企業にとって大きな課題となっています。ディーソルでは、そうした環境配慮が近い将来に顧客企業の課題になることを予測し、先回りして様々なソリューションの開発・提供を行ってきました」
事業を拡張する中で、2014年に各種用紙加工の老舗製造メーカーであるオストリッチダイヤ社を子会社化(2022年に吸収合併)。同社が扱っていたFSC認証紙の存在を知り、その理念や考え方に共感したといいます。
「当時、ブラジルやインドネシアなどでの違法伐採が世界で社会問題化しつつあり、自社で使う紙の出どころについても強く意識するようになりました。顧客企業に胸を張って『ちゃんとした紙』を使っていることを伝えられたら、それが差別化になると考えたのです。そこで合併を機に2014年11月にFSCのCoC認証を取得しました」
FSC認証紙の使用については、以前はディーソルからの提案がメインでしたが、現在はDMや帳票に積極的に使ってほしいとリクエストされるようになってきたといいます。
「当初は認証が理解されるのか、コストが見合うのかと、心配したこともありますが、近年は官公庁や自治体をはじめ、大手企業などもはじめからFSC認証紙を指定してこられます。社会全体、そしてお客様も環境への意識が変わってきたことを実感しますね。さらに2023年12月にFSC認証の非再生紙もグリーン購入の認定製品になったことから、さらに取扱量が増えていくことが予想されます。その意味でも、早々にCoC認証を取得し、調達も含めたエコシステムを用意しておいて良かったと感じています」
コロナ禍の自宅待機中に「紙ファイル」の着想を得る
印刷物へのFSC認証紙の使用が増えていく中で、2020年には社会に大きな影響を与えたコロナ禍が到来。出社制限を余儀なくされる中で、今村さん自ら開発に着手したのが、紙ファイル「クリアプレコ」でした。
「オストリッチダイヤ社の事業を受け継いだ時に、FSC認証紙の高品質なトレーシングペーパーの在庫があり、何らかの形で製品ができないかと思っていたんです。急に時間ができたので、使い道をいろいろと考える中で、クリアファイルというアイデアが浮かびました。ペーパーレス化が進んで書類はかなり減っているけれど、持ち運ぶのはプラスチックのファイルがまだまだ多い。それを紙へ変えることができないかと考えたわけです」
まずは強度を上げるために、製造元の三菱製紙に依頼して厚手のトレーシングペーパーを開発。ほどよく透けるので「これはいける!」と思ったものの、印刷インクがうまく乗らないことがわかったため、「アンカー剤」と呼ばれる定着剤を探し出して、鮮やかな印刷ができるように工夫しました。次に、紙の特性として水濡れに弱いという弱点を克服するために、防水処理についても試行錯誤をしています。一般に印刷物の防水と言えば、プラスチックコートを掛けることが多いのですが、それではリサイクルが難しくなってしまいます。そこでいろいろと工夫して、紙のリサイクルに影響しない防水剤を見つけ出しました。
「さらに接着面の糊付けにも苦労しました。強度を保つ必要がありますが、見た目や厚み、加工のしやすさなども配慮しなければなりません。アイデアが浮かぶと使ってみるという繰り返しで、徐々に改善していきました。そして、最も大変だったのが、”背割れ”問題です。乾燥するとパリッと割れてしまうことがあり、改善するために柔軟剤を使うことにしました」
こうした様々な工夫や技術は実用新案に申請されており、それらを積み重ねること約半年、ようやく製品第一号が完成し、2021年の秋より量産できるようになりました。
「紙ファイルは他社からも出てますが、胸を張って『うちが一番いい』と言えますね。紙ファイルだけど半透明で中身が見えるし、水に強くて破れにくい。印刷もきれいで、写真もクリアに発色します。環境に配慮した製品とは言え、実際に仕事をする時は使い勝手がいいほうがいいでしょう。さらに不要になれば分別せずとも、古紙としてリサイクルに出すこともできるし、シュレッダーにもかけられます。便利さと環境配慮の両者を両立させてこそ、開発する意味があると考えています」
環境配慮をアピールする、付加価値の高さが人気に
発売から3年、書類が入れやすいように下部に三角の切れ目を入れるなど、地道なマイナーチェンジをしながら、初年度の2022年は40万枚を販売。現在は、年間販売数130万枚を超えるまでになりました。
「ほとんど宣伝をしていないにも関わらず、様々なところから問い合わせをいただき、毎年倍々で販売量が増えています」と営業の亀田さんは反響の大きさを語ります。
「自治体や学校、企業など、多くの方々にご利用いただいています。いずれも環境配慮を意識しつつ、そのメッセージを伝えるツールとして活用されることが多いようです。ディーソルに印刷までご依頼いただく場合は、大豆インクなどを使ってほしいと言われる方もいらっしゃいます。また、レーザープリンターで印刷ができるので、営業所ごとに変えたり、目的に応じて印刷する内容を変えたりすることも可能です」
その1つが、本サイト内でも紹介した「千葉大学」(紹介記事はこちら)。「環境ISO学生委員会」が新入生への配布物に「クリアプレコ」を使っています。他にも学校や官公庁、自治体で環境への取り組みに関する資料を入れて配布したり、企業が株主総会や展示会などで書類を入れて配ったり、キャラクターを印刷してノベルティとして提供したり、様々な使われ方がなされています。
気になる価格については、小ロットならプラスチックファイルの価格に対して十分競争力を持ち得るとのこと。しかしながら、そもそもプラスチックファイルとは用途が違うものであり、内部で使い回す場合はプラスチックの耐久性は魅力ながら、外部に資料を配布して何かをアピールする際には、クリアプレコが適役だといいます。
「先日は全国植樹祭で資料を配布する際にも使っていただきました。他にもSDGsを意識したファンド用のパンフレットの配布に使用したり、企業が環境報告書を挟んで配布したり、環境配慮を訴求する場面で使われることが多いです。脱プラスチックであることに加え、適切に管理された森の木で作られたFSC認証紙であるということ、さらにクリアな印刷が可能なので、訴求力があることも魅力だと考えています」(亀田さん)
現在は100枚単位での販売ということもあり、購入者のほとんどが団体・法人ですが、最近は個人からの問い合わせも来るようになったといいます。個人用のレーザープリンターでも印刷ができるので、子どもや孫、ペットの写真を印刷したり、自分だけの”推し活”グッズをつくったり、アイデア次第で様々な使い方、楽しみ方ができそうです。
「最近では私たち以上にお客様の方が活用アイデアを豊富にお持ちですね。要望として『金色・銀色で印刷をしたい』という企業さんもあり、間もなく対応の予定です。そうした様々リクエストに応えながら、鮮明な印刷やしっとりした肌触りの良さなど、紙の特性や優れた面を活かしながら、”新しいジャンルの紙ファイル”として『クリアプレコ』の使い道を広げていきたいですね。そうすることで脱プラスチックにも貢献しつつ、FSC認証紙を使うことで、紙資源の有効活用にもつながると考えています」(今村さん)
「脱プラスチック」だけでなく、利便性や新しい付加価値の追求も含めて製品化することで、紙の可能性を広げたディーソルの「クリアプレコ」。顧客のニーズを先取りし、「FSC認証紙」を付加価値の1つとして訴求しつつも、いつか「当たり前」になることを目指した取り組みが進められています。その選択の鍵は、企業の顧客でもある消費者一人ひとりが持っていることを意識していきたいですね。
- 株式会社ディーソル
- https://www.d2sol.co.jp
RELATED POST関連記事
三菱製紙「FSC認証紙の普及に向けて」
森永乳業「『MOW』製品パッケージ」
日本郵便株式会社「年賀はがき」