森の達人・三崎孝平の樹木雑学

2018.11.22

【第11回】石鹸がなる木?


果実で体や食器を洗う…??そんなことができるのかな?と思う方もいるかもしれませんが、昔は洗剤の代わりに、サイカチというマメ科の果実(豆果)を使っていたのだそうです。まるで木に”石鹸の実”がなっているようですね。
今回はそんな石鹸の代わりになるサイカチについてです。実際に食器を洗ってみたところ、きれいになっただけではなく、別の効果もあったようですよ。さらに、サイカチ以外の泡立つ果実についても樹木の達人・三崎孝平さんがご紹介します。

 

 

食器から絹の着物まで。”万能洗剤”サイカチの豆果

サイカチは、本州、四国、九州の水辺の原野に分布するマメ科サイカチ属の落葉高木です。自生地は川や沢沿いなどの水辺が多く、日本のほか中国や朝鮮半島にも分布します。
 
葉がフジに似ていることから「カワラフジノキ」とも呼ばれますが、フジの葉が奇数羽状複葉に対してサイカチは偶数羽状複葉です(注1)。
 
また幹に鋭い棘があることや、大型のマメができることで知られています。棘は枝が変化してできるもので、木の成長に伴って分岐し、長さは15センチにもなります。かつてこのトゲは腫物の膿を出すのに使われ、傷の治りが良いと言われたようです。
 
(注1) 植物の葉の形で、小葉が葉軸の左右に羽のように並んでいるものを羽状複葉と言います。フジなど先端に小葉のつくものを奇数羽状複葉、ソラマメなど先端に小葉のつかないものを偶数羽状複葉といいます。
 

サイカチの葉。葉の先端に小葉がない偶数羽状複葉


 

花は初夏、5ー6月に長さ10~20cmほどの房のような花が咲きます。花弁は4枚、黄緑色で楕円形をしています。秋には長さ20~30cmほどの曲がりくねった灰色の豆果(とうか)をつけます。このさやの中には1cmほどの種子が数個できます。
 

 

サイカチの豆果には、石鹸の成分の一つであるサポニンを多く含んでいるので昔から洗剤として使われていました。
さやを水やぬるま湯につけて手で揉むとぬめりと泡が出てくるのです。今でも、地方の「道の駅」などでは昔の洗剤として販売しているところもあります。またサイカチの洗浄成分は弱酸性なので、高級漆器や絹の着物などは、サイカチで洗っている所もあるようです。
 
その他にも、布の袋にサイカチを入れてお風呂で体を洗ったり、煮出汁で髪を洗うこともできるようです。拭き掃除に使うと二度拭きの必要はありません。
 

豆果を木綿の袋にいれて揉むと…

実際にサイカチを使って食器を洗ってみました。サイカチ4~5本を3~4cmに切って木綿の袋に入れ揉むとだんだんと泡立ってくるので、その袋で食器を洗います。
 

 

洗った後は手がスベスベになりました。
 

ムクロジやエゴノキも泡立つ

サポニンを含む樹木はサイカチの他に、「ムクロジ」や「エゴノキ」などがあります。いずれも果皮を乾燥させてからくだいて水やぬるま湯に浸して泡立ててから使いますが、こちらも洗剤として十分に使えるようです。
 
試しにムクロジも泡立ててみました。ムクロジの実は1年前に採取した物です。泡はサイカチよりもムクロジのほうがたくさん立ちました。
 

 
<「森の達人」こと、三崎孝平さんプロフィール>
環境保全に貢献するという目的で設立されたエコシステムアカデミーのシニアインストラクターや全国森林インストラクター会会員として活躍中。日本各地の学校や森を飛びまわり、森の大切さや、FSC森林認証について伝えています。このコーナーでは、森や自然がますます身近になる楽しい情報を「樹木講座」としてお届けしています。

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