2019.5.20

「大切な木を使わせていただきます」という気持ちで取り組むものづくり

カランダッシュの鉛筆・色鉛筆

 
今回ご紹介する「カランダッシュ」は、スイス・ジュネーブに本拠地を置く、画材・筆記具ブランドです。創業は今から100年以上前の1915年。スイスで初めて設立された「鉛筆工場」からはじまりました。スイスの自社工場で作られた商品は今や世界90カ国以上で販売され、デザインと品質の両面から多くのファンを魅了し続けています。

そんなカランダッシュの鉛筆・色鉛筆に、FSC認証材が使われていることをご存知でしょうか?創業当初から、山の資源を大切に思い、環境に配慮したものづくりを続けてきたカランダッシュの取り組みについて、カランダッシュ ジャパン 株式会社 竹内七重さんにお話を伺いました。

お話しを伺った方

マーケティング&PRマネージャー
竹内七重さん
2017年入社。マーケティングとPR担当。「FSCについては3年ほど前に知りました。日本もスイスも山が多い国です。私たち企業が情報発信していくことで、日本でもFSCを広めていければと思います」

100年を超えて引き継がれてきた「山の資源」を大切にする気持ち

カランダッシュは、商品開発から製造・販売までを一貫して自社で行っているスイスで唯一の画材・筆記具ブランドです。スイスと言えば、アルプス山脈の名峰「マッターホルン」に代表される美しい山々で有名な国。「アルプスの少女ハイジ」の世界を想像する人も多いでしょう。
 
また、厳しい環境政策を実施しているEU加盟国(フランス、ドイツ、イタリア)と国境を接しているため、周辺各国からの影響も大きく、早い時期から国全体の環境意識が高かったといいます。
 
「カランダッシュも、創業当初からずっと、環境保全に高い関心を持ち続けてきました。特に鉛筆は山の木を伐って作りますから、『大切な木を使わせていただいている』という気持ちで、山の資源をとても大事にしながらものづくりに取り組んでいます」(竹内さん)
 

カランダッシュ ジャパン 株式会社 マーケティング&PRマネージャー 竹内七恵さん

WWFとのコラボレーションがFSC認証取得のきっかけに

そんなカランダッシュがFSC認証を取得したのは2004年。同じスイス・ジュネーブに本部を置く自然保護団体「WWF」とのコラボレーションがきっかけだったそう。
 
「私たちは毎年、様々な企業やブランドとコラボレーションをしています」と竹内さん。
 
WWFとのコラボレーションでは、コラボレーションモデルとして販売した商品の売上の一部をWWFに寄付していたそう。
 
「そうした取り組みの中で、環境保全をはじめFSCに関するお話を聞く機会があり、ぜひカランダッシュでもFSC認証を取得しようという流れになりました」(竹内さん)
 

 
サプライヤーさんとの交渉など、生産ラインを整えるのに1年半ほどの時間をかけて、鉛筆・色鉛筆をはじめ、カランダッシュが製造する画材・筆記具の木材部分をすべてFSC認証材へ切り替えていったそうです。
 
「近年では、スイス独自の認証制度であるCOBS(コップス)認証材への切り替えも進めています。COBSとは、スイス国内で使用が認められたスイス原産木材に対する認証制度です。現在カランダッシュの鉛筆・色鉛筆は、FSC認証材とCOBS認証材をあわせて、100%証明できる木材のみを使用しています」(竹内さん)
 

スイス独自の認証制度である「COBS」マークのはいった鉛筆。スイスに本拠地を置く企業として、2028年までに使用木材の20%を、COBS認証材へ切り替え予定

環境・品質へのこだわり。歴史だけに頼らず、常に革新的に

また、カランダッシュのものづくりの精神には、環境への配慮はもちろん、お客様にきちんと信頼できる商品を提供していくという考えが根底にあるといいます。
 
「例えば、スイスには“SWISS MADE(スイスメイド)”という国の規格があります。スイスメイドには、環境保全をはじめ、働く環境の基準など、ありとあらゆるコンプライアンス上の基準が細かく設けられており、カランダッシュが属するスイスのフランス語圏ではたった2%の企業しか取得していないとても厳しい規格です。カランダッシュはこの基準をクリアし、ほとんどの商品に“SWISS MADE”の文字が入っています」(竹内さん)
 

FSCマークと“SWISS MADE”の文字が並ぶ

 
さらに、歴史を大切にしながらも、常にイノベーティブでありたいと竹内さんは語ります。
 
「例えば、鉛筆は最後にニスをかけますが、水溶性のニスを世界で初めて開発したのがカランダッシュです。これによって、化学溶剤を劇的に減らすことに成功しました。また、工場の屋根に800平方メートルのソーラーパネルを敷くことで、年間20トンのCO2を削減できています。さらに、ここ4年ほどでは、鉛筆の製造過程で出た端材を、暖房や工場の機械を動かすための熱源として再利用しています。商品開発はもちろん、製造環境においても、どんどん新しいことをしていきたいという精神がカランダッシュにはあるのです」(竹内さん)

商品の背景をしっかりと伝えることで、日本でもFSCを広めたい

カランダッシュ銀座ブティック店内

 
環境意識の高いスイスで、天然の資源を大切にしながらものづくりを続けてきたカランダッシュ。スイスに比べると、日本のFSCに対する認知度はまだまだ高いとは言えないと竹内さんは語ります。
 
「お客様が物を買う際は、いくつか購買動機があると思うのですが、スイスでは、値段やデザインといった理由に加え、商品や商品を作っている企業が“きちんと社会的責任を果たしているかどうか”という視点が、購買動機に加わります」(竹内さん)
 
スイスにおいてFSC認証品であることは、お客様が商品を選ぶ際のプラスの要素になりますが、日本ではまだFSCを知らないお客様も多く、FSC認証品であることでその他の商品と差別化されているようには感じられないといいます。
 

同じジュネーブに本部を置く「ネスプレッソ」とのコラボレーションモデル。アルミニウム製のコーヒーカプセルをリサイクルして作られたボールペン。1本で8キロ分書くことができる。筆記距離を伸ばし芯を替える回数を減らすことでも、環境保全に貢献している

 
「FSCについて日本でもっと知ってもらうためにも、私たち企業が、どのような思いでその商品を作っているのか商品の魅力だけではなく、私たち企業の取り組みをSNSやホームページで発信することで、日本のお客様にもFSCを知ってもらうきっかけを作っていきたいですね」(竹内さん)
 

 
私たちも、値段やデザイン性だけではなく、企業がどのような思いでその商品を作っているのか、どのような社会的責任を果たしているのか、商品の背景にも意識を向けながら商品を選んでいきたいですね。

 
 
 

カランダッシュ ジャパン 株式会社
東京都港区南青山2-6-18 渡邊ビル3F
銀座ブティック
東京都中央区銀座2-5-2
https://carandache.co.jp

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