ミニストップ株式会社
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最近はお店で買ったものを店内で飲食できるようにイートインスペースのあるコンビニエンスストアが増えていますよね。実は、ミニストップは1980年に誕生した第1号店からこうしたスペースを設置し、創業以来、できたてのフードがその場で食べられる「ファストフード」の機能を持った「コンビニエンスストア」という独自の路線を築いてきました。
店舗開発に力を入れている同社では、2009年より店舗で使う建設資材、2011年からはイートインコーナーの椅子、テーブルに木材を取り入れFSC認証材を使用した店舗づくりを進めています。
今回は、同社の環境に配慮した店舗づくりやそうした取り組みに込められた同社の環境に対する思いについてお伺いしました。
お話しを伺った方
- システム本部 建設施設部 建設施設企画チーム マネージャー
- 杉浦 一則さん
- 4年前に現在の部署に異動してきた杉浦さん。「FSCは森林管理から流通加工に至るまで認証を取得していなければなりません。FSCのことを知って、環境に対するみんなの思いが繋がっているのを感じます。」
- 建設施設部 建設施設企画チーム
- 栂瀬 直樹さん
- 昨年12月に現在の部署に配属された栂瀬(とがせ)さん。「入社して最初に担当したのがFSC認証材の再利用店舗でした。建設中に台風が3回来るなど色々な苦労があったので思い出深いですね。」
イオングループの環境方針とミニストップのミッション
店舗開発でFSC認証材を採用するようになった背景には、同社が所属するイオングループが掲げる環境方針があります。イオングループでは安全・安心な商品やサービスの開発、生態系の恵みや持続可能な調達の推進などを環境方針に盛り込んでいます。
杉浦さんは「イオングループの環境方針に加えて、当社は『おいしさと便利さで笑顔あふれる社会を実現します』をミッションとしています。グループが持つ環境方針と、当社のミッションを実現するため、環境活動に積極的に取り組んでいます」と語ります。
店舗の建設木材にFSC認証材を採用
同社の店舗の建設木材にFSC認証材を使い始めたのは2009年から。10年前といえば、FSC認証が今ほど知られていない時代ですが、どのようなきっかけでFSC認証材の採用が決まったのでしょうか。
「FSC認証材を採用した経緯ですが、実はあまり崇高なものではなくて…」と杉浦さん。
同社の店舗は既存ビル内に作る場合や、家主さん(店舗建物を自ら建設)がいる場合、自社で建てる場合があります。かつては自分たちで建てる店舗は鉄骨を使っていましたが、工期を短縮するため、1997年に工場であらかじめキット化したパネルを現地で組み立てるユニット工法を採用するようになりました。
「2000年に入った頃から、耐久性の高い木造住宅も出てきて、店舗の建設でも木材の使用ができるのではといった話になりました。そのときに工務店さんから提案されたのがFSC認証材です。木造でやるならより環境にいいものをと考え採用しました」(杉浦さん)。
同社では2019年3月末までに延べ278店舗がFSC認証材を使用した店舗になりました。
さらに2013年には店舗のイートインコーナーのテーブルや椅子にもFSC認証材を使用したものに順次切り替えています。
目に触れない木造部分。FSC認証材について知らせる看板を設置
建設木材に使われているFSC認証材は山梨県のFSCの森から伐り出されたものです。
「店舗を作るにあたって、生産地がはっきりしているというのは大きいですね。FSC FM認証を取得した森林から出てきた材をFSC CoC認証を取得した企業が流通・加工するので、全ての過程において管理が行き届いていると自信を持って話せます」(杉浦さん)。
しかしながら、FSC認証材を使った店舗展開をしていきたいという思いはあるものの、家主さんがいる場合は木造で建てることに抵抗があり、なかなか賛同を得られないこともあるのだとか。
「店舗開発を担当する部署の者が家主さんに木造の良さや、FSC認証材について伝えることで、以前とくらべるとだいぶ理解を得られるようになりました」(杉浦さん)。
「最初はすべてFSC認証店舗にしたいとの思いで進めていましたが、弊社と取り引きのある施工会社でCoC認証を取得しているところがあまりなかったため、途中から方針を変えました。この取り組みの目的は、ちゃんと管理された山から伐り出した木材を使うことにある、と気付いたからです」(杉浦さん)。
同社では、建物としてFSC認証を取得した店舗と認証材を使用している店舗の2通りで展開しています。また木造部分は通常目に触れない箇所でもあるため、壁面等にFSC認証材が使われていることを告知する看板(写真)の設置を始めました。
「FSC認証材を使うだけでなく、施工業者のみなさんには、端材でもFSC以外の木材が混ざらないように工夫もしてもらっているんですよ」(杉浦さん)。
店舗開発部署の社員の心境にも変化が
FSC認証材を使った店舗が建設されるようになって10年。この間に家主さんに店舗の説明をする店舗開発部員たちの気持ちはずいぶん変わったそうです。
「もともと彼らは新しい店舗を作ることに情熱を持って仕事をしています。弊社の店舗はファストフードがあるなど他店とは差別化されていますが、店舗自体もここまでこだわって建てている、ということを家主さんにも説明するわけなので私たちよりも熱く語れると思います(笑)」と杉浦さん。
店舗開発部に異動した際に研修でFSC認証のことを学び、「うちはこんないいことをしているんだ!」と自ら資料を集めた社員もいるんだとか。
また同社のFSC認証材の産地でもある山梨県のFSCの森には、本部長クラスの社員は不定期で見学に行っています。実際に現地へ行くと、丁寧に手間暇かけて木々を育てている生産者の姿勢を直接目にするので、環境への思いもより深まるそうです。
「見学から帰ってくると、部下の社員にFSCの森の様子を熱く語っているという話を耳にします」と、杉浦さん。これからの課題はこうした取り組みを社員だけでなく、店舗を運営するオーナーやお店を訪れるお客さまにも伝えることだと語ります。
「店舗の木造部分は完成時には見えなくなってしまうので、家主さんは知っていてもオーナーさんや来店するお客さまにはPRしないと気付いてもらえない。先ほどお話しした看板もそのためで、過去につくった店舗にも設置しています。お客様に知っていただきたいというのはもちろんですが、店舗で働いている方にも知ってもらいたいという意味もあるんですよ」(杉浦さん)。
閉店したFSC認証材使用店舗の木材を再利用
今後の店舗展開について杉浦さんは「FSC認証店舗を増やしていきたいのはもちろんですが、お客さまに木を見せる作りにできないかと考えています。越えなければならないハードルは高いですが是非チャレンジしたい」と語ります。
また同社ではFSC認証材の再利用も進めています。
これは閉店したFSC認証材を使用した店舗を解体し、使える部材はそのまま再利用し、土台や間柱、筋交いなどは新しい木材を使用し、新しい店舗をつくるという取り組みです。
このFSC認証木材リユース店舗を担当した栂瀬さんは、「店舗は埼玉県の深谷市という群馬県との県境に近いところにあります。再利用木材の運搬の際にCO2をあまり出さないように配慮して、同地域で閉店した店舗から運搬しました。再利用できる木材にも限界があったり、痛んでしまっているところもあったりしましたので、1つ1つ業者さんと相談しながら進めていきました」と振り返ります。
「再利用については2009年に木造店舗に取り組み始めてから、こういうことができるのではと視野に入れていたんです。場所とタイミング、同じエリアでできないと意味がないのですが、これからもこうした店舗を増やしていきたいです。イオングループでは2050年には脱炭素100%を目標にしています。私たちの店舗も木造店舗にしたことで従来工法よりCO2の削減につながっていますが、閉店した店舗の木材を再利用し、廃材を減らすということでもさらに脱炭素を進めていきたいと思います」(杉浦さん)。
また最近では、静岡県浜松市に新たな店舗を建てる際に、同社の取り組みを知った市からの申し入れで、浜松市のFSC認証材である天竜材をイートインの内装や、テーブル、椅子に使用した店舗も建設しています。
「特殊な店舗ではなく、標準的な店舗でいかに環境に配慮できるか。環境に優しい店舗を今後も増やしていきたいです」(杉浦さん)。
普段利用する店舗そのものが環境に優しいってとても素敵なことですね。
みなさんもミニストップを訪れた際には、ぜひ「どうやって建てられた店舗なのか」にも注目してみてください。
【取材先募集のお知らせ】
FSC応援プロジェクトでは、FSC認証製品を導入し、利用を推進する企業様を募集しております。
取材をご希望される方は、お問い合わせフォームよりご連絡ください。
お送りいただいた内容より、掲載可否を精査させて頂いた上での取材となります。
必ず掲載とならない旨、何卒ご了承ください。
- ミニストップ株式会社
- 千葉県千葉市美浜区中瀬1-5-1
- https://www.ministop.co.jp/
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