2023.2.2

アミューズメントパークでの非日常を楽しみながら
「環境のために日々できること」に気づいてもらう

富士急ハイランド 「トーマスランド」

 
富士山を望み、豊かな自然に囲まれたアミューズメントパーク「富士急ハイランド」。運営母体である富士急グループでは、近年SDGsビジョンを掲げ、持続可能な事業改革を実施しています。その一環として、園内の人気テーマパーク「トーマスランド」で提供している使い捨て食器やお土産用パッケージなどを、2021年7月からFSC認証製品を含め、環境に配慮したものに切り替えました。その経緯とともに、グループでの様々な取り組みについて伺いました。

お話しを伺った方

富士急行株式会社
事業部課長 古屋 喜正さん
最近では、部署の仲間と協力して、一カ月に1度の地域のごみ拾いを始めました。また、個人消費の中でもサスティナブルな製品を選択するようになりました。FSC認証製品の採用もそうですが、少しずつ取り組みの輪を広げていきたいと考えてます。

人気テーマパーク「トーマスランド」から本格的な脱プラスチックをスタート

「富士急ハイランド」は1961年にアイススケートリンクをオープンして以来、「FUJIYAMA」や「ええじゃないか」などの”絶叫マシン”や人気キャラクターのテーマパーク、劇場など、様々なアトラクションや施設を展開してきました。

その中で、「きかんしゃトーマス」のテーマパークとして1998年にオープンした「トーマスランド」は、親子連れはもちろん、学生グループやカップルなどにも大人気。物語の舞台であるイギリスの街並みを再現した園内には、10種類のアトラクションに加え、レストランやカフェ、ショップなども併設され、多くの人で賑わいます。

「きかんしゃトーマス」をテーマにした「トーマスランド」
トーマスレストラン
キャラクターがいっぱいの「トーマスレストラン」

そこで提供している使い捨て食器などについて、2021年7月よりFSC認証を受けた紙・木および植物由来の製品へと切り替えを行いました。これによって、年間約4.5トンのプラスチックが削減され、二酸化炭素の排出量に換算すると約21.5トンの削減につながりました。また現在はトレーシートやトーマスカステラのパッケージなどもFSC認証紙となり、飲料水もペットボトルから紙容器へと変更。さらに園内で販売するトーマスのオリジナルグッズも、木製・紙製が増えたといいます。

紙コップやカトラリーがFSCに
紙コップやカトラリーがFSCに
お土産用のパッケージもFSC認証に
お土産用のパッケージなどもFSC認証に

「トーマスランドでの取り組みは、富士急グループが推進する”脱プラスチック施策”の一つであり、これまでも紙ストローの採用やレジ袋の有料化などを行なってきました。エリア単位での取り組みを『トーマスランド』で始めたのは、子どもたちが環境配慮の大切さに触れられる場をつくることで、富士急グループの取り組みの発信力を高められると考えたからです」(古屋さん)

SDGsやFSC認証の紹介を通じ、楽しみながら環境配慮を知る機会に

古屋さんがFSC認証を知ったのは、取り組みを開始した2020年頃。もともと紙コップや商品パッケージで見かけて存在は知っていたものの、改めてネットや本で調べて仕組みや理念を知るようになったといいます。

「脱プラスチックにあたりFSC認証を選んだのは、その仕組みや理念への共感からでした。

環境はもちろん、紙が作られるすべての過程に配慮するFSCの考え方は、これからの富士急グループの様々な取り組みに取り入れていかなければならない考え方だと感じました」(古屋さん)


富士急行株式会社 古屋喜正さん
富士急行株式会社 古屋喜正さん 
「FSC認証の利用を更に広めていきたい」。

しかし、実際のFSC認証の採用にあたっては、ややコストがアップすることもあり、すぐには社内の理解が得られませんでした。そこでFSC認証に伴うコストアップと引き換えられるブランド価値について社内説得が必要でした。

「ちょうどSDGsの盛り上がりや東京オリンピック・パラリンピックなどで、サスティナブル調達なども広く知られるようになったことが追い風にもなりました。時代の空気として、社内だけでなく、お客様においても環境配慮やエシカル消費などについて理解が深まってきたのを感じましたね」(古屋さん)

とはいえ、どんなに良い取り組みでも、原価がかかりすぎたり、利用者の負担が大きくなったりすれば、事業的に持続可能とはいえません。そのバランスを調整しながら、コスト増の一部を利用者にも負担してもらう必要がありました。その意味でも、環境配慮の取り組みやFSC認証について理解を深める広報施策が必要だといいます。

「アウトドアファミリーディ」の様子。家族で楽しみながらSDGsについて学ぶことができる。
「アウトドアファミリーディ」の様子。
家族で楽しみながらSDGsについて学ぶことができる。

「アミューズメントパークの役割としても、たとえ難しいことでも楽しくわかりやすく伝えたいと思いました。『遊び方から学ぶSDGs』をテーマにイベントを開催し、Tシャツをリサイクルしてエコバッグをつくったり、廃材を使って楽器を作ったりと様々なイベントを実施し、そこでもFSC認証を紹介しています。楽しいイベントを通じて、子どもたちはもちろん、特に付き添われる保護者の方にもなんとなく環境配慮の大切さが伝わればいいなと思っています」

グループの環境配慮施策をツアー形式で紹介する取り組みを実施

環境施策への理解を深める取り組みについては、トーマスランドだけでなく、富士急ハイランドおよびグループ全体でも「富士急SDGsツアー」と称して、「水を循環させるポータブル式の手洗機」や「電気バス」といった環境に配慮した技術や設備、富士山周辺の豊かな自然や文化を活用したテーマパークの造り方などの施策を伝えるツアーを団体向けに開催しています。

中高生向けに実施されている「富士急SDGsツアー」

「富士急ハイランドでは、自然の樹木や地形を活かす形で環境整備を行ってきました。たとえば『トーマスランド』では既存の樹木を活かしながら、イギリスの地方鉄道をイメージした自然豊かな街並みを再現しています。ホラーアトラクション『戦慄迷宮』では、密度の高い鬱蒼とした林をそのまま利用することで不気味な雰囲気を演出しています。いわば環境とエンターテイメントを融合させているわけです」(古屋さん)

実は、そうした成り立ちや新しい設備などを自社のWebサイト上で公開したことがきっかけで、「富士急グループでのSDGsの取り組みを紹介してほしい」と要望を受けたことが、ツアーを企画したきっかけだといいます。現在は、中高生の学習旅行や企業の研修を受け入れています。

「環境教育などは学校の勉強として馴染みつつあると聞きますが、やはり知識や理念だけではなく、リアルな体験として実感し、定着してこそ意味があると思います。ツアーを通じて、『アミューズメントパークでもこんな環境配慮やSDGsの取り組みを実施しているんだ!』という新鮮な気づきが与えられたら嬉しいですね。非日常の中で改めて触れることで、SDGsやFSC認証の認知・理解が進むといいなと思っています」(古屋さん)

富士山周辺の自然を活かしてサステナブルな”楽しみ”を提供したい

今後については、トーマスランドでの施策を成功体験として、富士急ハイランド全体、3つのアミューズメントパーク、そして富士急グループの各施設にもFSC認証などの環境調達を浸透させていくといいます。

「その中でも親和性が高いと考えているのが、『PICA』ブランドのアウトドア事業です。初心者でも手ぶらでも楽しめる気軽なキャンプ場として、現在10箇所に展開しています。環境配慮型製品は相性がいいはずなので、アメニティやレストランなどでもFSC認証の採用を進めていきたいと思っています」(古屋さん)

既にPICA山中湖には、建物の屋根面に降った雨を活用した「雨水タンク」や場内の排水を自然に浄化する「バイオジオフィルター」など、エネルギーや自然の恵みを循環させて再活用する、サスティナブルな仕組みが数多く設けられています。また、同施設ではヤシガラをリサイクルしたエコ燃料「ココナッツチャコール」、100%天然素材のセルロースを使用したスポンジなど、環境配慮型商品も多く採用されています。

富士山の羨望がすばらしい「PICA Fujiyama」
「PICA山中湖」のハーブガーデン

他にも、交通事業やホテル、流通業など、富士急グループでは様々な事業を展開しています。そのベースになっているのは、やはり富士山周辺という唯一無二の大自然。その環境に配慮した活動が、グループ全体のブランド価値を高めるのは必須と言えるでしょう。

「富士急グループにとって、富士山周辺の自然豊かな環境に配慮しながら事業を継続することは、当社が創業精神として掲げる『富士を世界に拓く』そのものです。さらに富士山といえば世界文化遺産であり、国内だけでなく世界からも多くの人々が訪れる国際的なランドマークでもあります。そうした場で国際認証であるFSCの訴求力は高いはず。今後も富士急グループの取り組みとしてアピールしていきたいと思います」

富士山周辺をベースに、事業の中で様々な環境配慮に取り組み、その大切さを楽しく伝えようとする「富士急グループ」。アミューズメントパークやキャンプなど、非日常の楽しい経験の中で得たちょっとした気付きが、多くの人々の日常的な環境配慮につながっていくことを期待したいですね。


富士急行株式会社
https://www.fujikyu.co.jp/

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