都市ならではの利便性とエコの両立を模索
産地直送で生の情報をお届けしている「FSC グローバルレポート」。今回はイギリスの首都、「ロンドン」からのレポートです。
今回ご登場の山地理恵さんは、イギリスの首都ロンドン在住。日本では消費生活アドバイザーの資格を取り、消費者教育に携わっていただけあって、暮らしのエコについてのセンサーはお高めの様子。はたして、そんな山地さんに、ロンドンのエコライフおよびFSCマークはどのように映ったのでしょう。
みなさん、こんにちは。山地理恵です。主人の転勤のため、夫婦、そして4歳の娘の3人家族でロンドンに移り住み、9ヶ月になります。今回はロンドンのエコ意識、そしてFSCマークについて紹介しますね。
エコについても合理的発想で。自転車やエコバックも推進
ロンドンといえば、赤いダブルデッカーや黒塗りのタクシーなど車文化のイメージが強いかと思いますが、現在、エコを意識した活動として「自転車革命」を掲げています。2015年のイギリス政府レポートによると、ロンドン市内の1日あたりの自動車数は、約13万7000台(2000年)から6万4000台(2014年)と半分以下になりました。その一方で自転車利用者数は、1万2000人(2000年)が3万6000人(2014年)と3倍に伸びており、今後も自転車専用レーン(サイクルスーパーハイウェイ)の整備などが進められています。
実際、パディントン駅構内には、電車ホームのすぐ隣に巨大な駐輪場が整備されています。ちなみにこの場所は、25年ほど前まではロンドンタクシーが乗り入れていたとか。時代の変化とニーズによって柔軟に変化できるのは、合理的なロンドンらしさといえるでしょう。
ただ整備が進む反面、自己責任も求められるイギリス。自転車は通常車両と同じように通行する前提で、命を守るためのヘルメットや反射ベストの着用、手旗信号を使っての方向指示をよく見かけます。子どもは公園内で楽しみ、公道を自転車で移動する姿はあまり目にしません。
一方、ゴミ分別は日本より緩やかで、資源ゴミや小型家電など、分類された巨大な回収ボックスに24時間捨てることができます。ボックスは大人の背丈近くあり、回収は早くて2週間に一度。気軽に捨てられる反面、日本で細かく分別した感覚を忘れがちになるので、買い物時点でゴミが増えるものはなるべく買わない、まとめ買いをしない、を意識しています。
主要道路やお店店頭には、靴や衣類、子ども衣類専用など各種チャリティー団体へ寄付できる投函ボックスも常時設置されています。街では昨年10月より小売店のレジ袋の有料化が法律施行されたこともあり、思い思いのエコバックやキャリータイプのお買い物カートを転がしながら、買い物を楽しむ人々の姿が見られます。
っと、さてさて、肝心の「FSCマーク」についてですが…。
クリスマスのカードの約半分に発見!日常的に溶け込んで
まず、自分に届いたクリスマスカードにFSCマークがついていました!発見したのは娘。その指摘のもと、手元のカードを調べてみると、なんと約半数のカードに「FSCマーク」がついていました。
実は、消費生活アドバイザーの資格取得の過程で、FSCマークについて「こんなマークもあるのだな」とは知っていました。より興味をもつようになったの は、一人ひとりの買い物や行動で市場が変化することを自覚し、周りの人々やこれから生まれる世代への影響を考えて行動する、「消費者市民社会」の概念を 知ってからです。
実際にイギリスに住み始めてみると、「FSCマーク」を始めとした様々な表示が目につくこと、栄養表示の分かりやすさに驚きました。また、何かを選択するとき、例えば学校選びからパンの種類でさえ、「あなたはどうしたい?」「あなたは何を選ぶの?」と聞かれることが多いです。そんなとき、自分の気持ちを相手に説明すること、その選択に自信を持つこと、が求められていると感じます。自分のより良い行動はなにか、この現状はどう変えていくべきか。小さな頃からの積み重ねと、自己責任感から生まれる意識や個々人の選択が集まり、大都市ロンドンであっても、前述の自転車革命のように変化をもたらしていくのかな、と思います。
そんなことを思っていたら、お財布の中のレシートにもたくさんついているのを発見しました!
他にもいろいろあったので、だだっとご紹介しますね。
正直、ごく自然に日常の中に溶け込んでいて気づかなかったくらい。でも、「あれ、このマーク見たことあるぞ」から「なんでこのマークを付けるの?」「このマークが作られた背景って何だろう?」と親子で考えがひろがるきっかけになるでしょう。もっとたくさんの人に「FSCマーク」を知ってほしいと願っています。
【イギリスの森林状況】
イギリスの森林率は11.6%(2013年)*とヨーロッパの中では特に低めといえるでしょう。紀元前から徐々に農地転換のため、そして17世紀の産業革命や20世紀の世界大戦での燃料確保として急速に森林伐採が進み、森林率は5%にまで落ち込んだこともあったそう。それから少しずつ森林回復の取り組みが進められ、現在の数字となりました。
*WORLD BANK – Data Indicatorsより
その一方で、14世紀頃に策定された「森林法」によって守られてきた森もあります。王家や貴族が狩りをするために「リザーブ」という形で保全されており、豊かな生態系が手つかずのままに残された、自然度の高いものになっています。
<山地さんから>
我が家はロンドン中心部から電車で30分ほどですが、裏庭には狐とリスが出ます。徒歩圏内の公園では、自然環境を残したエリアやバリアフリーの表示が示され、小鳥の声しか聞こえない雑木林や、倒木を利用したアスレチックなどがあります。また車で1時間圏内に巨大な森林公園がいくつも存在しており、広葉樹の木々が多く、夏から秋にかけて色の変化がとても美しいです。その反面、冬は寒々しており春が待ち遠しいです。
これらの森林公園では、ナショナルトラストの保全活動や鹿や野生動物の保護、子どもが自然と親しむプロジェクト「50 things to do before you’re 11 3/4」など、興味深い取り組みがありました。娘との来年の目標は、おたまじゃくしをつかまえること!です。
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