2019.10.31

みんなで楽しみながら「森を守る楽しさ」を伝えたい 工学院大学 エコ推進委員会


工学院大学の学生による自治的活動である「学生委員会」。そのひとつにエコ推進委員会があり、環境保全をテーマに学内外の清掃・美化に取り組み、校外とも連携して環境に関する学びや経験を深めています。

今回はFSCに関するミニレクチャーも行われた「わくわくサイエンス祭 科学教室」での様子をレポートするとともに、委員会の皆さんの活動への思いや実感も紹介します。

わくわくサイエンス祭 科学教室で「紙抄き体験」を開催

夏休みも終わろうとする8月下旬、工学院大学の八王子キャンパスは親子連れでいっぱい!同大学主催の「わくわくサイエンス祭 科学教室」に参加しようと、地元はもちろん、遠方からもたくさんの人がやってきます。2日間の参加者はなんと7500名を超えるのだそう。

「子どもたちにものづくりや実験を通じて科学に親しんでほしい」との思いのもと、地域への社会貢献を目的に開催され、2019年で26回目を迎えました。同大学で科学や工学などを学ぶ学生たちが中心となって企画や運営に携わり、子どもたちの指導役もつとめます。

教室のテーマは多岐にわたり、「3Dプリンター体験」や「SNSの使い方ワークショップ」など今時の話題もあれば、「熱気球」や「石鹸作り」などの身近な科学を体感できるものまで様々。八王子市をはじめ14団体が共催・後援し、今回の演示テーマは87種類にものぼります。

魅力的な演示ばかりで、どこに行こうか迷うほど!

エコ推進委員会が企画・運営を手掛けるのは、「もっと知ろう!森のサイクル&紙のサイクル」と題した「紙抄き体験」。三菱製紙グループより提供された広葉樹と針葉樹の「木材パルプ」を使って、はがき大の紙を抄きます。

「楽しいですよ〜!」とエコ推進委員会の皆さん。左より先進工学部電気電子工学科3年山口裕登さん、エコ推進委員会委員長の工学部応用物理学科3年數田祐也さん、副委員長の工学部電気電子工学科2年瀧本紘一郎さん。

水の中でバラバラにした「木材パルプ」を木枠に均一になるように流し込み、ティッシュペーパーを切り抜いたキャラクターのモチーフを乗せ、吸水タオルやろ紙を押し当てて十分水分をとった後にアイロンで乾燥させます。子どもたちは終始、真剣そのもの。そんな子どもたちを学生たちは丁寧にサポートし、はがきができあがると一緒に喜んでいました。

「子どもは、大学生のお兄さんお姉さんに教えてもらえるのを楽しみにしています。親としては、夏休みの自由研究のネタになればと期待しています(笑)」という保護者の声からも地域の大人気イベントとして定着していることが伺えました。

楽しさを通じて、子どもたちに森や木の大切さを感じてほしい

エコ推進委員会委員長の數田裕也さんは、今回の取り組みについて「GW明けから準備をはじめ、想像以上に大変でした。ただ、子どもたちがすごく楽しんでくれて、やってよかったと思っています」と語ります。

「紙抄きのやり方や道具については三菱製紙グループから提供してもらったので、それを使って子どもたちをどう楽しませるかを意識しました。つい手伝いがちなので声をかけるだけにしたり、アレンジ用のモチーフのキャラクターを最近人気のものにしたり、子どもたちが自分で考えながらできるように心がけました」 (數田さん)

パルプを水の中でバラバラにするときに「オクラ液」を混ぜるのは、三菱製紙グループからのアドバイス。パルプが沈殿しにくくなり、均一な紙を抄くことができるそう。

モチーフに使ったのは絵入のティシュペーパー。子どもたちに人気のキャラクターをリサーチして用意しました。

紙抄きの前後に、パワーポイントでのミニレクチャーも行いました。ベースとなったのは、「森の資源を活用しながら、森を守る」という三菱製紙グループの森林保全の考え方。実際にFSCの森や三菱製紙の工場見学に行った経験が生かされたといいます。

「子どもたちに何かを伝える時に、やっぱり実体験がある方が説得力が増しますよね。実際に森を見たり、森林や紙に関するプロの方のお話を聞いたりしたことで、森を守るために解決すべき課題や現場の様子が少しだけでも具体的にイメージできるようになりました」 (山口さん)

三菱製紙の社有林やエコシステムアカデミーを訪問。(詳細はこちら

夏休みには、紙抄きやプレゼンテーションの練習などを行い、子どもたちにより伝わるようにしようと試行錯誤しました。そこで感じたのが、楽しく学べることが大切だということ。どんなにすばらしいことでも、押しつけるだけでは受け入れられないと感じたといいます。

「大学生がエコについて教えるというと、子どもたちも少し緊張すると思うんです。だから、子どもたちと目線を合わせることを意識して、できるだけ易しい言葉で話すようにしました。レクチャーもつい早口になるので、紙芝居のようにゆっくりと話すように注意したりして。子どもたちはすごく素直で、こちらが伝えようとすることを真剣に聞いてくれたのが嬉しかったですね」 (瀧本さん)

レクチャーコーナーではFSCの考え方をベースに、「森を守るためにできること」を紹介

そうなると、もっと多くの子どもたちに伝えたい、楽しんでもらいたいと欲が出るもの。
「毎回盛況ながら回によって人数にバラつきがあったので、ポスターを貼ったり、声がけしたり、広報活動にもう少し工夫ができればと感じました。課題を後輩とも共有できればと思っています」 (數田さん)

自分たちだけでなく、みんなで環境保全を考えたい

「エコ推進委員会」の活動は、こうしたイベントへの参加のほか、学内・学外の清掃美化活動やゴミ分別など多岐にわたります。さらに、全学生が自発的に環境意識を持って行動できるよう、ポスターや広報誌の作成など、啓発・支援活動にも取り組んでいます。

工学院大学エコ推進委員会

構内の清掃活動など、環境美化に関する様々な取り組みを実施

理系の大学生といえば、勉強はもちろん実験やレポートに追われ、日々忙しいはず。そんな中で「環境」をテーマに活動することにしたのはどうしてなのでしょう。

「勉強やサークル以外に何かやりたかったところに、勧誘を受けて何気なく入りました。小中高と環境関係の係や委員会に入っていたので親しみもありました」(數田さん)「子どもの頃から自然が好きで、屋外で活動できそうな委員会がいいと思いました」(山口さん)と、参加の動機は様々。しかし、誰もが活動を通じて少しずつ環境保全に対する意識が変わってきたそう。

「環境問題は自分だけがやっても十分ではなくて、やはりみんなで取り組むことが大切です。そのためには、周りの人にどう協力してもらい、どう影響を与えるかが大切だと感じました」(瀧本さん)

「三菱製紙グループの皆さんにお話を聞いたり、サポートしてもらったりして、改めて企業、社会全体でも環境保全について考えたり、取り組んだりしていることを実感しました。数年後は自分も社会人としてそうしたことを心に留めて仕事をしていきたいと思っています」 (數田さん)

工学院大学エコ推進委員会の皆さん。

紙抄き体験に参加した子どもたちも、コンビニやスーパーでFSCマークを見つけて今日のレクチャーを思い出したり、「森や木を大切にしよう」と考えたりするのではないでしょうか。 そして、エコ推進委員会の皆さんにとっても、環境に対する思いを深め、伝える大切さを改めて感じられた機会となったようです。


三菱製紙グループとは、毎年12月に開催される「エコプロダクツ展(現エコプロ展)」をきっかけに交流が生まれ、FSCの森の見学やイベントへの支援などを通じて関係を深めてきました。今回の「紙抄き体験」にも技術サポートとして参加するだけでなく、同社エコシステムアカデミーの濱崎さんなど製紙のプロフェッショナルが事前準備から技術提供やアドバイスなどを行いました。
「エコ推進委員会の皆さんの真摯な様子にいろいろ刺激を受けました。ずっと紙の技術に関する仕事をしてきましたが、次の世代に森林資源の大切さを伝え、考えてもらうために私の知見が役に立てばと思っています」(三菱製紙 エコシステムアカデミー 濱崎善幸さん)

FSC C011851

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