2017.9.12

「将来の夢」や「地球の大切さ」をアニメで表現!「アニメイク・キッズサマージャンボリー2017」

2017年8月8〜11日、日本のアニメーション100周年記念プロジェト『アニメNEXT100』の一環として、子どもたちにアニメーションを通じて“創る楽しさ”を伝えるイベント「アニメイク・キッズサマージャンボリー2017」が開催されました。テーマの1つである「豊かな地球を守り、次世代に伝えていくこと」にFSC応援プロジェクトも賛同し、森を活用しながら守る方法を紹介したパネル展示を行いました。その様子を紹介しながら、趣旨や目的について、『アニメNEXT100』アニメーション教育プロジェクトプロデューサーの植田益朗さん、事務局長でプログラムディレクターである植野淳子さんにお話を伺いました。

 


 

アニメで表現する「自然を大切にしたい」という思い

 
夏休みの真っ盛りに行われた「アニメイク・キッズサマージャンボリー2017」は、日本のアニメーション生誕100周年記念事業「アニメNEXT100」の一環として開催されました。子ども向けのワークショップに加えて、教育関係者など大人に向けたセミナーも開催されるなど、多彩な催しに多くの人が集まりました。そのテーマの1つとなっていたのが、「自然との共生」です。
 

 
「日本のアニメーションにおける豊かな表現は、森や海、樹や花、鳥や虫といった多彩な自然を観察し、描くことで育まれてきました。そして、メッセージとしても自然の大切さや命の尊さを描き、私たちの心を揺さぶる作品がたくさん創られてきました。そんなアニメーションの力を子どもたちに伝え、発想力や想像力を自由に羽ばたかせてもらいたい、そんな思いもあって、自然や地球、生き物たちといったテーマを盛り込んだのです。」(植野さん)
 

 
会場に入ると、壁と床一面に描かれた絵が目に飛び込んできました。描かれていたのは、にっこり笑顔の地球やカラフルな樹や花、動物など。人気のアニメキャラクターもいて、今にも踊り出しそうな雰囲気です。
 

 
スペースいっぱいに描かれた絵は、みんなでメッセージアニメーションを創る『ガラスの地球を救え』という試み。会期中に少しずつ『未来の地球』の絵を描き、その楽しい絵がどんどん出来上がっていく様子をビデオで撮影し、アニメーションにするというものだそう。子どもたちや親子連れが入れ替わり立ち替わりやってきて、思い思いに絵を描いていました。
 

 

捨てられる紙をワークショップなどで有効活用

 
この『ガラスの地球を救え』に使われているのは、実は印刷用のロール紙の“残紙”。印刷機にかけられない最初と最後の部分を活用したものだといいます。
 
「三菱製紙販売さんに手配いただいたのですが、業務用の紙を見たことがない方も多く、『紙ってもとはこんなに長いの?』ってびっくりする方もいらっしゃいました。子どもたちにとって紙は、何かを表現しようとするときに最も親しみのある素材です。そこに環境配慮を意識したものを選ぶことで、限りある資源を有効に使おうというメッセージを込めたつもりです。」(植野さん)
 
別室で行われていた、人形・立体アニメーションのワークショップでも紙が大活躍。はじめは躊躇していた子どもたちも、紙を触っているうちに少しずつ作品づくりにのめり込み、終了時間の合図に気づかないほど熱中していました。
 

 
ここで使われていた色画用紙も、三菱製紙販売から提供されました。
 

 
他にも、それまで捨てられていたバナナの茎を有効活用した「バナナペーパー」や、森を活かしながら利用するFSC森林認証の取り組みなど、紙にまつわる環境配慮の取り組みが紹介されていました。
 

 

 
「『どうしてFSCの森では木を切るの?』『バナナの茎をどうやって紙にするの?』と子どもから聞かれて戸惑う方もいましたね。そうした親子のやりとりが地球や環境保全について考えるきっかけになるのでしょう。ワークショップでの作品づくりのヒントにもなっていたようです。」(植野さん)
 

日本が誇るアニメ業界でも、エシカルな作り方を模索

 
もともとアニメーションを作成する際には、紙に絵を描いて、セル画に写し、1コマ1コマ撮影していました。それが時代とともにデジタル化が進み、「ペーパーレス」で進められることも増えてきています。しかし、プロジェクトプロデューサーであり、機動戦士ガンダムIIIなどの作品のプロデューサーとしても知られる植田益朗さんは「おそらく紙がなくなることはないでしょう」と語ります。
 

 
「アニメーションの制作の現場では、本当にたくさんの紙を使います。パラパラ漫画のように1枚1枚描いていく作業もそうですが、その前にもキャラクターのデザインや表情づくりなど、風景や場面割りなど、試行錯誤が山ほど続くんです。そうしたクリエイティブが生まれる場面では、紙は使われ続けていくと思いますよ。」(植田さん)
 
イベント会場には、アニメーターの試行錯誤の結晶である、原画が多数展示されていました。「クレヨンしんちゃん」や「鉄腕アトム」などの作品も、もとは紙を前にした手描きから紡ぎ出されていることが伺えます。
 

 
また、アニメーションの実制作ワークショップ「絵が動く不思議体験!アニメに挑戦しよう!」では、子どもたちが夢中になって紙に絵を描く姿が多く見られました。描いては消しを繰り返し、iPadで撮影して動きを確認したら、再び原画へ戻って調整を繰り返す。その熱心さは大人も驚くほどでした。
 

 

 
「紙を大量に使って四苦八苦するほど伝えたいものというのは、例えば自然との共生だったり、人類愛だったりします。だからこそ、自然に対して無頓着でいるのは、本末転倒といえるでしょう。紙がなくなると困るわけですから、木を上手に活用して同時に森も守っていく。そういう取り組みに対しては、業界としても積極的に応援したいと思いますね。」(植田さん)
 
豊かな自然を守り、美しい地球を未来の子どもたちに伝えていく。そんなメッセージや思いを伝える手法として、アニメーションは大きな役割を果たしています。そして、創造活動に欠かせない持続的な紙の調達、そしてその源になる森の保全も、アニメ文化の発展のために不可欠な大切なテーマの1つといえるでしょう。
 
「アニメNEXT100」では、今後も様々なイベントを開催予定です。詳しくは下記サイトをご覧ください。
 

アニメNEXT100
http://anime100.jp/
 
日本のアニメーション100周年の記念事業として、年間を通じて様々なイベントや取り組みを開催中。

 

一般社団法人 日本動画協会
http://aja.gr.jp/
 
東京都千代田区神田和泉町1番地7の2 百瀬ビル2階
Tel : 03-5839-2930

 
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