FSCマーク製品ものがたり

2019.1.9

FSCマーク製品ものがたり

最短納期は60年!木材製品を通して豊かな時間を届けたい

株式会社 西粟倉・森の学校

 
村の約95%が森林という、岡山県西粟倉村。2006年に村有林でFSC-FM認証を取得し、認証林の面積は今も少しずつ増え続けているといいます。今回ご紹介するのは、その西粟倉村にある株式会社 西粟倉・森の学校です。自然豊かな村で、長い年月をかけて大切に育てられた木を使い、工夫を凝らして他にはない様々な商品を生み出しています。それぞれの製品に込められた思いや会社設立の背景など、同社の羽田知弘さんにお話を伺いました。

お話しを伺った方

株式会社 西粟倉・森の学校 営業部長
羽田知弘さん
学生時代に出会ったフォレスター(林業従事者)の影響でこの仕事を選んだという羽田さん。休日は、山で猟をすることもあるのだそうです。取材を通して、西粟倉村を愛する気持ちや日本の林業に対する熱い思いが伝わってきました。

木材生産から製品の販売まで、全てを西粟倉村で

丸太を周辺地域から仕入れ、製材・加工だけでなく、商品開発や販売まで取り組む株式会社 西粟倉・森の学校。同社は、無垢フローリングなど住宅用内装材を中心に、ワリバシ1膳から公共建築物の木材供給まで幅広くモノづくりに取り組んでいます。

 

「“平成の大合併”によって全国でたくさんの村が合併していく中、西粟倉村は村として独立してやっていくことを決めました。そのためには、村の95%を占める森林資源をきちんと活用していく必要があったんです。そこで作られたのが『百年の森林(もり)構想』です。これまで約50年間大切に育ててきた森をもう50年頑張って育てて、林業を村の産業の柱として確立し、100年続く美しい森を未来に繋いでいこうというものです」

 


 

株式会社 西粟倉・森の学校 営業部長 羽田知弘さん

この構想を実現するためにまず取り組んだのは、村内の森林を所有する山主さん一人ひとりに会いに行き、森の管理を村に任せてほしいと交渉することだったといいます。

 

「実は、この交渉は今も続いているんですよ。効率的な施業のためには、出来るだけ多くの山主さんの協力を得る必要がありました。今では約半数の山主さんがこの構想に共感して協力してくれていますが、最初の頃は大変だったと伺います。粘り強く交渉にあたった役場の皆さんには本当に頭が下がります」

 

大切に育てられた木々
 

美しく豊かな森は、村による丁寧な管理の賜物

そして、「百年の森林(もり)構想」において、森林管理を村が一手に引き受ける目的は、原木の生産性を上げるだけではありません。かつて村内では生産された原木を板(などの半製品)にするところまでしかできませんでした。西粟倉村産の木材を最終製品に加工し、販売するところまでの全過程ができるようになることで、さらに村の産業を活性化させたい。株式会社 西粟倉・森の学校設立の背景にはこうした思いがありました。

 

山々に囲まれた西粟倉村
 

岡山県の最北東端にある西粟倉村


 

地域の資源を活かした商品開発や販売を行っています。

「もともと西粟倉村は、宿場町の間に挟まれた街道だったので、昔から人の出入りが盛んでした。だからこそ、新しい仕事をつくり、人を受け入れることに抵抗がありません。ここ最近では30ほど新規の会社やお店が増え、村民1460人中200人以上は他県からの移住者なんですよ」

 

また、「生産者の顔が見えることも大切だと思っています」と羽田さんは続けます。
「『百年の森林構想』は、村の資源を有効に活用するだけではなく、生産者の顔や森が見える仕組みづくりにも繋がっていると考えています」

 

日本の林業の課題、FSC認証への取り組み

「設立当初は規模が小さかったので、西粟倉村で生産された丸太だけで十分足りていました。でも、会社の規模が大きくなるにつれて間に合わなくなり、他の地域からも丸太を仕入れるようになりました」と羽田さん。

 

なぜ村で生産された丸太だけで商品を作ることができないのでしょうか。そこからは、日本の林業全体が抱える問題が見えてきました。

 

 

「普通、お客さんから要望があり、この商品が作りたいからこういう丸太が欲しい、と商品から必要な木材を考えますよね。でも、今の日本の森では、それに応えるのが難しい。西粟倉村に限らず、どこも植林から50~60年経ってから伐り時を迎えるので、森の施業管理を優先して木を伐っている。この木を使いたい、という要望があるから伐っているわけではないんです。だから、せっかくこの樹種でこういう商品がほしい、という注文をもらっても、その通りに(丸太を製材してから3〜4ヶ月、乾燥をする必要もあり、納期に間に合わせて)作れないことがあるんです」

 

そうした活動の中で、自社製品をできるだけFSC認証品にする取り組みも進めているそうです。

 

蜜ロウワックスで育てる「ひのきの名刺入れ」

 

蜜ロウワックスで育てる「ひのきの名刺入れ」はFSC認証製品

 
「他にもいろいろな認証がある中でFSC認証を選んだのは、国際的な認知度が高いだけでなく、取得・維持するためのルールが一番厳しいからです。維持するのが難しいからこそ、取り組む価値があると思っています。でも、FSCだから自社の製品を選んでほしいとは思っていません。むしろ、FSCは当たり前のものになってほしいんです」

 

とはいえ、現時点では全てをFSCにすることは、前述したような木の伐り時まで時間がかかるといった原料調達の問題もあり、簡単にはいかないそうです。でも、社内で様々な工夫を重ねることで、同社のFSC製品は着実に増えています。

 

“ひとてま”をかけて商品を育てる、豊かな時間を届けたい

同社の商品にはFSCへの取り組みだけなく、消費者の皆さんに選んでもらうための知恵や工夫がたくさんつまっています。Loftや東急ハンズ、無印良品などの店頭や同社のオンラインショップで販売している「ヒトテマキット」もそのひとつ。ノコギリ要らずで、パチッと型から外して削って磨くだけで、スプーンやフォークなどのおしゃれな木のカトラリーをつくることができます。

 

ヒトテマキットの「はじめるキット」と「フォーク」
 

ヒトテマキットの「はじめるキット」と「フォーク」

「木でできたスプーンやフォークをただ販売しているわけじゃないんです。使ってくれる人を思いながら作る、経年変化を楽しみながらメンテナンスする、そんな豊かな時間を一緒に届けたいと考えています。もとは木材業界の専門家が集まって立ち上げた会社ではないですし、商品開発も担当者がいるわけではありません。だからこそ、自由な発想でいろんな意見を出し合って、他にはない新しい商品が生み出せるのだと思います」

 

hitotema
 

手をかけるからこそ、愛着が湧いてくるということも

また、商品に“ひとてま”というアクティビティを取り入れることで、購入した人や受け取った人が情報発信をしてくれるという宣伝効果もあるそうです。

 

「写真とともに『つくってみた!』とSNSなどに投稿いただくこともあります。製品を楽しみ、親しんでくれることが口コミで広がり、『家を建てるときは木がいいな』『こんな会社の名前があるんだ』と少しずつでも多くの方に意識してもらえたら嬉しいです」

 

「FSCマークも同じですよね」と羽田さん。
「まずはFSCマークの存在を知ってもらうことが大切。それがきっかけになって、FSCについて興味を持ってもらえればいいなと思います」

 

森の学校インスタグラム
 

西粟倉・森の学校のインスタグラム。zaimoku.me

 

宅急便で送れるFSC認証床材「ユカハリ・フローリング」

そんな同社が、2018年の11月にFSC認証製品として販売を開始した「ユカハリ・フローリング」。

 

「普通のフローリング材は長さが2~4メートルあって、個人がDIYで施工するのは難しいですし、送料もすごく高い。それを解決するために生まれたのが『ユカハリ・フローリング』です。長さが90センチと短いので個人の方でも施工が簡単で、宅急便も利用できます。置いて並べるだけなので、手軽に木のぬくもりを生活に取り入れてもらうことができるんです」

 


 

「すぎ」と「ひのき」のユカハリ・フローリング。サイズは各種揃う。

また、同社では、置いて並べる無垢の床材として「ユカハリ・タイル」も販売しています。大きさは50㎝×50㎝の正方形で、部屋の形に合わせてカットすることも可能です。種類も充実しているので、場所を選ばず自分好みの床を選ぶことができ、室内にいながら木の良さを存分に楽しめます。

 

ユカハリ・タイル
 

種類豊富なユカハリ・タイル

でも、「木ってメンテナンスが大変そう」とか、「傷つきやすいんじゃない?」といった不安の声を耳にすることもあるそう。

 

「私たちは使えば使うほど加点されていくようなモノづくりをしたいと思っています。木ならではの経年変化を楽しんでほしいんです。木は使えば使うほど味が出てくる。だからこそ『傷つきませんか?』という質問には、はっきり『傷つきます!』と答えています。でも、本物の木だからこそ、傷も長い目で見れば味になるし、一緒に生活してきた証、履歴書みたいなものですよね。購入したらそこで終わりではなく、大事に使って育ててほしいんです」

 

最短納期は60年!?「使う」から「育てる」へ

 

同社は、商品に「使う」ではなく「育てる」という言葉を好んで使っています。

 

「仕事をしていると、ついつい『最短納期で』とお願いしたり、されたりすることもありますが、本来木材はそんなに簡単に手に入るものではありません。木を植えてからこれまで大切に育ててくれた人がいるからこそ、今、使うことができる。お客さまには、木材製品の最短納期は60年なんですよ、という話をよくしています。木が育ってきた長い時間を思いつつ、これから使う皆さんにも商品を時間をかけて大切に育ててほしいと願っています」

 

森の学校インタビュー

 

株式会社 西粟倉・森の学校の取り組みには、豊かな森林資源を存分に活かしながら、普段の生活を豊かにする工夫がたくさんつまっています。私たちの手元に届くまでに60年。長い年月を重ねてきたからこそ伝わる木のぬくもりを改めて感じることのできた取材でした。これからも同社の取り組みに注目していきたいですね。

 

株式会社 西粟倉・森の学校
岡山県英田郡西粟倉村長尾461-1
https://morinogakko.jp/

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