2020.1.31

【第6回】冬の森で愉しむ「大人の火遊び」

FSC製品を含め、環境に配慮した物を選ぶことも最も有効な「森の保全活動」の一つですが、もっと直接関わって森を元気にできたらどんなにステキでしょう。そんな夢を実践している庭山一郎さんは東京在住のビジネスマン。週末だけ赤城山麓の「シンフォニーの森」に通い、四季折々の自然を満喫しながら森仕事に励んでいます。
 
冬は寒くて何もできないのでは?…と思いきや、冬こそやるべきこと、楽しみがてんこ盛りだとか。その1つが「薪ストーブ」。森に行くたびに、庭山さんは自ら斧を手にせっせと薪づくりに励んでいます。

 

冬の森では、何より「薪」が大事

私の森の北側には、赤城連山の鍋割山がそびえています。12月をすぎるとすっかり雪化粧をして真っ白に。夏や秋とはまた違った美しい姿を見せてくれます。

 

 

森の中を通る道にもうっすらと雪が降りました。晴れているとすぐに溶けてしまうくらい。これはこれで美しいですよね。
 

 

冬の森は見る分には美しいのですが、とにかく寒い。コテージの中を温めるには、やっぱり薪ストーブが必要です。

 

森にコテージがあるというと、時々、「別荘を持っているんですね?」などと言われますが、ちょっと違います。持っているのは「小さな森」なのです。その森を手入れするためのベースキャンプに小さなコテージを建てただけで、あくまで主役は森。自分の森の間伐で出たナラやアカシヤ、ヤマザクラなどを、半年ほど“葉枯らし”という枝葉をつけたままの方法で乾燥させ、それを玉切りにして1年乾燥させ、さらに薪にして1~2年乾燥させます。
 
というわけで、森通いの日課の1つに「薪割り」があります。

 

 
今日は晩秋に伐採したニセアカシアを薪にします。薪は「3回人を温めてくれる」と言われています。最初が伐採する時、次が薪割りをする時、最後は燃やす時・・・。確かに、ちょっと割っただけでもホカホカと体が温まります。
 

ふーー!暑い!そして、ついに半袖です(笑)。
 

薪割りには、かっこいい北欧製の手斧が大活躍!

ちなみによく聞かれる道具ですが、今のメインは「Hultafors(ハルターフォース)」というメーカーのオノです。スウェーデンの老舗で、使っている鉄はもちろん高品質で有名なスウェーデン鋼、柄は堅くて粘りがあるヒッコリー材です。柄をバーナーで軽く焼いてオイルで磨き上げ、首の部分には麻のロープを巻きました。かっこいいでしょう!?
 

 
薪割りをしていると、たまに柄で叩いて折ってしまうことがあります。昔はどの家にも斧や鍬(くわ)があり、昭和30年代くらいまでは棒屋と呼ばれる柄の職人さんが傷んだ柄を交換してくれましたが、今はなかなか見つかりません。米国や欧州なら、薪ストーブが普通なので、今でも町やロードサイドの金物屋で薪割り斧や柄が売っています。メーカー元のスウェーデンまで送るとなると、時間もお金も掛かってしまいます。なので、ロープはかっこよくみせるというより、衝撃を和らげるために巻くんです。

 

 

薪ストーブの焚き付けに使う「杉の葉」や「樹皮」も地産地消

割った薪は積み上げてまた来年、再来年までじっくりと乾燥させます。コテージの一面は常に薪が積み上がった状態です。
 

 
そして、この冬に間伐する木は、玉切りにして来年薪になります。サステナブル(持続可能な)という言葉が流行ってますが、森の生活はまさしくそうなんですよね。
 
書斎の窓の下の方には、2年間乾かしたアカシヤ、ナラ、シラカバがストーブにくべられる時を待っています。良く乾いた薪がたっぷりあると、こんなに豊かな気持ちになるのはどうしてなのでしょう。
 

 
では、今日のノルマを終えたところで、薪ストーブに火入れをします。焚き付けはこれ、スギの落葉です。
 

 
スギは常緑の針葉樹ですが、落葉しない訳ではなく、緑のまま新陳代謝を繰り返します。その落ちた葉は油を含んでいて燃えやすいので、薪ストーブの焚き付けに使うのです。
 
焚き付けには、スギの落葉の他に樹皮も使われます。北海道や東北は白樺、北信濃・北陸はウダイカンバ、高山ではダケカンバなど、地域によって違う木を使うそうですね。私の森ではヤマザクラ、コナラ、ケヤキなど、採れる木は何でも使います。
 

 
焚き付けで使う樹皮は、薪にする前の玉切りした木を乾燥させる際、木の皮の下に虫が入り、その木を割ったり積んだりする時に剥がれたものです。火力を上げたい時にすごく効果があるんですよ。
 

のんびりと炎や熾(おき)と戯れ、心癒されるひととき

さあ、日が陰ってきました。窓の外にはたっぷりの薪、家の中には煌々と赤い火を見せる薪ストーブ。晩秋の森の、コテージでの幸せな風景です。ストーブにやかんを乗せて、お湯が湧いたらコーヒーでもいれましょう。
 

 

 
火かき棒やトングで薪をひっくり返したり、熾の上にピーナッツの殻をのせたりと、まったく飽きないのは炎や熾があまりにもきれいだからでしょうか。パチパチと乾いた薪が良く燃えてます。そして、なんといってもそれを割ったのが自分というのも、満足感があります。
 

 
薪ストーブの魅力は柔らかい温かさと炎の眺め、そして、この熾の煌めきではないでしょうか。どんな宝石より美しいと私は思っていますし、眺めていて飽きることがありません。時々鉄の棒でかき回すと空気に触れて瞬きます。冬の楽しみの1つが、熾との戯れなのです。
 

 
1本1本薪を割って、1~2年乾燥させ、焚き付けを使って燃やすという「薪生活」は、手間がかかって大変…と感じる人も多いようですが、楽しみとして取り組めば、こんなに面白く、心が満たされるものはありません。本格的に自前の薪にするには数年は掛かりますが、まずは焚き火体験から挑戦してみてはいかがでしょうか。
 
 


 

庭山一郎さんプロフィール

 

 

1990年にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。BtoBマーケティングに関するプロジェクトを数多く手がけ、セミナー講師や執筆などにも積極的に取り組んでいます。プライベートでは、小学生から日本野鳥の会のメンバーとして活動するなど、筋金入りのアウトドア派。赤城山麓に森を購入し、「シンフォニーの森」と名付けて森林再生活動を行い、ライフワークとしています。本連載ではその取り組みの様子や個人でできる森再生のヒントとともに、赤城山麓の四季折々の美しい自然の姿を紹介します。

FSC C011851

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