2018.11.29

【第3回】「紅葉」は神様が描く森のアート

FSC製品を含め、環境に配慮した物を選ぶことも最も有効な「森の保全活動」の一つですが、もっと直接関わって森を元気にできたらどんなにステキでしょう。そんな夢を実践している庭山一郎さんは東京在住のビジネスマン。週末だけ赤城山麓の「シンフォニーの森」に通い、四季折々の自然を満喫しながら森仕事に励んでいます。秋の楽しみはやはり「紅葉」。真っ赤や黄色に色づいたハイライトシーンだけでなく、それぞれの木々の色づき始めから終わりまで、すべて楽しむのが庭山さん流のようです。
 

 

秋の始まりは「サトウカエデ(メイプル)」から

赤城連山の南側山麓にある私の森には、秋になると赤や黄色に色づき、冬に備えて葉を落とす「落葉樹」もたくさん生えています。その中で10月下旬に一番に色づき始めるのが、ヌルデとナナカマド、そしてサトウカエデです。その名の通り、樹液はほんのり甘みがあり、煮詰めるととろりとした琥珀色のシロップになります。そう、カナダの国旗にもあしらわれている「メイプル」のことなんです。
 

カナダの国旗では真っ赤に色づいていますが、シンフォニーの森の木は20年前に植林したばかりなので、まだ半日陰。そのため色づいても黄色までなんですね。そのうち大きくなって、日向に葉を伸ばすことができれば、真っ赤な紅葉を見ることができるでしょう。そしてその頃には、メイプルシロップも食べ放題かも?あと200年ほど経ってからですけどね(笑)。
 

 

いち早く秋を伝える「ヌルデ」。こんなに小さくてもいっちょ前に紅葉しています。

 
サトウカエデ以外にも、シンフォニーの森には8種類のカエデがあり、どれも私が自ら植えた木です。でも、どこにどんな木を植えたのか、一切記録をとっていなかったので、今はどこに何があるのかわかりません。でも、秋だけはそれぞれに主張をはじめ、元気であることを教えてくれます。
 

カエデの緑からオレンジ、そして真紅までのグラデーションは毎年異なっており、神様が気まぐれで描くアート作品のようです。同じ場所でもこれだけ違うので、陽当たりだけでも地質や水はけだけで色が変化するわけでもなさそうです。それも見るたびに印象が変わるのだから不思議ですよね。
 

2012年と2013年。ほぼ同じ時期に撮影してもこんなに印象が違う!

 

緑から赤へと変わるハウチワカエデ。コントラストが美しいです。

 

神様が描いた一服の絵のような紅葉。そのまま屏風や着物にしたくなります。

そして次に来るのが、この森を代表する「ブナ」。といっても、シンフォニーの森に植わっているのは、たかだか樹齢20年程度で、大きさも7〜9メートルがいいところ。いつかこの森が原生林の姿を取り戻す頃には、このブナも大きく育って主のような顔をしているのでしょう。早くブナの紅葉で森全体が金色に輝く様を見てみたいものです。
 

 

この木は樹齢22歳。400年は生きるブナの木としては小学生くらいでしょうか。早く大きくなあれ!

 

金色に染まった、まるで小判?のようなブナの葉っぱ。

 

ドローン撮影した森の様子*。2週間ほど前がピークでしたが、なんとか間に合ったかな?
*ドローンの撮影は私有地内で行なっています。

そして、紅葉シーズンのトリを飾るのは、コナラやミズナラといった「ナラ」の木。ブナと同じく原生林の主役で、ブナが森の王様ならミズナラは女王といったところでしょうか。

 

 

赤く色づいたミズナラ。30歳くらいの若い木ですが、立派に紅葉しています。

ミズナラは標高的にはもう少し高い土地が好きな樹種らしいのですが、黄色に紅葉した弟分のコナラに混ざって元気に育っています。カエデもブナもすっかり葉を落とす12月初旬には、コナラの紅葉が最盛期。森が黄金色に輝いています。

 

 

真っ青な空、秋の日差しに照らされてコナラが輝くようです。

コナラが一気に葉を落としたら、いよいよ冬支度。様々な種類の紅葉がおちた森の中は、すっかりカラフルなじゅうたんをしきつめたようになります。これもしばらくすると乾いて丸くなり、やがてゆっくりと次の命を育む豊かな腐葉土へと変わっていくのです。

 

 

約2ヶ月にわたって楽しませてくれた紅葉が終わると、大好きな秋が終わって、大好きな冬が始まります。さあ、冬は何をして楽しみましょうか。

 
 


 

庭山一郎さんプロフィール

 

 

1990年にシンフォニーマーケティング株式会社を設立。BtoBマーケティングに関するプロジェクトを数多く手がけ、セミナー講師や執筆などにも積極的に取り組んでいます。プライベートでは、小学生から日本野鳥の会のメンバーとして活動するなど、筋金入りのアウトドア派。赤城山麓に森を購入し、「シンフォニーの森」と名付けて森林再生活動を行い、ライフワークとしています。本連載ではその取り組みの様子や個人でできる森再生のヒントとともに、赤城山麓の四季折々の美しい自然の姿を紹介します。

FSC C011851

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