近年の紙事情&FSCを軸に“森と環境”を考える
FSC応援プロジェクト・出張セミナー in 三鷹教育会館「感じる力を磨く講座」
7月某日、三鷹市教育会館の「感じる力を磨く講座」において、FSC応援プロジェクト出張セミナーを開催しました。今回も、日本で最初にFSC認証紙を導入した三菱製紙のエコシステムアカデミーさんとの共同開催です。
世界の森の現状・課題にはじまり、森を守るためのFSC森林認証制度のご紹介、そして三菱製紙の工場で実際に使われている木材パルプを使った紙漉き体験などを行いました。育児中のママの参加も多く、子どもたちが保育ルームで遊んでいる間に、しっかりと「森と環境」について学んでいただきました。
● FSCマーク付きの製品って、こんなにいろいろあるの?
前半は、FSC応援プロジェクト事務局から高濱が登壇。『紙を取り巻く環境を考える』と題して、紙の文化的・物質的価値、そしてその原料となる森を守るための方法について、FSC森林認証制度を含めて紹介しました。
しかしながら、FSCマークを「見たことがある」と答えたのはわずか1名。しかし、ずらりと壇上脇にならんだFSCマーク付きの製品をお見せすると、「ああ、あるある!」との声が上がりました。そう、気がつかないうちに、FSCマークは暮らしの中に少しずつ増えていっているんですね。
「FSCの活動を広げるには、FSCマークの製品を選んで買っていただくのが大切。ぜひ、皆さんもスーパーなどで見かけたら、『これで森が元気になるんだ』と思って購入してくださいね」との高濱のアピールに、皆さんから「スーパーで探します」「生協で買います」などのコメントもいただきました。
「実はこんなにあったんですね〜」と驚く方多し。「気づいたら買います!」との心強いお言葉も。
様々な紙を取り巻く現状や問題をお伝えするなかで、まず皆さんから反響があったのが、「再生紙が必ずしも全ての問題解決になるわけではない」ということ。
環境にやさしいとされる再生紙ですが、再生するとどうしてもパルプの繊維が細かくなり、強度や滑らかさに問題が生じるため、純パルプとのミックスがどうしても必要となります。さらには、特に日本においては「白さ」が求められ、漂白のための薬品をつかわざるをません。その漂白の薬品が環境にとっては大きな負荷となります。
「近年はできるだけ環境負荷の低い漂白剤が使われるようになりましたが、できれば使わない方がいいのは確か。紙を上手に使うには、再生パルプとともに純パルプをバランスよく使うこと、用途に応じて紙を使い分けることなど、消費者として賢く紙を選ぶことが大切です」とエコシステムアカデミー室長の長田さんからの説明に、皆さん深くうなずいていらっしゃいました。
生き生きした皆さんの表情に、エコシステムアカデミー 室長の長田雅一さんもノリノリ!
それでは、紙を使い続けていくために、その原料となる木、そして森とどのように付き合えばいいのでしょうか。そこでまた「目からうろこ!」の反応をたくさんいただいたのが「植林木」についての紹介でした。紙にするために生育の早い同じ種類の木しか植えない、そんな植樹林が東南アジアや南アメリカで増えています。「木を植える」というと環境に配慮している印象がありますが、同じ木ばかりを一気に植えて、一気に切り倒すような環境下では、多くの生き物は生きることができないのです。一方、FSC認証森では、木材を切り倒して活用する際も、環境や生き物に影響を与えすぎないことを意識しています。さらに自然林と人工林を計画的に配置することで、生態系になじませ、生物多様性を守っています。
そしてもう1つ、適切に木を切ることは、特に人工林が多い日本での森には大切であることも、皆さんには新鮮だったようです。既に人の手が入った森林は「間伐」することで光が入って下草が育ち、木がしっかりと大きく育つことで保水力も保たれます。近年、安い外国木材におされて放置されてきた日本の森を再生するために、FSCの他、国産材を上手に使うこともご紹介しました。
ほとんどの方が子育てを経験し、「次の世代」の環境について真剣に考えるようになったとのこと。子どもたちに豊かな森を引き継いでいくためには、毎日の買い物についてはFSCマークをはじめ、環境に配慮した製品を「選んでいただくことが大切」とご理解いただきました。
●紙漉き体験に「 知っているようで、知らなかった!」の声が続々!
座学の後は、三菱製紙の森のめぐみの体験学習実践チーム「エコシステムアカデミー」主催による「紙漉き体験」を行いました。まずは、エコシステムアカデミーの田中さんから、紙ができるまでの工程が紹介されました。
1)木材を細かく砕いた「チップ」に薬品を加え、高温・高圧で煮ることで
樹脂(リグニン)を溶かして繊維分を取り出します。
2)次に、しっかりと洗浄し、水気を取ります。
3)漂白剤を加えて洗浄し、パルプを漂白します。今回はこれを水で溶いたものを使用します。
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木材チップ 煮たもの 洗って絞ったもの 漂白で脱脂綿のよう 水で溶いた紙の原料
なお、木材チップからパルプを取る際にでる、コールタール状の真っ黒な液体は「黒液」と呼ばれ、大切なバイオマス燃料として、紙を作る機械を動かすために使われます。また、漂白剤についても環境負荷の高い塩素系漂白剤ではなく、二酸化塩素、 過酸化水素などを使うようになりました。こうした様々な部分にも、製紙会社の環境配慮技術が進んでいるんですね。
エコシステムアカデミーの田中さん。 長田室長の「紙のもと」の説明に興味津々です。
それでは、さっそく製紙会社が実際に使っている「紙パルプ」を使用した紙漉き体験を始めましょう。
まずは、水に溶いた「木材パルプ」を「漉桁(すきけた)」の中に流し込みます。
均一になるようにならして、そっと枠をはずし、吸水タオルを乗せて水分をよく切ります。
気に入ったモチーフを乗せ、さらに吸い取り紙で水分を取ります。
吸い取り紙と新聞紙に挟み、自分が重しになって水分を取ります。
最後にアイロンをかけ、自然乾燥させて出来上がり!
楽しそうに踏み踏み♪ アイロン掛けはお得意 あとは乾かして出来上がり!
実は2つのテーブルは、それぞれ「針葉樹」「広葉樹」のパルプ。紙になってみると素人目には識別は難しくなりますが、「針葉樹の方が繊維が長くて、しっかりとした感じ」「広葉樹はソフトでやさしい」と、紙漉き中には木の種類の違いを実感できました。
じゃーーん!できあがりは、この通り!
皆さん、とてもステキに出来上がりました!
紙漉きを通じて「繊維が絡むだけで接着剤なしで紙になるなんて!」「バージンパルプがNGって誤解していた」などなど、様々な発見があったようです。「子どもにもこういう体験をさせたい」「夫にも講座を受けさせたい」などのご意見もたくさんいただきました。
楽しみながら、FSCの森や紙について学ぶ出張セミナー。次はあなたの街にお伺いするかもしれませんよ。
ぜひともその際は、皆さまのご参加をお待ちしております!
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三菱製紙株式会社エコシステムアカデミー
福島県西白河郡西郷村字前山西3番地
http://ecosystemacademy.jp/
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