2017.3.2

第3回 FSCの森ではほっこり「薪ストーブ」が大活躍!


環境にもやさしいエネルギー“薪”の使い方あれこれ

東京都とはいえ、冬の時期にはぐっと冷え込む檜原村。森に囲まれたちよこさんのお宅で、厳しい寒さを乗り切る大切なアイテムとなっているのが「薪」です。エアコンやファンヒーターなどと比べ、いろいろと手間はかかるようですが、たき火も薪ストーブもなんだかすごく温かそう!どんなふうに使っているのか、使い方のコツや楽しみなどについてご紹介いただきました。


●“カーボンニュートラル”な薪は環境にやさしいエネルギー

こんにちは!東京なのに大自然の森に囲まれた檜原村で暮らす、ちよこです。
まだまだ寒い日が続いていますね。檜原村も東京と思えないほど寒さが厳しく、こたつとたき火が欠かせません。たき火といえば薪!今回は、森の恵みの中でも少し林業家のお嫁さんらしいアイテム「薪」をご紹介してみようと思います。
 
皆さん薪というとどんなイメージをお持ちでしょうか?
アウトドアでBBQやキャンプファイヤーをする時に使ったり、お金持ちのおうちの暖炉でぱちぱちと燃えていたり…。最近は薪ストーブを使っている方も増えてきたようですが、まだまだ特別なものというイメージがあるのではないでしょうか。

キャンプの定番「キャンプファイヤー」

おき火で焼くマシュマロは格別ですよね。

でも、我が家では毎日の生活の中でごく普通に使うもの。林業家だからというのもありますが、実際に使ってみると「薪っていいな〜」と思うことが本当に多いです。
今、日本人が日常的に使っているエネルギーは、電気や灯油やガスなどが一般的でしょう。どれも化石燃料を使って作り出したものですが、それを燃やすことで空気中に二酸化炭素が増え、地球温暖化の大きな原因となっていると言われています。
一方、薪はもともと樹木です。大きな木になるまでに光合成を繰り返し、大気中から二酸化炭素を取り込んで酸素を排出しています。だから、薪として燃やす時に二酸化炭素が排出されますが、その二酸化炭素は木が成長する過程で吸収したものなので、プラスマイナスで見ると二酸化炭素は増えていない。つまり「カーボンニュートラル」というわけです。
だから、エネルギーとして薪を使うのは、地球への負担を軽くしたようで、ちょっぴり気分がいいんですよね。とはいえ、それはあくまで頭の中で考えること。実際に使ってみると、薪の魅力は他にもたくさんあるんですよ。

二酸化炭素をたっぷりすって、すくすく育つ木。


●簡易釜戸でほかほかごはん、石窯でパリッとピザ
 

それでは、我が家で実際にどんな風に薪を使っているか紹介したいと思います。
まずはお料理。
我が家では昔から「簡易釜戸」が大活躍!お赤飯を蒸かしたり、豚汁を作ったりしています。大きな鍋でたっぷり作れるのもよいところですし、火力が強いためなのか、薪で蒸かしたお赤飯はとてもおいしくて、冷めても柔らかいままなんです。

「何を料理しているのかにゃー」とご近所の猫が温まりにきました

敷地内のコテージにある石窯では、ピザやパン、焼き林檎だって焼けます。あらかじめ薪を燃やして石窯を熱しておくのがコツ。窯の温度は最高300〜400度にもなり、ピザも1枚5分程度であっという間に焼き上がります。表面はパリッと中はもちもちで、ピザ屋さんにも負けない、とっても美味しいピザが焼きあがるとお客様にも大好評です。

かなり真剣です。

おいしく焼けたピザ!

   

むかごのフォッカチャと焼きりんご

●お湯あたりやわらかい「薪風呂」はちょっとした贅沢

それから、お風呂のボイラーも薪を燃料として使っています。

お風呂は母屋の外にあり、夏はもともと水温が高いので20分くらいでお湯が湧きます。逆に冬は水がとても冷たくなって、倍くらい時間がかかってしまうのです。でも、薪で沸かしたお湯はまろやかで肌ざわりがよく、遠赤外線効果のためかポカポカして湯冷めしにくいそうです。

少々手間はかかりますが、なかなか入れない貴重なお風呂です。

●薪ストーブの心地よい温かさを体験してほしい!

そしてもう一つ、ここでの生活に欠かせないのが「薪ストーブ」です。我が家では室内と屋外にそれぞれストーブを置いています。

来客者をまずは温かいストーブでおもてなし

室内のストーブの火を見ていると心がほぐれます

薪ストーブは、炎の揺らめく様子やパチパチと木のはぜる音など、なんとも癒されますよね。
暖をとるだけじゃなく、上にお鍋を置いてコトコト煮込み料理をしたり、ヤカンでお湯を沸かしたり。熱を有効活用できるので一石二鳥にも三鳥にもなります。
何より寒い冬に温かい火を囲むって、とっても幸せな時間だなと思います。こんなふうに、薪は我が家の生活に欠かせない存在です。とはいえ、薪づくりはなかなかの重労働。チェーンソーで丸太にした木を斧などで割り、よーく乾燥させる必要があります。雨に濡らさずに風干しするのが乾燥させる際の重要ポイント。

薪棚に積み上げるのもなかなか大変ですが、子どもたちにもお手伝いしてもらって少しずつ準備していきます。薪づくりについてはまたいつか詳しくご紹介したいですね。

薪を作るところから燃やすところまで何かと手間がかかる薪ですが、この温かさに親しむとその苦労も気にならなくなるから不思議です。

都会ではなかなか薪を使う機会は少ないかもしれませんが、ぜひ森へ出かけた際には、人と環境に優しいエネルギーとして「薪」の魅力を感じていただけたら嬉しいです。


「ちよこ」こと、
田中千代子さんプロフィール

東京都檜原村在住。男の子2人のお母さんで、夫である田中惣一さんは江戸時代初期から続く林業家の15代目。2012年にFSC森林認証を取得し、森を活かしながら守る“これからの林業”の在り方を模索しています。千代子さんもまた、もともと好きなクラフトや料理に森の恵みを活かす暮らしを実践中。そのヒトコマを季節の「森だより」としてお届けします。

FSC C011851

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